情報アーキテクチャの間違い・トップ10

ウェブサイトは、その構造とナビゲーションシステムとが互いに支え合っていなければならない。検索システムとも結びついていなければならない。サブサイトに至るまで一体化していなければならない。複雑で、一貫性が無く、選択肢が隠れていて、UIが扱いにくければ、ユーザーは必要なものを見つけられない。

ウェブサイトで思いどおりの操作がまったくできない原因の大半は、情報アーキテクチャの出来の悪さにある。これは、ウェブユーザビリティにからむ他の問題点に比べてなかなか改善しにくい。その理由を解き明かすため、腫れた親指のようにずっと前から目についていた間違いを10個洗い出してみた。これを全部合わせれば、ウェブサイトは毎年何十億ドルも無駄にしていることになる。

IAの間違いトップ10を「構造の間違い」「ナビゲーションの間違い」の2つに分けて次のように掲げた。この分類は、2日間に分けておこなうIAセミナー「第1日目:構造」「第2日目:ナビゲーション」の内容に相当する。もちろん両方ともしっかり理解してほしいが、この2つは本質的に設計の水準が異なる。つまり前者は、ウェブサイトをどのような構造にするかという、目に見えない部分であり、後者は、その構造をユーザーがどのように理解して利用するかという、目に見える部分である。

構造の間違い

1. 構造が無い

構造がらみの問題で特に目につく問題は、個々のアイテムをどのようにまとめ上げるかという方針を持たないままに設計者がウェブサイトを1個の大きな沼のように扱うことである。たしかに、検索機能を使うか、最新の広告媒体や外部サイトのリンクをたどるかすれば、魚は釣れる。しかし、沼の底をすくっても見つかるものは高が知れている。ウェブサイトにほかに何が掲載されているのかを理解したり、関連するアイテムを見つけたりする機会は得られないのである。

こうした罪つくりな行為は、ニュースサイトではおなじみであり、ネットのカタログ通販サイトにもよく見られ、記事や商品といったアイテムが互いに結びつかないまま独立して扱われている。そうしたウェブサイトからユーザーが我先にと立ち去っても不思議ではない。

2. 検索機能と構造とが結びついていない

以前からわかっていたことだが、ユーザーはしばしば検索こそすべてといった態度を示す。これはユーザーに必要なものが検索だけであるという意味ではない。検索結果をもとにどこかのページに辿り着くのは、どこかの都市にパラシュートで降り立つようなものである。パリに行きたい場合、運がよければアムステルダムではなくパリに降り立てるとは思うが、お気に入りのレストランの入口にピンポイントで降り立つのはちょっと無理がある。目的地に辿り着くためには、一度着地してから歩いたりタクシーを拾う必要がある。それと同じようにユーザーも多くの場合、検索で辿り着いたウェブサイトの周辺をあちこち見ながら移動する必要がある。

言うまでもなく、周辺に何を配置するかを明確に定めた構造をしていなければ、ウェブサイトのローカルナビゲーション(同一階層での移動手段)はうまく機能しない(「間違いその1」を参照)。しかし、目に見えるデザインという観点からも、今ユーザーのいる場所で何ができるかを示さなければならない。ユーザーの検索した結果と、辿り着いたウェブサイトの内容に、どれほど関連性があるかを示せるようなデザインであれば、なおよい。

検索したときに、その検索結果がウェブサイトのどの位置にあるかがわかれば、SERP(検索エンジン結果ページ)ユーザビリティは上がる。これはGoogleのような外部検索エンジンでは必ずしもできることではない。というのも、外部検索エンジンではウェブサイトの構造がわからないうえに、どのページで何ができるかもわからないからである。しかし、ウェブサイトの設計者なら間違いなくその構造を知っているので、自分のSERPにはそうした情報を載せるべきである。

残念なことに、多くのサイトでは、検索システムとナビゲーションシステムとが互いに支えあっていない。この問題を一層ひどくしているのは、ユーザーの今いる位置を示さないナビゲーションデザインという、よくあるもうひとつの間違いである。つまり、検索結果をクリックしてしまうと、自分がサイトのどの位置にいるかがわからなくなるのである。まるで、ズボンを探してそれをクリックしたら、もうほかのズボンが探せなくなるようなものである。。

