週刊ユーザテスト:
Tivoに学ぶ

TiVo はウェブサイトの新しいデザインを進めながら12週に渡り12回のユーザテストを行った。TiVo の例が示すように、頻繁に習慣的なテストを行うことがユーザビリティを重視したデザインを実現する。

私はいつも、スケジュール内で出来る限り何度もデザインの更新を繰り返し行いながら、速く経費を抑えてユーザテストを行うことを勧めている。私が真に好むのは、週一でテストを行うことだ。例えば、毎週水曜日はユーザの日とし、4人のユーザでテストを行う。

残念なことに、こうしたペースについていけるプロジェクトが少ないことを私は分かっているし、それを実現したプロジェクトの多くは私自身が手がけたものである。最近、週に一回のペースでテストを行ったもうひとつのプロジェクトを見つけた。それは tivo.com のデザインの変更である。

私は長年の TiVo のユーザビリティのファンの一人である。実際、四年前に、TiVo のリモコンの真ん中にある普通よりも大きめの一時停止のボタンを「私がこれまで見た中で最も美しい一時停止ボタン」と述べた私のコメントを New York Times が引用している。

偶然にも Nielsen Norman Group 自ら行った調査が TiVo の新しいウェブサイトのユーザビリティを裏付けている。Web usability の一般的な教訓をまとめた我々の独自調査で、かなりの数のサイトを比較したのだが、Tivo のデザインチームの方法論を私が知る以前に、そのサイトを研究対象の一部として選んでいた。我々は、 Tivo.com をデザインの”しゃれた” サイトの一例として取り上げ、そのサイトは、我々の調査において 優れたサイトの上位 20% の一つとして記録されている。デザインプロセスを通してユーザビリティ課題に取り組みながら、見た目や表現力に優れたサイトをデザインすることはもちろん可能である。

TiVo が私の好むユーザビリティの方法論を取り入れていると聞いて、私は彼らがどのように取り組んでいるのか詳しく知りたいと思った。以下に、TiVo のチームの中心人物 3名との会話を通じて私が学んだことを紹介する。

TiVo のケーススタディ

TiVo の DVR 製品のインターフェイスのユーザビリティはこれまでも称賛されてきたのだが、その綿密なユーザリサーチを、自社のウェブサイトのリデザイン時にも同じように適用したのはつい最近のことであった。同社は、製品開発のプロセスにユーザテストを取り入れている会社として、こうした状況はつじつまが合わないと認識したのである。

「私は皆さんに、使いやすさが最大の特徴である製品を売っているのです。」ユーザエクスペリエンスとデザイン担当の副社長である Margret Schmidt は言う。「けれども、もしそのウェブサイトが使いやすくなかったら、どうしてその製品が使いやすいと思えるでしょうか?我々は、使いやすさをウェブサイトでも実現しようとしたのです。」

12週、12回のテスト

サイトの全面的な改訂を行うのに、プロジェクトチームに与えられたスケジュールは短かった。その時間を最大限に活用するために、チームのメンバーは、新しいサイトを公開するまでの 12週間、継続してユーザテストを行っていくリサーチプランを考え出した。「我々に与えられた時間は決まっていました」TiVo のユーザリサーチャー、Deborah Torres は言う。「我々は、新しいサイトを公開する日から逆算して仕事に取り組んでいました。」

12のセッションのうち 8つで、Torres と彼女のチームはリモートテスト、つまり Go-To Meeting や WebEx といった遠隔地にいる人同士が、協調的に作業を進められるオンラインツールを使ってユーザを参加させる方法を使った。「我々はアメリカ中のユーザにテストに参加してもらいました」と彼女は言う。「中西部や東海岸にいるユーザには、リモートテストの方法を使いマウスを双方で共有して操作しながら、デザインやコンテンツについてテストしました。」

最終段階のいくつかのセッションでは、同社のユーザビリティラボにユーザ達を招き、マンツーマンでテストを行った。Torres は言う。「社内の関係者にテストを見学してもらいました」。そして、そうしたことによりチームのメンバーが単に電話で声を聞いているのではなく「人々の顔にいら立たしさが浮かぶ様子を目にした」という点でそれはよい試みだったと付け加えた。

