ナビゲーションは役に立つのか?

ほぼ7年間にわたって、私は調査するたびに、ユーザが同じ行動を取るのを見てきた。新しいページを流し読みする時、ユーザはコンテンツに注目していて、ナビゲーションエリアは見ていないのだ。(思い出して欲しい。ユーザは、たいていいつも流し読みしている。オンラインで熟読するということはめったにない。)

この間、主要なブラウザはMosaicからNetscape 1、2、それに3、またIE 4から5へと移り変わったが、ユーザ行動の大筋は変わっていない。明らかに基本的な現象なのだ。7年間のユーザ調査、6種類のブラウザ、3種類のソフトウェアベンダー、だが、ユーザ行動はひとつだけ。

最近、他の人が独立に行った調査でも、この結果は確認されている。本当に一般的な現象であり、どんなサイト、どんな調査でも変わらない特徴的なユーザ行動なのだ。

  • ユーザは、まずコンテンツについてコメントする。コンテンツが的外れなものだったりすると、もはやその他のデザイン面にはまったく注意が向かなくなる。
  • ページにたどり着いたら、ユーザはナビゲーションバーやその他サイト共通のデザイン要素が目に入らなくなる。かわりにページ内のコンテンツエリアだけを見るのだ。
  • ウェブサイトの情報アーキテクチャの中で自分がどこに位置しているのか、ユーザにはわからない。
  • ユーザは、極端に目的志向であり、心に決めたことひとつだけしか見ていない。中でも宣伝には、ほとんど時間を費やさない。
  • 目的を追求する過程で、メインの情報ハンティング戦略として検索機能に頼るユーザが多い。
  • ロゴ、趣旨、スローガン、その他、つまらないと判断したものには、ユーザはめったに目を向けない(特に、広告、もしくは広告に見えるものはまったく目に入らない)。
  • そのページが、今達成したいと思っている目的に関係なさそうだと思うと、無情にも、2秒か3秒のうちに、ユーザはBackボタンをクリックする。
  • あるデザイン要素が理解できなかったからといって、それをわざわざ理解しようとしてくれるユーザはいない。単に無視して、当初の目的追求を続行するだけだ。

ナビゲーションは役に立たないから、ナビゲーション要素はウェブページから取り去るように、とするアナリストもいるようだ。サイト構造を提示したり、ユーザがどこにいるのか表示したり、他にどんなページがあるのか教えようとしても無駄だ。コンテンツを見せればそれでいい。私は、この分析に対して完全には同意できない

多くのサイトのナビゲーションはやり過ぎである。特にいわゆる [車輪の] スポーク型デザイン、すなわち、あらゆるページが他のあらゆるページへリンクしてあるタイプのデザインは、使いやすさを損なう元になる。同様に、数多くのサイトがフッタ部にたくさんのメタ記事(例えば『当社について』とかプライバシー保護規定といったもの)を詰め込み過ぎている。

一般的なリンク

すべてのページが、サイトの全機能に触れる必要はない。もっとも役に立つ機能だけを厳選し、全ページ共通のリンクは5つか6つくらいに絞るべきだ。検索はその中のひとつだ。ユーザは袋小路に入ると、検索に頼る。彼らがいつ検索を使いたくなるか、予測はできない。小は大を兼ねる。各ページに、標準的なリンクを少しだけ用意しておけば、ユーザが必要なリンクを見つけられる確率が高まる。反対に、「お問い合わせはこちら」というようなリンクは、ホームページにだけあればいい。必要になれば、ユーザはそこへ見に行くだろう。(例外:注文確認ページには必ずコンタクト情報を掲載しておく必要がある)

同様に、ニュースサイトでは、あらゆるニュース記事のページの端っこに、他の記事全部の見出しを掲載しておく必要はない。他のセクションすべてへのリンクも不要である。リンクは基本的機能(例えば、検索、著作権、その他ごく少し)とホームページ、現在のセクションのメインページに絞ること。使えるスペースは、関連する記事や、著者紹介といった有益なリンクを設けるために活用しよう。

構造的ナビゲーション

すべてのページに全セクションへのリンクを設けないこと。ヘアドライヤーを探しているユーザが、グランジミュージックのページに行きたくなる可能性がどれほどある?もっとはっきり言おう。人類史上で、こんなリンクが必要になる日がやってくる可能性がどれほどあるというのだろう?たんにホームページに戻れば済む話ではないだろうか(きちんとコードが書いてあれば、すでにキャッシュに入っているページの表示には0.5秒しかかからない)。