3. カテゴリー別のランディングページが無い

サイトに表示した一連のカテゴリーをそれぞれのランディングページ(インターネット広告や検索結果からのリンクページ)にリンクさせ、そのランディングページに各セクションの概要を示すことを我々はおすすめする。概要ページを示さずにセクション内の各ページに直接リンクしている例も時々見られた。たしかにウェブサイトのページ数は減るかも知れないが、下位サイトの内容を明記したページがなければ、サイトの内容についてユーザーに誤解を与えかねず、大切な情報や商品、サービスをユーザーが見逃すおそれがある。

カテゴリー別ページは、商品、サービス、情報を検索するとき最も重要なランディングページであるため、SEO(検索エンジン最適化)にも有効であり、また「間違いその2」を解決する手段にもなる。カテゴリーページがあれば、たとえ検索結果から辿り着いた先がウェブサイトの端の端(リーフノード)であっても、ひとつふたつ上の階層に簡単に上がれるからである(サイト内での現在位置を示すパンくず機能を利用すれば、簡単に階層が上がれる)。

4. 階層構造があまりに多重的

現実の世界と違ってオンライン世界では各アイテムを複数の場所に存在させることができる。これがオンライン世界の長所のひとつである。ウェブサイトでは、商品をはじめとするコンテンツをさまざまな特徴に応じて分類できるため、関連性のある複数のアイテムがほぼ1か所で探せるうえに、膨大な数の商品をふるいに掛けて、自分の目的にかなったものだけを表示することもできる。

これはまったく良いことである。しかし多重化した階層構造は、いとも簡単に松葉杖と化してしまい、それが無ければ歩くこともままならないといった事態を引き起す。理にかなったわかりやすい最上位カテゴリーを設定する手間を惜しんで、この重要な工程をさっさと片づけてしまったのでは、パッとしないカテゴリーがたくさん出来て、同じカテゴリーの中に何度も何度も同じ商品が登場してしまう破目になる。ユーザビリティに影響はあるかって? ユーザーは最上位カテゴリーにあまりに長時間呻吟し、あげく複数のページに同じアイテムが登場するに至って、「いま見ているのは、さっき見たのと同じ商品なのか?」と混乱をきたしてしまうのである。

分類があまりに複雑だったり、ウェブサイトの構造があまりに多重的だったりすると、ユーザーはもうこれ以上前へ進もうとは考えなくなる。また選択肢の多すぎる場合も、人は情報の匂い(手がかり)に疑問を抱くものである。ウェブサイトにアクセスした端から信憑性を欠くようでは、アクセスしている間ずっと信頼は取り戻せず、結局、買物をあきらめるといった悪影響が出てしまう。

5. サブサイト/マイクロサイトとメインサイトとの結びつきが弱い

打ち捨てられたマイクロサイトは、古びた販売活動の残滓となってウェブサイトをよごす。新製品を発売したときには、専用のマイクロサイトというのも名案であろうが、翌年ともなればそのマイクロサイトがオンライン戦略をくじいてオンライン上での影を薄めてしまう。

ウェブデザインは、長い年月に耐えるデザインでなければならない。今やっていることが5年後にどんな感じがするか考えてみればよい。

独立したマイクロサイトはやめにして、新しい情報はメインサイト内のサブサイトに載せるのが一般的には一番良い。しかし、こうしたサブサイトをサイトの全体構造に一体化させる必要性に変わりはない。

たとえばマイクロサイトでもサブサイトでもそうだが、製品別ページの中に時々、その製品を提供している会社や組織に関する情報にリンクしていないページを見かける。また、メインサイトで検索してもサブサイトがうまく上がってこないサイトも多い。これではマイクロサイトがたびたび完全に無視されてしまう。

ナビゲーションの間違い

6. ナビゲーションの手段が見えない

最低最悪の間違いは、ナビゲーション手段そのものが存在しないことであろうが、これはめったにあることではないので論ずるのはよそう。しかし、ユーザーの目に入らない機能は存在しないも同然であり、ナビゲーション手段が見えないのはナビゲーション手段が存在しないとの同じくらいひどいことである。

ナビゲーション手段を見つけるのに手間取るようでは困る。ナビゲーション手段は常にページに表示しておかなければならない。隠れているものを探すために画面のあちこちにマウスを動かすような掃海作業を小さな子どもは好むが、ティーンエージャーはそんな作業を好きではないし、大人にとっては嫌悪の対象である。

