見つけてもらうためには昔ながらの言葉を使おう

検索を行うとき、ユーザの頭に浮かぶのは、慣れ親しんだ言葉だ。もし使い古された言葉よりも、造語や新語を使っているならば、ユーザは貴方のサイトをみつけることはない。

「ユーザの言葉を使うこと」というのが、20 年以上ユーザビリティの基本ガイドラインでいわれていることだ。ウェブという環境が言語を基礎に成り立っていることによって、正しく言葉を使うことが、とても重要になっている。

それにつけ加えて、私の書いた本でも説明されている通り、ウェブユーザは、ますますかつてないほど検索に頼っている。新たにウェブサイトをみつけるにも、ウェブサイトやイントラネットの中で特定のページをみつけるにも、検索がその手段として使われている。検索結果ページ(SERP)の 1 ページ目に表示されていなければ、存在意義さえ失われる。そのため、ウェブのための執筆活動の最初の使命は、みつけてもらえるように書くことだ。

検索エンジンのための最適化(SEO)には、沢山の要素がある。しかし、SEO ガイドラインの一番はじめの項目は、古くからいわれている「ユーザの言葉を使うこと」というものだ。もっと正確に書くと、ユーザの検索キーワードと合致するような言葉を使うこととなる。

Winston Churchill は、「言葉は短いものが一番よく、昔ながらの言葉で短ければ、最高である」といった。これは SEO のことではなく、印象に残る散文の書き方についての言葉だ。みつけてもらうためには、正確な言葉のほうが、ユーザの問題を表現するには意味が曖昧になることが多い短い言葉よりも、よい。たとえば “easy”(簡単)よりも “usability”(ユーザビリティ)で検索する人のほうが、最低でもこの業界内に身を置き、私のリサーチ報告書や、セミナーの顧客になる可能性のある人たちの間では、多い。

しかし、昔ながらの言葉の部分は、Churchill がいった通りだ。

昔ながらの言葉は、なじみ深いため、よい。なじみのある言葉のほうが思いつきやすい。したがってユーザは、抱えている問題を、検索キーワードにまで煮詰めると、古い言葉を使うことのほうが多く、大概それは 2 から 3 語程度となる。

なぜ新語や造語が検索順位を下げるか

多くの場合ウェブの執筆者は、検索キーワードとして使われない言葉を使うことを強要され、ウェブサイトの価値を下げる結果に追い込まれている。ここにユーザにみつけてもらうことを確実にする、執筆時のガイドラインをいくつか挙げておく。

  • 造語を一般的な言葉で補足する。新しい言葉を作るのは、誘惑的だ。その造語が新語として受け入れられれば、それを作ったという名誉が与えられる。しかし古い言葉が使われ続けることのほうが、一般的だ。ユーザビリティ・ガイドラインでは、古くから造語をナビゲーションメニューで使わないように提唱されている。ユーザは、知っている言葉を探すからだ。コンテンツの中の文章では、効果的に造語を使ってもよいが、それを一般的な言葉で補足することを忘れてはいけない。一般的な言葉とは、つまりユーザたちが、毎日仕事の中で使っているような言葉のことだ。
  • 売り文句や自社内だけで使われているような言葉を避ける。スペードはスペードと呼び、シャベルと呼んではいけない。もちろん掘削機でもない。多くのマーケッターは、製品を過去のものよりも偉大に見せようと、装飾したがる。しかし顧客たちは、探しているものを、彼らが知っている言葉で表現するので、退屈なことだと思うかもしれないが、彼らが知っている言葉を使うようにしなければならない。そこで使われているのが退屈な言葉だと思うことこそ、よく使われている言葉だという証明でもある。ユーザは、「安い航空券」といった言葉を使うが、「バリュー価格の旅行体験」とった言葉は使わないのだ。多くの場合、退屈な言葉こそ、よく使われている言葉だということを覚えておこう。
  • ブランド名を一般的な言葉で補足する。もしユーザたちが貴方の会社のブランド名を検索するほど好きならば、それは素晴らしいことだ。この時点で使命の半分には、成功したといえる。主な目的がセールス・ファンネル(販売工程で、顧客との接触から販売までに至るまでに、対象顧客が各工程で少なくなっていくことを漏斗に例えた販売モデル)でいうところの接触からリサーチの段階を生き延び、顧客の購入先候補に残ることである B2B サイトにおいては、特にそういえる。もちろん製品を説明する上で、貴方のファンがみつけられるよう、ブランド名を記述しておいたほうがよい。しかし貴方のブランド名を知らずに、彼らが抱える課題への解決法を探している、それ以外の 95 %の人たちを切り捨ててはいけない。ファンネルの初期段階でユーザたちは、まだ取引先候補が絞り込めていないため、ブランド名を検索キーワードに使わないことが多い。このタイミングこそが、彼らと接触できる可能性のある時だ。
  • 「政治的に正しい」言い回しは避ける。たとえばアクセシビリティについて書くとき、blind(全盲)ユーザや、low-vision (弱視)ユーザについて書くようにして、visually challenged(視覚的に困難を背負った)ユーザという書き方は辞めよう。まず、”visually challenged” などという造語で検索する人はいない。2 番目に、”blind” や “low-vision” という言葉のほうが、2 つのグループの人たちを表現できていて、正確だ。どちらのグループも、それぞれ異なる補助的な技術が必要で、ウェブサイトではそれぞれ異なる体験をすることになる。そのため、彼らには完全に異なるユーザビリティの配慮が必要になるのだ。

ウェブページを、きらびやかな新語で埋め尽くすと、ユーザが検索でみつけてくれること、というインターネット・マーケティング上、最強の武器を失ってしまうことになる。検索結果に引っかかるというのは、必要不可欠な第一歩だが、それで終わった訳ではない。ユーザたちがサイトへのリンクをクリックし、サイトには高い顧客転換率が求められるのだ。

アイトラッキング・テストから、検索結果で高い順位で挙げられていても、見出しの意味が理解できない場合は、その項目を無視することが判っている。そして、何百というユーザビリティ・テストから、複雑すぎ、または疑問に答えられない製品ページを持つウェブサイトは、ユーザに見捨てられることも判っている。これら 2 つの課題は、確実に執筆者やユーザビリティ・テストが焦点を合わせて取り組むべき問題だ。

ウェブサイトの成功には、単にみつけてもらう以外にも、満たされなければいけない課題はあるが、みつけてもらうことが最初の一歩だ。古い言葉を使えば、その第一歩を踏み出したことになり、他の競争相手と、彼らの使い物にならない新語や造語よりも、一歩リードできたことになる。

2006 年 8 月 28 日