これに関わる会社の主要な関係者達は、こうしたテストの取り組みを支持した。それは、彼らがプロジェクトの初期の段階で投資すると、実際にサイトを公開した後での変更が少なくてすむため、結局のところもとが取れると固く信じていたからだ。Schmidt によると、実際にインプリメントした後 – つまり修正するのが難しく、よりコストがかかる段階になってから – でなければ見つからないような事柄が、早い時期のテストで明らかにされたという。「そうした問題を後になってから解決するのはずっと難しかったでしょう」と Schmidt は言う。「より多くの情報を今得られたら、それに越したことはないのですから。」

チームを動かす調査結果

このユーザテストから分かった大事な結果として、コンテンツ内の言葉の選び方と見せ方の両方で新しいやり方が必要ということが分かった。細心の注意を払って準備されたコンテンツであったにも関わらず、ユーザの心には響かなかったのだ。

「広告代理店が最初に書いたコンテンツには、弊社のブランドの特徴を伝える考えや個性が含まれていました」Schmidt は言う。「けれども、8人の人々が『内容の無い上っ面なものは読まない。箇条書きを読む』と述べたことが変更を促しました。」

そのテスト結果によって、デザインチームはコンテンツを変更することにした。また、ある程度の文章量を一文か二文に減らし、箇条書きをそれに付け加えたこともあった。 内容の無い上べだけの表現はなしだ。また、コンテンツの見せ方、言葉遣い、どこで見せるかを変更したりもしたのだが、どれもが好い結果につながった。

Torres は言う。「ここで学んだ最も重要なことは、人々が DVR を購入する際にはたくさんの情報、同時に詳細に関しての情報が求められているのです。しかしその一方で、すっきりとしたこぎれいなデザインも求められるのです。」

チームはこうした二つの要求に対し、そのページ内でより詳しい情報を参照できるインラインリンクと更に深いレベルのページへのリンクを提供することで、バランスをとった。「こうすることで、大まかな情報を把握したい人々を混乱させることなく、詳細情報を提供しているのです」と彼女は言う。このシンプルなインターフェイス上の解決策によって、購入のプロセスの異なる段階にいる買い手に同じ情報を提供することが出来た。

彼らが見つけたもう一つの問題は、ラベルのつけ方がよくなかったり、ページ内で表示された場所がよくないことから、ユーザが大切なリンクに気付かなかったということである。「スクロールしないと見えないようなページの下の方に、『現在 TiVo DVR をお持ちですか?』 という情報へのリンクを表示していました」Torres が言う。「それは、手引き的な記事へとリンクします。ユーザ達は完全にこれを無視していました。彼らはそれを広告だろうと思っていました。そして、ここで表示される情報は、購入の決断に関わる要因の一つであるのです。」

チームメンバーは、ユーザがそうしたコンテンツに強い関心を示すのを見たり(そして聞いたり)したのだが、ユーザはそれを見つけられなかったのだ。チームは、そのリンクのラベルを「購入の手順をご覧になりますか?」と変更し、それをページの上部へ移すことにより、ユーザがそのリンクを見つけられるようにした。

ほとんどの場合、そうしたコンテンツの変更は些細なものである。しかし、タスクが上手く処理されるためにそれが与える影響は非常に大きなものだ。

Schmidt は言う。「使われる言葉や言い回しはユーザにとって重要です。コンテンツによってユーザを上手く誘導しなければとお考えかと思います。そしてある時、ユーザがとても単純なことに行き詰るのを目の当たりにしたら、その場で『ユーザが何を考え、なぜそうしたのか』を聞かなければ、後になってなぜサイトが機能していないのかを見つけることはできないでしょう。」

おそらくこれが、サイト公開に先立って、こうした類の綿密なテストを行う必要性を強く裏付ける理由の一つであろう。一度サイトが公開されたら、ユーザの振る舞いを反映した統計をみたところで、なぜそれが起こっているのかは分からない。つまり、なぜユーザがそのように振舞うのか、その理由を把握できないのである。

