Webを食い物にする検索エンジン

検索エンジンは、ウェブの価値を搾り取れるだけ搾り取る。実際にコンテンツを提供しているウェブサイトに残される取り分はほんのわずかにしかならない。検索への依存状態から脱却することは、ウェブサイトやソフトウェアを提供する企業にとって、戦略上の急務である。

検索エンジンは、ウェブがもたらす収益を吸い尽くす。検索エンジンの索引を形作るおおもとの資料を生み出す企業を食い物にする、まるで吸血鬼のような存在と言えるのではないだろうか。

1995年にAltaVistaが登場して以来、検索は、ウェブ上のもっとも重要なサービスの一つである。ユーザは、大量のページの中から自分の欲しいものを見つけるために、検索を利用する。最近では、欲しい情報に直接アクセスするために、検索エンジンを回答エンジンとして使うようにもなってきた。サービスを提供するウェブサイトと、直接のやり取りをする必要がないケースも多い。

検索結果のページに広告を載せることで途方もない収益をあげられることがわかった検索サイトは、検索ページへのアクセスを促すためのおとりとして、検索とは無関係の様々なサービスを提供するようになった。無料で提供されるそのおとりサービスには、衛星写真やオンライン地図、eメール、画像管理、テキスト翻訳、ハードドライブ検索などが挙げられる。

無料のサービスは、ユーザにとっては明らかに喜ばしいものだ。少なくとも最初はそう受けとめられる。(しかし、落ち着いて考えてみると、無料で提供されるサービスがいずれも、検索エンジンへとアクセスをつなぐことに特化し、長けているに過ぎないとなれば、多様性に欠いたサービスにユーザが頭を悩ますことになるであろうことがわかる。)検索エンジンが無料で提供するサービスは、ユーザの気づかないところで大きな損失をもたらしている。補足記事で概説したように、一企業が “無料”ソフトウェアを所有することで賄うことになるコストは年間100万ドルを優に超える金額となり得るのだ。

検索エンジンが、価値あるサービスをユーザに提供しているという事実に疑う余地はない。ここでの論点は、情報の構築と提供にお金をかけている企業に対して、それを食い物にする検索エンジンが何をしてくれているかだ。検索エンジンは、他のウェブサイトのコンテンツがあって初めて成立するビジネスである。これまでは、情報を提供するウェブサイトへのアクセスを促すという形で、検索エンジンは十分にお返しをしてきたと考えられてきた。今でも、これは真実に違いないが、シナリオは変わりつつある。

ウェブサイトを改良しても検索エンジンが儲かるばかり

ペイドサーチ(検索連動型広告)は、ウェブサイトが実現する稼ぎを根こそぎ持っていってしまう。昨今、B2Bサイトのユーザビリティ調査をする機会が多いので、そこから例を挙げて考えることにしよう。平均発注額が$1,000(B2Bサイトにしては控えめな金額だが)で、成約率が1%のウェブサイトがあったとする。成約率が1%ということは、ユーザ100人に対して、1件の割合で売り上げが立つということだ(ウェブサイト上で直接売り上げが立つ場合もあれば、ウェブサイトをきっかけにして後ほど販路を通じて売り上げにつながる場合もある)。ウェブサイトを訪れたユーザ1人につき$10の売り上げに繋がっている計算になる。さらに、売上原価やその他の限界費用を差し引いて40%の差益があると仮定すると、ウェブサイトは、来訪者1人につき$4の収益をあげていることになる。

以上のような想定のもとでは、検索エンジンに載せた広告が1%の成約率を確実に維持してくれるならば、1回のクリックに対して$3.99までは支払うことができると考えられる。

さて、平均的なウェブサイトの場合、ユーザテストを実施し、サイトをリデザインすることでユーザビリティを向上させれば、成約率を現状の2倍に上げられることがこれまでの調査でわかっている。例として取り上げたウェブサイトが、ユーザビリティを向上させれば、2%の成約率を実現できることになる。とすると、ユーザ100人につき2件のセールスを達成し、$2000の売り上げ、$800の差益が実現されることになる。

競合するウェブサイトが現状を維持している限り、当サイトのマネージャには喜んでもらえる。1回のクリックに対して要する費用は$3.99で変わらず、100回のクリックには$399を支払うことになる。ウェブサイトを改良するだけで、$1だった儲けが$401に跳ね上がるのだ。

しかし、悲しいかな、競合する企業もこのコラムを読んでくれていて、独自にユーザビリティの向上を狙ったプロジェクトを動かしたとしよう。間もなくして、競合サイトも成約率を2%に上げることに成功し、検索エンジンの広告枠に2倍の額で入札できるようになるだろう。

競合する多くのサイトがデザインの改良を続けて、入札額をどんどん上げていけば、あなたの広告は入札額を上げない限り、どんどん下に沈んでいってしまう。クリック1回に対して、$7.99の値をつける以外に取る道はなくなる。そうしなければ、競合していけなくなってしまうからだ。

長い目で見ると、オンラインビジネスによる収益を上げることに成功したとしても、その上乗せ分は結局、検索エンジンに引き渡すだけのこととなる。多少利益が上がっても、それは一時的なものに過ぎない。競合サイトが、ユーザ1人あたりの収益をあげて入札額をあげることで、費用が底上げされてしまうことになるのだ。

検索エンジンにとってこんな嬉しい話はない。何もせずとも収益を2倍にできるのだから。ウェブサイトがこぞって改良されていくのを、ただ黙って待っていれば良い。そうして実現された収益を、ごっそり頂くだけだ。

それでも、ウェブサイトの改良が期待されるのはなぜか。その結果の収益は、検索エンジンが根こそぎ持っていってしまうというのに。これには、以下に挙げる2つの理由が考えられる。

