ヒューマン-コンピュータインタラクションのトップ研究機関

エリート企業の研究機関(ならびに、わずかな大学)のコア・グループがヒューマン-コンピュータインタラクションの分野を定義づけ、今日私たちが享受している使いやすさの大部分を確立した。大きな研究機関がなくなれば、HCI研究の未来は危機に瀕するだろう。

ウェブデザインおよびユーザビリティは、ヒューマン-コンピュータインタラクション(HCI)というより大きな学問分野の一部である。1945年、Vannevar Bushがハイパーテキストに言及した当時から、1964年のDoug Engelbartによるマウスの発明、その他、数多くの初期のプロジェクトを通じて、HCIには豊かな研究の歴史がある。現在、私たちがテクノロジーとやりとりする手法を定義づけているのはこの歴史である。

優れたHCI研究は世界中のいたるところで行われているが、この分野を定義づけているのはごくわずかな研究機関であり、もっとも重要な業績もそこで培われたものだ。私がベストと考えるのは、以下の諸機関である。

黎明期:1945年~1979年

金賞: Stanford Research Institute (SRI)

銀賞: Xerox PARC

銅賞: Bell Laboratories

1980年代

金賞: Xerox PARC

銀賞: IBM T.J. Watson Research Center, Yorktown Heights

銅賞: MIT Media Lab

1990年代

金賞: Bell Communications Research (Bellcore)

銀賞: Apple Computer Advanced Technology Group

銅賞: Xerox PARC

現状評価:2000年~2010年

この10年の各研究機関の貢献度を本当に評価するには、まだ時期尚早である。最終評価は2010年に改めて行うこととしよう。現在のところ、私がベストと評価するHCI研究機関は以下のとおりである。

金賞: Microsoft Research

銀賞: Xerox PARC

銅賞: Carnegie Mellon University

このリストは、お分かりのとおり、数ある研究テーマのうち何を重要と考えるかについての私の嗜好を反映したものになっている。私は、以下の2分野における基礎的業績を重視している:人々がどのようにテクノロジーを利用するか理解すること、および人間のためのデザイン手法として何が最良かを理解すること(この両者はともに、Bellシステムと、昔のIBM研究グループが重視していたものだ)。私は、新規のインターフェイスガジェットのデモには、それほど重きを置いていない(Media Lab、Apple、それにMicrosoftが重視しているのはこちらだ)。

長期的傾向:優秀な研究機関の凋落

歴史上の一連のベストHCI研究機関リストが物語るものは何か?まず、Xerox PARCが本当に優秀であり続けたこと。どの10年期にも顔を出した唯一の研究機関である。

残念なことに、第2の、そしてさらに印象的な結論はこうだ。このリストによって、有力研究機関の盛衰が明らかになっている。20世紀を支配した研究機関のうち、今日のHCIにおいて、いくらかでも頭角を現しているものはごくわずかしかない。同様に、Xeroxを除けば、リストに2度以上登場するのはBellシステムを数えるのみである。

当然ながら、私は、優れたユーザインターフェイス研究のために資金を割いたことが、企業自体の凋落につながったとは考えていない。しかし、企業自体がピークをきわめた時期に、HCI分野でもトップに登りつめる傾向はあるようだ。残念ながら、新しい研究機関の中でHCIが最高の優先順位を得ることはめったにない。このため、研究機関の管理者がその必要性に気付いて、世界水準のHCIチームを結成する頃には、すでに手遅れになっていることが多い。

企業研究の未来

調査機関に与えられた全12個のメダルのうち、大学がたったの2つだけというのは印象的だ。私はこれは、最良のHCI研究は俗世間的かつ資源集約的だと大学学部に思われているせいではないかと考えている。アカデミックな世界には、実世界のニーズと密に連携した研究テーマを蔑視する人が多い。ウェブユーザビリティについての研究がこれほど数少ないのを見れば、その証拠は火を見るより明らかである。非実用的かつ難解な3Dブラウザに関する研究論文の方が、史上最大規模のリアルタイムコラボレーションシステムを利用する何億人もの人たちに関する論文より数多いのである。

HCI調査は少ない予算でも実施できるが、最良のプロジェクトのほとんどには、潤沢な資源が要求される。一流の企業研究機関には、歴史上、この資源が与えられてきた。だが、今やこの分野はたいへんな危機に瀕している。巨大予算を与えられた研究機関が、ほとんどなくなってしまったからである。2010~2020年には、作るに値するベストリストができるだろうか?天に望みを託すのみだ。

2002年3月31日