クリスマス商戦に向けての準備

クリスマス商戦の販売可能性を最大限にするため、手遅れになる前に、オーガニックなランディングページでの直帰率を下げて、ROI(投資収益率)を最大にする PPC (クリック毎課金)広告を管理するデータを収集して、その他の 5 つのことを行おう。

多くの B2C サイトは、第四半期に不釣り合いな割合の利益をあげる。もしクリスマス商戦が会社にとって重要であるならば、次の 7 つの助言はクリスマスに間に合わせるための最後のチャンスだ。

このアドバイスの多くは B2B にも当てはまる。すぐに実装する必要はないかもしれないが、B2B のデザイナは、あまり忙しくない 12 月中に同じことをやるとよいだろう。

1. オーガニックな入り口ページでの直帰率を下げる

ウェブサイトは何千もの玄関を持つ家のようなものだ。訪問者はどこからでも入ってくることができる。ホームページは一般的にはメインとなる入り口だ。だから一般的なホームページデザインでの間違いは、絶対に犯してはいけない。しかしユーザは、それ以外の多くのページからも入ってくる。そのため、広告のリンク先になっているページを最適化していても、それ以外の入り口ページを見過ごしてしまっている可能性がある。

オーガニックな入り口とは、他のウェブサイトからリンクを辿ったり、(検索エンジンの有料広告ではなく)通常の検索結果リストからのリンク先となるページのことだ。不幸なことだが、そのようなページはユーザを失望させることが多く、そのため直帰率が高くなる(直帰率とは、入ってきた 1 ページ目だけを見て去ってしまうユーザの割合のこと)。

オーガニックなトラフィックの直帰率を下げるには、そのようなページが 2 つの役割を担っていると考えなくてはいけない。本来の目的(リンクされること、検索エンジン上で目立つこと)と、新しい訪問者にとって魅力的な入り口であることだ。コンバージョンを重視しすぎた最適化を行うと、もともとの目的を果たさなくなってしまう。しかし、もしコンバージョンが行えなければ、そのページの存在価値はない。

オーガニックな入り口を見つけて改良するには、次の手順を行う。

  1. サイトのログを見て、検索エンジンでどんな検索キーワードからのトラフィックが多いのかを調べる。
  2. それらのユーザの入り口になっているページを見つける。
  3. 検索キーワードを分析し、ユーザたちの大まかな目的を予測し、その目的をその入り口ページが満たしているかを見る。
  4. 訪問者たちの目的だと思われることを満たしていないページを直す。
  5. 需要には即対応だ。ユーザが実際に見る目立つ場所に製品へのリンクを置く(つまり、共通ナビゲーション領域に置くだけではいけないということだ)。
  6. 直帰率が下がるのを見守る。(もし下がらなければ、改良を繰り返す。何度も改良を加えて、よく出来ているはずなのにパフォーマンスが悪いページで、ユーザがどのような行動をとるか知るためには、ユーザテストを行う必要が出てくる場合もある。)

多くのログ解析ツールが入り口になっているページを判別できる。そのため、入り口となることが多いページの改良に、すぐさま取り掛かろうと思ってしまうかもしれない。しかし、このやり方よりも、上で説明した少しだけ手順の多いやり方を、以下の 2 つの理由から勧める。

  • 人々がなぜそのページを訪れたかを知ることが、それを改良するための鍵になる。もしページを分析する前にユーザが使った検索キーワードを知らなければ、ユーザが最初にサイトを訪れたときに何を考えていたか、見当がつけられない。
  • コンテンツサイトからのトラフィックよりも、検索エンジンからのトラフィックは、一般的に 5 から10 倍有益だ。サーファーが興味本位なのに比べて、検索エンジンのユーザは目的本位で行動しているからだ。したがってコンテンツサイトからのトラフィックよりも、検索エンジンからのトラフィックの直帰率を下げるほうが重要なので、この 2 つは別々に分析を行わなければいけないのだ。

2. PPC検索エンジン広告の微調整を行う

検索エンジンの広告面積は狭いが、その中の言葉をいくつか改良すれば劇的にクリック率を上げることができ、顧客転換率も上がる。(もちろん、広告からリンクされているページの最適化も必要だ。)

クリスマス商戦中 1 クリックあたりの値段は、劇的に上がる。クリックが安い今の内に、広告内の言葉で試行錯誤を済ませよう。

3. PPC広告に出せる最高入札額を計算する

クリスマス商戦に突入すれば、競合企業は有利なキーワードに高い値をつけ始める。そのため、前もってプラスの ROI を保つのに、キーワードにいくらまで払えるかを知っておかなければいけない。

ユーザが初めてサイトを訪れてから実際に商品を買うまで、1 ヶ月かかることもある。ROI を正確に出すには、クッキーを使って実際に購入を行った各ユーザが最初にサイトを訪れたときに使った検索キーワードを調べよう。