Schmidt は言う。「なぜユーザがそうするのか、しないのかを掘り下げるのは難しいことです。」「分析結果だけに頼ってそうすることは出来ません。人々が反応する様子を見たり聞いたりして、彼らが考えていることを理解し、それに基づいて決断を下すことが出来るのです。」

Schmidt の言ったことは的を得ている。そうした情報の価値は計り知れない。「その価値はとてつもなく大きい!」と彼女は言う。「今の時点で、デザインのアイデアを繰り返し変更するのは簡単だけれど、一度完成した後では難しいのです。」

デザインチームへの利点

テストを反復して行うことは、迅速に修正を行い、サイトのプロジェクトを長期的に方向付けたということから、TiVo におけるビジネス上の良い判断であった。また、テストを行うことはデザイナーの優れたツールとも言えた。? すなわち、それは利用価値が高くかつ 彼らのやる気を高める効果をもたらした。

「それはすばらしかったです。彼らはテストをして、その翌日には我々にその結果をレポートしてくれました。」 とインターフェイスデザイナーの Alex Logan は言う。「それは略式にまとめられた結果のレポートでしたが、利用価値は非常に高かったです。スケジュールが厳しかったので、そのレポートのおかげで私はすぐに仕事を次に進められました。」

このデザインアプローチがデザイナーに上手く機能したと言えるのは、調査がそれ自体の上に積み重ねられていったと言うことだった。「調査が毎週毎週進められていく中で、それ自体が矛盾したように感じたことは一度もありませんでした。」と Logan は言う。「我々は一般的なデザインの検証を行いました。私の考えでは、実際そのデザインが機能するかどうかは、ユーザの前に出すまでは決して分からないと思っていました。」

Logan によると、そういった知見は、チームに対しデザイン変更の方向性をすぐに決定付けるような「小さな単位」の数々として得られた。「テストをする度に、理想的なデザインへと徐々に近づいて行くのです」と彼は言う。

「たとえそれが最小限のテストでも、何らかの実のある結果が得られます」と Logan は言う。そして、ある時彼らには二つか三つの選択肢があり、しかしユーザがどれを好むのか分からなかったことがあったと付け加えた。彼によると、その中から一つを選ぶ代わりに、「我々はユーザ達に決めさせました。私は自分がどんなに優秀だと思っていても、『自分のデザイン』が人々の前に出るまでは安心出来なかったのです。」

このアプローチを取るべき 5 つの理由

  • 会社へのコストを削減する。 TiVo は、リモートユーザテストのセッションを多く行う方法をとった。従って、かかったコストは人件費と多少の謝礼金(被験者に支払う)だけだった。そして費用対効果(ROI)は絶大であった。Schmidt が言ったように、「千ドルから二千ドルといった額は、あなたが学ぶことへの対価として大した額ではありません。」
  • やる気を高める。 テストのサイクルを速いペースで進めることにより、デザインチームに彼らの方向性は正しいという自信を持たせる。「次から次へとテストをする。するとあなたは自分が正しい方向へ進んでいることを実感するのです」と Schmidt が言う。「そうすることにより、チームのやる気を大いに高めることが出来ます。」
  • ビジネス上の決断を導く。 結果は毎週すぐに得られるので、チームも即対応出来る。Schmidt は、事業主達に反論するためにフィードバックのサイクルを使い、問いかけた。「我々は本当にこのまま推し進めていくべきでしょうか?それとも問題を解決すべきでしょうか?ユーザ達は実際にどう振舞うのかを教えてくれているのです。」
  • テストを実践する文化を作る。 確かに、TiVo の製品部門ではユーザ主体の文化が既に存在していた。しかし、ここで紹介した取り組みを実践するまで、ウェブサイトの部門には特に、ユーザ主体の姿勢はなかった。周期的に行ったテストから得られた結果を見て初めて、全社的にユーザエクスペリエンスを重視して行くことを取り決めた。「現在では、ユーザエクスペリエンスが重要事項となっています」と Schmidt が言う。「全てのウェブ関連のプロジェクトをどのように進めるか、我々はその仕組みを変えてしまいました。新しい『ウェブ』プロジェクトの全てで、製品と同じレベルのユーザエクスペリエンスの検証を行っていくようになるでしょう。」
  • 社内的な知識を築く。 「社内的な知識を築くのです」と Schmidt が言う。「社内のリソース、迅速に動ける社内の調査グループを使います。」