  • 何もしなければ、消え去るしかなくなるからだ。競合がサイトを改良し、入札額でいとも容易くあなたのウェブサイトを凌ぐことができるようになれば、検索結果を表示するページ(SERP)の1ページ目に用意された広告スペースは全て、競合に取られてしまうことになる。(SERPの2ページ目以降は見たことがないとするユーザは90%を超えることが各種の調査で明らかになっている。)
  • 検索エンジンに載せた広告から遷移してくるユーザがもたらす収益のすべてが検索エンジンに取られるとしても、それ以外のユーザがもたらしてくれる収益はあなたが独占できる。ウェブサイトを改良して実現される付加価値は、検索エンジンを通らずに来てくれるユーザがもたらすものなのである。

検索エンジンからの解放

検索エンジンをよそに、ウェブサイトが稼ぐことは可能だ。検索エンジンは、ユーザの最初のアクセスがもたらす収益を根こそぎ持っていくかもしれない。しかし、検索を介さずに成立する取引の価値をしっかりと認識することが重要だ。カスタマーロイヤルティを育むことを心がければ、検索連動型の広告をクリックするのではなく、直接、サイトに来てもらえるようになるはずだ。

検索エンジンからの解放、これは、これからの数年間、ウェブサイトにとっての重要な戦略的課題の一つとなっていくだろう。果たして、新たな顧客を求めて検索エンジンに広告を載せていくだけではなく、顧客を確保することにもっと多くの予算を費やしていけるようにするにはどうすれば良いのだろう? すでに実績のある方法(ニュースレター)から、投機的な方法(携帯サービス)まで、いくつかのアイディアを紹介するのでお試し頂きたい。

  • eメールでニュースレターを配信。定期的に配信されるニュースレターを受け取ってもらえるようにすれば、関係を維持するための究極の手段を得たも同然だ。ユーザビリティの調査で明らかとなっているように、ウェブサイトにちょっと立ち寄ってくれた程度のユーザにウェブサイトが訴えかけるものとは比較にならないほど、ニュースレターは、ユーザの感情に強く訴えかけることができる。
  • リクエストマーケティング。ユーザに何を求めているのかを知らせてもらい、それを提供できるようになったら知らせてあげるのだ。
  • 座談会をはじめとするコミュニティの提供。特に積極的に参加してくれる人を見つけ出す方法を見つけて、彼らをより一層ウェブサイトにアクセスさせる手段を考えよう。ユーザプロファイルに金星をつけるくらい簡単なことで実現できるかもしれないし、優良顧客に相当の恩恵をもたらすくらいのことが必要となるかもしれない。
  • 提携(アフィリエイト)プログラム。他のサイトと提携関係を結ぶことを言う。提携先は、あなたが提供するサービスをユーザに紹介する。取引が成立した場合は、提携先に対して紹介料を支払うという仕組みだ。仲介するサイトが、自分の顧客に対して、紹介先のサイトを心から推薦できる、という場合に、このプログラムはうまく機能する。紹介料として多少の支払いはしなければならないが、検索エンジン相手の場合に比べればたいした額にはならない。なぜなら、掲載権をかけて世界中のウェブサイトと競り合っているわけではないからだ。仲立ちをしてくれるサイトの顧客にとって、あなたのサイトがぴったり合うのであれば、その顧客もあなたのサイトへのアクセスを望むだろう。単に誰が一番高い入札額を提示するか、という話ではなくなる。成約率も高くなるだろう。(以前のコラムで、どのサイトと提携をして、リンクを張るかによって、売り上げは劇的に違ってくることを示すための一例を紹介している。)
  • Newsfeeds。RSSがうまく機能するかもしれないが、来週予定しているRSSの調査が終わってみないことには、その効果は分からない。(RSSのユーザビリティに関する報告を次のカンファレンスで実施したいと考えている。)
  • 自社製品には必ずURLを記載。購入者が、消耗品や交換品を必要とした折に、ふと目にしてくれる可能性を逃す手はない。
  • ハードウェアコンポーネントの提供。ウェブサイトが提供するサービスへと必ず繋がるコンポーネントを提供するのだ。iPodなくして、iTunes music storeの成功はあり得なかった。
  • 携帯向けの機能。検索エンジンのように、行ったり来たりすることを前提にしたインタラクションスタイルは、携帯機器上では非常に勝手が悪い。逆に、ユーザを知り、コンテクストを理解して、ユーザが必要とするものを、必要とする時に、そしてユーザが求めてくるよりも先に提供してあげられるのは、携帯相手の場合だろう。ユーザは、必要を感じたときに毎回サービスを探すというよりも、会員登録して利用するようになる可能性が高い。ユーザのBlackBerryにアイコンとなって場所を得ることは、ユーザの心の片隅に場所を得るようなものだ。何か必要が生じて取引をしたいとなったときに、ユーザはあなたのウェブサイトをきっと訪れるだろう。(携帯サービスからも幾らかの収益を上げることさえ可能になるかもしれない。しかし、それが無理でも、検索エンジンからの解放が実現されることを思えば、やってみる価値はある。)

ドットコムバブルの中では、ユーザを繋ぎとめて逃がさないウェブサイトのあり方がよく議論された。この概念は今、見直されなければならない段階にある。ユーザに、あなたのウェブサイトで何時間も過ごしてもらうことがゴールではない。そこで、取引をしてもらわなければ意味がないのだ。

真のゴールは、ユーザに戻ってきてもらうことであり、値のはる広告をクリックするのではなく、直接、あなたのウェブサイトまで来てもらうことである。継続的なビジネスを実現するためのいくつかの方法をご紹介した。ユーザの行動や顧客ニーズについてより一層の調査を進めれば、優良ユーザを維持するための新たな方法が、もっとたくさん見えてくるに違いない。

2006 年 1 月 9 日