守られていないホームページのガイドライン・トップ10

10項目のユーザビリティ上のミスを、企業ウェブサイトの約2/3が犯している。これだけ間違いが広まっていること自体も注目に値するが、「使える」デザインのためにかなりの投資をしているサイトにさえ見受けられることは特筆すべき点だ。

たいていの場合、私のトップ10リストは、もっとも重要で、もっとも注目すべき問題にしぼることにしている。今回、私は別の評価基準を用いた。既知のユーザビリティ原則のうちでデザイナーにもっとも無視されているものに注目したのだ。多かれ少なかれ、これらのユーザビリティ問題がこれだけ広く見受けられることだけでも、注意を喚起するに値するだろう。

ここでの統計頻度は、私がホームページユーザビリティに関する本を出版して以来、わが社が山ほど行なってきたホームページ評価にもとづいている。このデータソースにはバイアスがかかっている。1万ドルかけてエキスパートによる独自のホームページ評価を依頼できるのは、かなりユーザビリティにコミットした大企業や政府機関くらいしかないからだ。だが、この欠点を逆手に取ることもできる。ユーザビリティを重視する企業でさえミスを犯しているなら、それは特にはまりやすい陥穽に違いない。

もっとも頻度の高い10種類のミスについては、ホームページのガイドライン適合率は悲しいほど低い。このリストは適合率順に並べてある。遵守しているサイトがもっとも少ない(すなわち、ミスのもっとも多い)ガイドラインが1位となる。

また、参照したいと思われる読者のために、私の著書の中でのガイドライン番号も併記しておいた。

1. そのサイトはユーザにとってどんな価値があり、競合他社のサービスとどこが違うのかを強調する

適合率:27%
ホームページユーザビリティ本でのガイドライン番号:3

これはホームページデザインにおけるもっとも重要な問題のひとつだ。それだけに、ガイドライン全体の中でもっとも守られていないというのは、特に残念でならない。どのサイトも、ユーザに提供しているものが何かを、はっきり表明するのが驚くほど下手だ。逆に、自らのオファーを、ありふれたマーケティング用語で隠してしまっている。見込み客には、ほとんど何の印象も残らないというのに。

記憶しよう:なんらかのニーズをもったユーザは、たいてい検索エンジンで検索するが、検索で引っかかった各サイトを見るのには、わずか数秒ずつしか割いてくれない。

2. ユーザがサイズ調節できるように、リキッドレイアウトを採用する

適合率:28%
ホームページユーザビリティ本でのガイドライン番号:67

固定レイアウトとの戦いは、負け戦のようだ。だが、繰り返す価値はある。ユーザによってモニタのサイズは違う。大きなモニタのある人は、ブラウザをリサイズして、複数のウィンドウを同時に表示できるようにしたいと思うものだ。あらゆる人のモニタが、すべて800ピクセルだと仮定するわけにはいかない。大きすぎると思う人もいれば、小さすぎると思う人もいるのだ。

3. 色を使って、訪問済み/未訪問リンクを区別する

適合率:33%
ホームページユーザビリティ本でのガイドライン番号:37

行ったことのある場所がわかることは、ナビゲーションデザインがサポートすべき3大基本機能のひとつだ。(あとの2つは、「いまどこにいるのか?」と、「ここからどこにいけるのか?」である。)

サイト内のどのエリアが訪問済みかを、ひとめでわかるようにしている企業ホームページがわずか1/3しかないというのは、嘆かわしい。ナビゲーションの混乱の元は、デザイナーが、ウェブブラウザの標準機能の中では数少ない有用な機能を殺しているからだ。それは訪問済みリンクと未訪問リンクを、違った色で表示する機能である。私たちのテストでは、このガイドラインを無視すると、特に高齢者のユーザで問題が大きいことがわかった。

4. グラフィックはホームページを飾るだけではなく、本物のコンテンツのために利用する

適合率:35%
ホームページユーザビリティ本でのガイドライン番号:56

例えば、モデルや一般的なレンタル写真ではなく、コンテンツとの関係がはっきりした人物の写真を利用する。写真には自然と目がいくものだ。余計なグラフィックは、決定的なコンテンツからユーザの気をそらすことになりかねない。

写真レンタル業界は、活況を呈している。だが、ホームページに笑顔の女性が載っていたからといって、その製品で幸せになれると思うユーザはいない。実際の製品を見せたほうがよい。

5. サイトや企業のやっていることをわかりやすくまとめたタグラインを入れる

適合率:36%
ホームページユーザビリティ本でのガイドライン番号:2

私たちが最近行ったウェブサイトの「about us」セクションの利用法に関する調査では、たいていのユーザが、最終的には、その企業の目的を調べようとすることがわかった。だが、これで顧客に大変な思いをさせるサイトが多いのはどういうわけだろう?