同じように、ナビゲーション手段そのものをバナーのように表示するときや、一見広告かと思わせるような要素の横にナビゲーション手段を配置するときには、バナーの周辺が隠れて見えなくなるのを避けるべきである。ユーザーは、広告だと思うとそれを無視してしまうからである。

たとえ画面に表示されていても、ユーザーが目を向けなければ、見えていないことと同じである。

7. ナビゲーションボタンなどが扱いにくい

一般に、動いたり弾んだりするものはすべてウェブユーザビリティを損なう。ユーザーが必死になってサイト内を移動しようとしているのに、ナビゲーションボタンなどが動いてしまっては、命取りである。ユーザーは、GUIの操作方法といった低レベルの課題に気を取られずに、どこへ進むべきかという、もっと高尚な課題に注意を向けるべきである。

この点でよく見られる問題が2つある。ひとつは、あまりにコロコロとコンテンツが切り替わることである。もうひとつは、ひとりでに動いたり回ったり転がったりする要素である。この種の要素にユーザーは決まって不平を言う。この種の要素をウェブサイトに盛り込むデザイナーもプログラマーも、ユーザーの苛立ちがビジネスに及ぼす影響をとんでもないほど見くびっている。

8. ナビゲーション手段に一貫性が無い

ナビゲーション手段は、ユーザーを助けるために存在しているのであって、それ自体が謎の存在になってはならない。ナビゲーションボタンなどは、その機能がたちどころに理解できるものでなければならないし、ウェブサイト全体を通じてその機能に違いがあってはならない。残念ながらウェブサイトの多くは、ユーザーが移動するとナビゲーションの機能も変化してしまう。数々のナビゲーションボタンなどが現れては消え、もはやユーザーは自分の手に負えないと感じてしまうのである――「あのメニュー項目をもう一度表示するにはどうすればいいんだ? ほんの何ページか前には見えていたというのに」。

グローバルナビゲーションは、ウェブサイトにとって最も評判が良い要素というわけではないが、常に表示しておけば、それが航路標識となって、ユーザーは今自分がどこにいるかがわかり、道に迷っても簡単にウェブサイトの最上位まで戻ることができる。

9. ナビゲーション手段が多すぎる

我々の主催する終日セミナー「ナビゲーションデザインに関するセミナー」では、ウェブサイトのナビゲーション手段を25種類とりあげる。それぞれのナビゲーション手段には、ユーザビリティに関してそれぞれ個別の利点もあれば不利な面もあろう。そこで、セミナーの主眼はナビゲーションデザインの妥協点を探ることに置く。つまり、どのナビゲーション手段をいつ使うのかということである。

ひとつだけはっきりしていることがある。それは、ウェブサイトやイントラネットの種類に適したナビゲーション手段というものが存在していることである。しかし、そうしたナビゲーション手段を全部使っても功を奏さない。混乱するだけである

ユーザーの気を惹こうとするあまり目移りさせては、ユーザーは目がくらんですべてが水泡に帰すのである。

10. メニュー名に造語を使う

以前なら、この間違いはもっと上位にランクしたであろうが、幸運にもかつてほど横行しなくなった。それでも懲りることなく、自分たちにしか通用しない専門用語をラベルなどのナビゲーション項目に使用しているウェブサイトが多すぎる。

造語をナビゲーションの項目名に使用したのでは、ユーザーをまごつかせるばかりか、検索システムにも悪影響を及ぼす。そもそも探し物の名前がわからなければ、探しようがないからである。同義語でも検索できるじゃないかとお思いになるかもしれないが、ナビゲーション項目に使われている用語のほうがSEO(検索エンジン最適化)の影響力は遙かに大きく、誰も検索しない用語のために最適化を図るなど無駄である。

耳慣れた言葉のほうがよい。選択肢の意味を理解できたほうが、正しい選択肢を選べる確率が高くなる。ありのままに易しく語ることである。メニュー項目がユーザーに理解されなければ、クリックしてくれる機会も減る。矛盾しているように思われるかも知れないが、企業というものは、新製品や主力商品に突飛な名前をつけたがる傾向が強い。そうして、みずから構えた二連ライフル銃で自分の足を撃つという墓穴を掘るのである。

関連記事トップ 10 リスト

以下に示すトップ 10 リストのほとんどは、今日のウェブサイトにもまだかなり該当する。新しい間違いが増えたからといって、古い間違いがなくなるわけではないが、それらを目にする機会は幸いも減ってきている。

2009 年 05 月 11 日