検索エンジンの広告は、純粋に ROI の問題だ。最近行われた研究では、名前の認知度とブランドの評判が付加的な利益をもたらすとしているが、私はこの結果が信用できるものだとは思わない。なぜなら、この研究の方法論には、ユーザの注意を管理するという面で、大きな欠陥があったからだ。現実の目的本位の行動では、検索エンジンの広告はブランドイメージにそれほど影響を与えないだろう。名前を見せることで、わずかな利益があるかもしれないが、あくまでもそれは余得だと考えるべきだ。広告から得られる本当の利益は、この調査で公表されている数字よりももっと小さいだろう。それよりも、自分のサイトの数値に集中し、顧客を経時的に追跡して各クリックからの限界収益を計算しよう。もしこの数字がわからなければ、検索エンジン広告価格が上がった時、いくらまでなら出すことができるのかわからなくなってしまう。

言うまでもないが、顧客転換率の改善にも努めるべきだ。なぜなら顧客転換率の改善は、直接的に ROI の上昇になるからだ。顧客転換率が倍になれば、キーワードに倍の値をつけ、ユーザビリティが低くてキーワードに低い金額しか出せない競合者たちよりも上位にリストされることが可能になる。

検索エンジンの広告からホームページにリンクするのは、陥りやすい間違いだ。一般的に言えば、ユーザの興味に合ったページに直接リンクすることで、顧客転換率は最低でも倍になる。そのまた倍にするには更なるリサーチが必要だ(下の「来年に向けて計画を立てる」を参照)。

4. 確認メールに磨きをかける

人々は、自分が購入ボタンを押し損ねておらず、出荷手続きが進められていることがわかると安心感を持つ。クリスマス商戦中は、ユーザは一般的に期限ギリギリで買い物を行っていたり、異なる配送先を指定していたり、もしくはプレゼントの到着が遅れるとばつの悪い思いをすることになる。そのため、この時期以上にユーザが確認メールを待ちわびていることは他にないのだ。

確認メールのユーザビリティの改善は、顧客満足度の改善と、電話での配達状況の問い合わせを減らすという両方の効果がある。メールの内容を改善するためにかかるコストは、コールセンターで節約される経費によって、何倍にもなって返ってくる。

5. コールセンターへの問い合わせ内容を分析する

問い合わせが比較的少ないクリスマス商戦前に、普段問い合わせが多い問題や質問をコールセンターに分析してもらおう。中には貧弱なウェブサイトのユーザビリティや、特定ページでの情報の欠落が原因の物もあるだろう。まずはそれを直す。(FAQ の項目を増やしても根本的な解決にはならないが、何もしないよりはましだ。)それ以外の問い合わせは貧弱な確認メールが原因の場合が多い。それも直そう。

6. 返品の分析を行う

なぜユーザは、購入した商品を返品するのか。多くの場合は間違いやすい製品説明が原因だ。なぜ人々が注文を間違えるのか、主な原因を突き止め、それにしたがって商品ページを改善しよう。

これによって、返品プロセスで必要となる大きな経費を節約できるだけでなく、製品説明が明確でないため去ってしまう人々への売りそこないを取り戻すことによって、売上も上がる。

7. 祝祭日の演出を考えよう

多くの場合、さりげない雪化粧、サイト全体にわたる祝祭日用テーマ、プレゼントについての特集ページなど、サイトを祝祭日用に飾り付けるのはよいことだ。

来年に向けて計画を立てる

毎年のことながら、 10 月になると、クリスマス休暇前にサイトの顧客転換率を改善したいという問い合わせの電話がいくつも掛かってくる。残念ながら手遅れだ。だが、多くの場合eコマースのユーザビリティ原則の違反を見つけ出すことは可能だ。急いで問題を直し、売上を 10 から 20 %伸ばそう。顧客転換率を倍にするには、最も見込みがもてる方法はサイトのユーザビリティを基礎からデザインしなおすことだ。

なぜ購入せずにユーザがサイトを去るのか、また、どうすればもっと購入してもらえるのかといった深い理由を特定するための、本格的なユーザ調査に取りかかるのは 1 月だ。十中八九、サイトとそのコンテンツに大規模な変更が必要だとわかる。早いうちに取り組みはじめれば、他のデザインのプロトタイプを作成し、ユーザとのインタラクションをテストするだけの時間が、来年のクリスマス商戦前に十分取れる。

今年やるべきことは、来年のテスト用の仮説を立てるために、クリスマス商戦中のユーザをモニターすることだ。もちろんこの忙しい時期、ほとんどのリソースはサイト運営と、回避不可能なトラブルに対処するために使うべきだ。だが、少しでもリソースを節約すれば、来年に入ってすぐにでも、大規模なユーザビリティプロジェクトを開始できるのだ。