ほとんどの広告スローガンと同じく、内容のないタグラインが氾濫している。役に立たないスローガンを作るのに何100万ドルもかけてしまったら、それがウェブサイトで通用しないとは認めにくいのだろう。

妥協案を提示しよう。その役立たずのスローガンをグラフィックのバナーにして、ロゴのとなりに置くのだ。そして、本物のタグラインは、プレインなテキスト形式でコンテンツエリアに追加する。これなら、実際に見てもらえるはずだ。

6. ホームページから最新の特集記事にすぐ行けるようにしておく

適合率:37%
ホームページユーザビリティ本でのガイドライン番号:33

Alertboxの場合、ホームページからアーカイブに移動して以降の読者が80%を占める。一般的には、ユーザは、ホームページでおもしろそうだと思ったものを記憶している。だが、ホームページに最新の特集記事および目玉商品のリストや、そのアーカイブへのリンクを設けておかなければ、それ以降の訪問時に、ユーザに探しあててもらえる見込みはない。

7. ウィンドウタイトルに手短なサイト概要を入れておく

適合率:39%
ホームページユーザビリティ本でのガイドライン番号:75

これは、おもに検索エンジン対策として重要な項目だ。だが、これほど優れた(そして安価な)インターネットマーケティング手法を利用しない手はあるまい。

8. 検索エリアのラベルには見出しを使わない:ボックスの右に「検索」ボタンを設けておく

適合率:40%
ホームページユーザビリティ本でのガイドライン番号:49

これはささいなポイントだが、検索ボックスのすぐ横に「検索」というボタンが設けてあれば、そこにあらためてラベルをつける理由はない。インタラクションデザインの簡潔明瞭原則によれば、ダイアログによけいな要素を入れれば入れるほど、ユーザを要点から遠ざけることになり、インターフェイスの理解が難しくなる。(言い換えると、考慮に入れる要素が少ないほど、何があるかをよりよく理解できるようになるのだ。)

9. 株価表示には、増減のポイント数だけでなく、増減率をパーセント表記しておく

適合率:40%
ホームページユーザビリティ本でのガイドライン番号:110

このガイドラインは、投資家向け情報などの形で、株価を提供しているサイトにのみ該当する項目だ。株価では、変化の相対量をユーザに理解してもらうことが一般原則であり、よって重要な点でもある。(同様のガイドラインは、この他の経時変化のある統計数値にも該当する。)

75セントの株価上昇は、開始値が8ドルか(9%の大幅増)、60ドルか(1%というまあまあの上昇)で意味がぜんぜん違う。

10. ホームページにはホームページへのリンクを入れない

適合率:41%
ホームページユーザビリティ本でのガイドライン番号:43

これはウェブサイトにもイントラネットにも、すべてに該当するという特殊なガイドラインである。今見ているページに飛ぶようなリンクを設けてはいけない。(株価やその他の変化のある情報を更新するためのボタンなら話が別だが、ナビゲーションリンクではなくコマンドボタンの形で提供するべきである。新しいページに飛ぶわけではないのだから。)今見ているページへのリンクを設けると、以下のような問題が起こる。

  • 今見ているページに行くリンクをクリックするなんて、まったくの時間の無駄。
  • 悪くすると、今の現在位置がはたして自分の思っている通りのページなのか、ユーザの心に疑念を起こさせる。
  • 最悪なのは、こういったリンクをクリックした結果、行き着いた先がどこかわからなくなって混乱してしまうことだ。ページの頭にスクロールして戻るような場合は特にこれがいえる。

ホームページからホームページへのリンクは、「ホーム」を選択肢に入れた統一的なナビゲーションバーを利用している場合、特に起こりやすい。これ自体は結構なことだ。だが、ナビゲーションバーに含まれているページにいる時は、それに該当する選択肢をオフにしておき、現在位置がそこであることがわかるようにハイライトにしておくべきだ。

参考

2003年11月10日