1996年Webの反動

Webはまだまだ悪くなるだろう。改善されるのはその後だ。

専門家の中には、早晩、Web、さらに/またはインターネットそのものが崩壊するだろうと言う者もいる。今まで以上に負荷が高まり、反応時間がどんどん遅くなるからだ。Bob Metcalfeは、1996年のうちにWebが崩壊しなかったら、次回のWeb Consortiumカンファレンスで自分のコラムを食べてみせると約束した(そして、「1997年4月、彼は本当にこれを食べてみせた」(http://www.infoworld.com/cgi-bin/displayNew.pl?/reed/sr042897.htm: リンク切れ))

インターネットは毎年規模が倍増していて、この傾向は、インターネットの創始以来変わっていない。現在、Webはさらに目覚しい速さで成長している(ほぼ4ヶ月ごとに倍増)が、この急速な成長率にもいずれ低下するに違いない。なぜなら、Webはインターネットのサブセットであり、ゆえに、それを上回ることはできないからだ。これに比べて、Mooreの法則によれば、コンピュータの性能はだいたい18ヶ月ごとに倍増する。

この2つの成長率を比較してみよう。

  • 需要(Webユーザの数)は12ヶ月ごと、あるいはそれ以上のペースで倍増する
  • 供給(サーバの性能)は18ヶ月ごとに倍増する

Webサイトでは、前例にないほどのスピードでサーバをアップグレードしなくてはならないのは明らかだ。もちろん、これは今までのコンピュータの成長率より、ずっと速いスピードである。可能な範囲で最大のサーバを使って運営されているWebサイトは、今のところごくわずかしかない。よって、この問題の一部は、単によりハイエンドの機種にアップグレードするだけで解決することができる(すばらしいことだ、なにしろ私はSunで働いているのだから)。

サーバのアップグレートとともに、ミラーやキャッシュサーバの利用を促進すれば、Webの成長率とコンピュータの成長率のミスマッチはかなり解消されるだろう。これにより、トラフィックは最小限に抑えられ、もっとも人気のあるページを各地に分散して配信できる。残念ながら、キャッシュは部分的な解決にしかならない。Webではリレーションサービスがトレンドになりつつあり、ユーザごとに個人用のページ(ユーザごとに違うからキャッシュできない)を提供するようになってきたからだ。

言い換えると、反応の遅さという現在のWebが抱える問題は、1996年になっても相変わらず解消されないばかりか、さらに悪化すると思われる。だがキャパシティの問題は、いずれ解決されるだろう。インフラが恒常的に投入されているし、新しモノ好きにオンラインが行き渡った後は利用率も頭打ちになってくると思われるからだ。

もっと深刻な問題がある。初心者Webユーザに対するユーザビリティの欠如だ。インターネットが毎年2倍になるという事実は、すなわち、どんな時点においても、ユーザの半数はネット経験が1年未満だということを意味する。言い換えると、当面は、初心者ユーザが50%を占めるという宿命にあるのだ。

Webブラウザはだんだん使いにくくなっている。機能が盛りだくさんな上、先進的なWebサイトにアクセスする際には、適切な機能拡張を探してきてインストールしなければならない。Javaはこの問題を軽減してくれるかもしれない。ソフトウェアオンデマンドの謳い文句どおり、意識的にユーザがコマンドを出さなくても自動的にアプレットが起動する。だが、なおざりなデザインのJavaインターフェイスが蔓延すれば、Webサイトごとに違ったインタラクションスタイルを求められ、ユーザの混乱を招く恐れが十分にある。一時的にWebユーザビリティが理想的な状態になったことがある。それは、MosaicのリリースからNetscape 1.1のリリースまでの時期であった。これら初期のブラウザは、比較的機能が絞られていて(よって、ユーザにもその使い方はすぐに想像がついた)、その前の世代のテキスト専用ブラウザよりも直感的なものになっていた。

Web上のコンテンツ、機能、プラグイン、アプレットが増加するにつれ、あらゆるサイト、あるいはソフトウェアデザイナーは、かなり真剣にユーザビリティに取り組むことが求められる。最先端のユーザだけを中心にデザインしないようお願いしたい。ユーザの大多数は新入りで、Yahooの概念階層ですら、彼らにとってはかなり難しいのだ。あなたが1990年からオンラインにいた人なら、現在のユーザの98%はあなた以下の経験しかないことになる。2000年にあなたのコンテンツにアクセスしてくるだろうユーザの90%以上は、今現在、まだネットを使っていない人たちだ。

1996年4月