そのかわりに現在位置から階層を上にたどっていくためのリンクを設けるのだ。パンくず式道しるべ(breadcrumb trails)が役立つ局面には、次の2つがある。

  • 全体との関連性(たとえ、それがどんなに入れ子になっていても)がわかれば、現在のページの理解は、より深まるだろう(今見ているのは製品354だということだけでなく、その製品が小型装置ファミリーに属していることもわかるだろう)。
  • このようなリンクがあれば、今のページが望むものではないことがわかった時でも、似たようなものを探しているのなら、ユーザはサイト内の上位レベルに直接移動できるようになる。

もちろん、構造的リンクを無視するユーザもたくさんいる。だが、時にはそれに気が付くユーザもいる。もっとページをよく理解したいと思っている時は、特にそうだ。構造的リンクがなければ、ページは孤児になってしまう。文脈から外れてしまうのだ。検索や、その他の手段を通じて、直接そのページにたどり着くユーザはたくさんいる。上位レベルのナビゲーションページをバイパスしてしまうわけだから、これらのページへ戻るための道を用意する必要がある。特に、今のサブサイト、エリアの全体像がわかるページへのリンクは有益である。

ローカルナビゲーション

サイト内の関連ページへのリンクは、非常に有用だ。そのものずばりのページに一発でたどりけることはめったにない。検索エンジンを利用した場合は特にそうだ。似たようなページ、関連するページへのリンクを設けているサイトがほとんどないというのは、もったいない

以下のようなリンクを設けるべきである。

  • 今の製品より少し安価、あるいは少し高価な類似製品へのリンク。
  • 今見ている製品に組み合わせると便利な関連製品へのリンク(ただし、ほんとうに関係のある製品に限る。在庫のダブついた商品をここで処分しようなどと思ってはいけない。特売コーナーはサイト内の別の場所に設けるべきだ)。
  • 重要な点で今の製品と違ったところのある製品(例えば、白黒プリンターを探しているユーザに、カラープリンターへのリンクを提示するなど)。
  • 現在の製品のバージョン違い(例えば、同じブラウスで色がイエローなど)。この種のリンクは、あくまでも属性に対する操作であって、純粋な意味でのハイパーテキストナビゲーションとはいえないかもしれない。
  • そのページで議論されているテーマについてのより以前のバージョン、あるいはより新しいバージョン
  • 背景情報。
  • 著者のバイオグラフィーと、同一著者による他の記事のリスト。
  • 今のトピックに関する掲示板やその他の形の議論。
  • 今のトピックに関するニュース(最新のものには限らない)。

構造だって役に立つ

1980年代以降のハイパーテキスト研究の結果、ユーザのナビゲーションには、構造が役に立つということがわかった。ウェブ上で構造が過小評価されてきたのは、4つの理由がある。

  • 情報アーキテクチャがなっていないサイトが多い。企業内部の論理でコンテンツが組み立てられていて、ユーザの立場で考えられていない。そんな役立たずの構造は、ユーザに見捨てられても当然だ。
  • ほとんどのページデザインでは、重要な構造的情報が埋もれてしまっている。関係ない情報(例えば、他の全オプションへのリンクなど)の洪水になっていて、構造がわかりにくくなっているのだ。
  • 構造的情報を視覚的に表現するというニーズに応えられるウェブブラウザーが存在しない。ウェブ以前の多くのハイパーテキストシステムでは、これがあった。構造の視覚化が適切になされていれば(かっこいい3Dなんかではなくても)、実質的なユーザの助けになるということが、調査の結果わかっている。
  • ウェブ上ではユーザの気が短くなるので、個々のサイトや、その構造についてわざわざ学習したりしてくれない。かわりに、彼らは次のサイトに向かうのだ。

この4つの理由のうち、根本的原因といえるのは最後のものだけである。ウェブサイトは、もっとましなデザインにできるはずだ。ついでに予言しておこう。Internet Explorer バージョン8.0は、実際にユーザのナビゲーションを補助してくれる初のウェブブラウザになるだろう。

ユーザの忍耐力の問題でさえ、克服は可能である。確かに、ほとんどのユーザは、ほとんどのサイトを表面的にしか扱っていない。だが、その価値さえわかれば、時間を割いて、いくつかのサイトを学習しようというユーザもいるのだ。将来的には、ロイアルティのあるユーザを上手に誘導して、もっとそのサイトについて知りたいという気持ちにさせ、実際にそうできるようにしておくことが、競争力を高める上で重要な要因になるだろう。(もちろん、ちょっと立ち寄ってみたいというユーザの方が数としては多いのだから、こういったユーザにとっても入りやすいデザインを維持しておこう)

2000年1月9日