イントラネットとインターネット:デザイン上の違い

イントラネットと、オープンなインターネット上で公開しているウェブサイトとは、まったく異なった情報空間である。ユーザインターフェイスデザインにも異なったものが必要だ。同じデザインを使い回してデザイン資源を節約したい気持ちはあるだろうが、この考えは間違っている。これら2タイプのサイトには、様々な面で違いがあるからだ。

  • ユーザが違う。イントラネットでは、ユーザはあなたの会社の従業員であり、あなたの会社や、その組織構造、さらに社内用語や状況についてもよく知っている。インターネットサイトのユーザは顧客であり、あなたの会社についてよく知らないし、それほどの関心もない。
  • タスクが違う。イントラネットは、かなり込み入ったアプリケーションを含んだ社内の日常業務に利用される。インターネットサイトはもっぱら製品に関する情報を探すために利用される。
  • 情報のタイプが違う。イントラネットには、報告書の草稿や、プロジェクト進行報告、人事情報、その他の詳細な情報が数多く含まれている。一方、インターネットサイトに置かれるのは、マーケティング情報や顧客サポート情報である。
  • 情報の量が違う。通常、イントラネットには、その会社の公開用ウェブサイトの10~100倍ものページがある。イントラネットには、非常に多くの進行中の仕事が文書化されているからだ。また、プロジェクトや部署によっては、内部文書はあっても一切公開しないことも多い。
  • 帯域幅とクロスプラットフォームへの要求が違う。インターネットは、まだ低帯域から中帯域で足踏みしているが、イントラネットは、これに比べて、100倍も1000倍も速い回線で結ばれていることが多い。よって、、イントラネットでなら、豊かなグラフィックや、あるいはマルチメディアやその他の先進的コンテンツまで実現できる可能性がある。また、イントラネットならサポート対象となるコンピュータやソフトのバージョンを決め打ちできることも多いので、クロスプラットフォームの問題で頭を抱えることは少なくなる(これもまた先進的なページコンテンツの実現に寄与する)。

もっとも基本的なところで、イントラネットとウェブサイトは2つのまったく異なった情報空間である。従業員が内部ネットと公開用ネットを見分けられるように、これらの見た目は変えておくべきである。見た目が違えば位置感覚が強調され、ナビゲーションもよくなる。また、2つの情報空間に違った印象を与えることで、外部と自由に共有していい情報と、内部向けの極秘情報とを従業員が見分けるのも簡単になる。

イントラネットのデザインはもっとタスク志向であるべきで、インターネットデザインほどプロモーショナルである必要はない。各企業とも、イントラネットデザインはひとつに統一すべきだ。そうすれば、ユーザが学習する手間が一度で済む。イントラネットでは、オプションや機能の数ももっとたくさん増やせる。サイト間を短時間で移動するオープンなインターネットとは違って、ユーザが恐怖感を感じたり、圧倒されたりしないからである。(イントラネットのホームページが複数、イントラネットの書式も複数あるという企業がびっくりするほどたくさんある。イントラネット統一化の第一歩として、まずはこれをやめよう)

イントラネットには、インターネットサイトよりもはるかに強力なナビゲーションシステム要求される。扱う情報量が、膨大だからである。特にイントラネットにはサーバ間の移動を効率的に行うためのナビゲーションシステムが必要だ。一方、公開用ウェブサイトではサイト内ナビゲーションしか要求されない。

イントラネット管理

イントラネットの管理には3つの方法がある:

  1. 単一の厳密に管理されたサーバ。認可を受けた文書だけが掲載される。サイトには単一の、うまく組み立てられた情報アーキテクチャがあり、ナビゲーションシステムはひとりのデザイナーの管理下にある。一定の条件を満たして掲載を認められた情報についてはそのユーザビリティを最大化できるが、企業の情報インフラの構築法としては、このアプローチはベストのものとはいえない。なぜなら、センターとなるポイントが隘路となって、新しい、有益な情報を広めるのに時間がかかってしまうからだ。全体主義的なイントラネットでは、あまりにも機会損失が大きい
  2. ミニインターネット:複数のサーバを立ち上げるが、コーディネイトはしない。完璧なカオスが支配する。イントラネットに何が載っているのか知りたければ、スパイダーのような「資源発見」手法を利用するしかない。デザインにも一貫性はない(みんなが勝手に自分のページを作る)。情報アーキテクチャもない。このアプローチで行けば、企業内でのコミュニケーション機会は増大するように思えるが、現実にはそうはならない。なぜなら、無秩序の中では欲しい情報がほとんど見つけられないからだ。
  3. 管理された多様性:たくさんのサーバを併用するが、ページは単一のテンプレートとインターフェイス標準にもとづいてデザインされる。イントラネット全体は、よく計画された(そしてユーザビリティテスト済みの)情報アーキテクチャに従い、ナビゲーションしやすくなっている。私はこのアプローチを推す。

管理された多様性は、多くの面で、来るべきネットワーク経済を特徴付けるものとなるだろう。だが、従来のトップダウン管理に比べると、このアプローチの経験は浅い。

管理された多様性の利点を応用してユーザビリティの向上を図った例をひとつだけご紹介しよう。イントラネットの検索エンジンは、正確さ向上のためにキーワードの重み付けを利用できる。オープンなインターネットでは重み付けは不可能だ。部品関係のあらゆるサイトが、「部品」というキーワードに対する自分の重み付けを最大だと主張するに決まっているからだ。イントラネットでは、ちょっと情報管理に力を入れるだけで、著者に公正な重み付けをさせることができ、制御されたボキャブラリを正しく使ってページの分類ができるようになる。

エクストラネット: 折衷型デザイン

エクストラネットとは、ごく一部のビジネスパートナーにだけ公開された特別なページのことで、これを使えば企業内のコンピュータ資源に外部から直接アクセスできるようになる。典型的な例としては、注文の処理状況を顧客がチェックできるようにする(例:急ぎの注文がいつ発送されたか?支払いは済んだか?)とか、認定されたベンダーに対して提案書の募集告知を閲覧できるようにするといったものが挙げられる。

エクストラネットとは、公開のインターネットと閉鎖的イントラネットの折衷であり、そのようなものとしてデザインするべきである。基本的にはエクストラネットとはインターネットの一部である。なぜなら公開版ウェブサイトと同じように多種多様な企業の人々がアクセスしてくるからだ。しかし、イントラネットの本当に内部的な部分には彼らはアクセスできない。ゆえに、エクストラネットの視覚的なスタイル、およびメインのナビゲーションオプションについてはインターネットのデザインと視覚的に統一しておくべきだ。そうすれば、ビジネスパートナーにも、この両サイトが同じ企業に属するものだということが伝わるだろう。2つのスタイルにちょっとした違いをつけておけば(例:補色的な色調)、エクストラネットの閉鎖的、機密的性質を強調できるだろう。

エクストラネットに、公開ウェブサイトへのリンクを設けておくのはよい考えだ。だが、非公開のイントラネットへのリンクは入れるべきでない。ビジネスパートナーには、そのリンクは使えないからだ。

実際のエクストラネットの運用にあたっては、イントラネットと共通する要素がたくさんある。ユーザは、日常業務の大部分をエクストラネット上で行うため、特殊な用語や比較的複雑な操作も許容できるはずだ。ユーザに対して、ある程度のトレーニングを課することすら期待していいだろう。エクストラネットをうまく使えば自分の仕事の効率が高まるというのなら、その動機としては十分だからだ。だが、トレーニングの必要性や、エクストラネットの複雑さにも限度がある。エクストラネットのユーザが、わき目も振らず、特定のデザインにのみ特化してくれるとも思えないからだ。エクストラネットユーザには、企業の購買担当者が多いはずだ。彼らはあなたのエクストラネットを利用するだろうが、その他にも、例えば50ほどの他の企業のエクストラネットを使う必要があるかもしれない。この次また来るまでの間、どんな機能があって、どんなオプションがあったかを購買担当者に覚えていてほしいのなら、エクストラネットはかなり使いやすいものでないといけない。

1997年9月15日