    「社外の代理店を使う場合のスケジュールは長くなる可能性があり、また新しい人が課題を速く進められるようになるまでにはしばらくかかります」と彼女は言い、更に次のように述べている。「他のプロジェクトで何が『正しいか、間違っているか』を把握できるリサーチャーに新しいデザインを見せるようにしています。デザイナーはある種の直感を養います。」「意見を聞く度に、あなたはより優れたデザイナーとなっていくのです。」

成功への 8 つの鍵

  1. とにかくやってみる。 「やってみなさい。そして耳を傾けなさい」と Schmidt が言う。「あなたはデザインから自我を切り離さなければなりません。ユーザが そう言ったとき、それは優れたデザインと言えるのです。」
  2. 関係者のサポートを得る。そしてプロジェクトを推進する人物を見つける。 Torres は言う。「関係者がフィードバックに耳に傾けて、対応する意志を持っている場合に限り価値があります。」
  3. 組織全体に参加を促す。 「興味を持つ人全てを招きましょう」と Torres が言う。「ユーザビリティセッションの観察用の部屋はデザイナー、プロダクトマネージャー、コンテンツ制作に関わる人々でいっぱいでした。リモートテストのセッションでさえ、マネージャー達がログインして観察していました。」こうした参加が、組織全体から広く賛同を得ることを確かにする。
  4. 明確な結果が得られるよう優先順位を決める。 各画面やタスクで、適切な質問をし、明確な調査目的を設定する。すると、テストのセッションを終えた後ですぐに、次の作業に活かせる結果をまとめることが出来る。
  5. 迅速にテスト結果を配布する。 各テストでセッションを行った翌朝、前夜のテストで得られた結果を伝えるため、最重要な結果の概要を簡潔に箇条書きにまとめて配布した。こうした概要は組織全体のあらゆる人々から感謝された。
  6. 調査の方法を、明らかにしたい問題にあわせる。 異なるテスト方法には、それぞれに適した目的がある。、TiVo のチームは、フォーカスグループ、コンセプトのテストからリモートユーザテスト、施設内でマンツーマンにてタスクを与えながら行うユーザテストに渡る様々な方法を使った。調査の方法をテストの目的に合わせることにより、TiVo のチームは一連の貴重な結果を得た。
  7. 結果への賛同を求める。 Schmidt によると、特に、迅速にテストを進めていく状況で最も効果的に賛同を得られる方法とは、結果を解決策と共に示すことだと言う。彼女が言うには、「解決策の提案をせずに調査の結果そのものだけを共有すると、関係者は不安になります。結果を踏まえてどのように解決するのかを議論するのに 20 人は要りません。」
  8. ユーモアのセンスと良い心がけを保つ。 速いペースで仕事の不確かさを受け入れながら進めることの出来る柔軟なスタッフと仕事をする。「次に何をテストするのかあなたには分かりません」と Torres が言う。「それはリサーチャーにとって本当に負担の大きいことでした。時には、前日の夜まで次の日に何をテストするのか分からないことがありました。そうした状況で私は
    テストの手順を用意し、翌日のテストを進められるよう備えている必要がありました。」

絶対出来る

TiVo にはユーザ中心にデザインを進める習慣が、より備わっているのかもしれない。しかし、あなたの会社でも週一でテストを進めるということが不可能だという理由はない。ユーザに会うことが毎週の習慣として期待されたものとするようにして、皆がカスタマーのニーズに注目するように仕向けよう。

2008 年 7 月 28 日