ページの独裁:
あいかわらずナビゲーションサポートに欠けるVer.4ブラウザ

主要なウェブブラウザのバージョン4が登場して高く評価されているが、実際にはどのソフトも、ユーザのナビゲーションをサポートするという点では、Mosaicからほとんど進歩していない(Mosaicのリリースは1993年)。この4年間でブラウザにはかなりの改善が見られたが、そのほとんどはメディア発信者のための改善であった。ユーザの動きや、情報ニーズの効率的な管理に実質的に寄与する機能はほとんどなかった。

ほとんどのウェブブラウザでは、3つのレベルの機能が一体となっている。

  1. インターネット接続層には、単純なHTTP、各種の暗号化、それに評価サービス(例えば、ポルノを除外するため)といった、リモートのウェブサイトとのやりとりに必要な様々なプロトコルが含まれている。この数年の間に、接続層にはかなりの進歩があった。HTTP 1.1のkeep-alive機能で、ほとんどのページのロード時間は半分になった。クレジットカードやその他の極秘情報を安全に送信できるようになり、オンラインでの安心感が増した。かなりがっかりするのは、いまだにマイクロペイメントが欠けていることで、これがウェブサービス向上にとって最大の障害になっている。
  2. ナビゲーション層では、ユーザのウェブ閲覧履歴を記録し、彼らが今日行きたいと思うところへ行けるよう手助けをする。この層は、これまでほとんど無視されてきた。この層が、当コラムのトピックである。
  3. プレゼンテーション層は、ナビゲーション層から受け取ったページを画面上に表示して、ユーザの目を楽しませる。ウェブブラウザのアップグレードは、ほとんどがこの層に集中していた。目障りなもの(アニメーションGIF)から有用なもの(スタイルシート)まで、装飾的なレイアウトのためのオプションが数多く導入された。

1995年7月のAlertboxで、私はウェブブラウザに追加すべきナビゲーション機能をいくつか提案した。

  • ブックマーク管理の改善。ブックマークの管理は、実際、少しましになってきた。ブックマークをベタのリストするのではなくカテゴリー分けできるようになったし、ブックマークしたページのうちで最後に訪問して以降に更新がされたものはどれか、ひと目でわかるようにもなった。それでも、いまだにブックマークは信じられないくらい使いにくいし、相当数のサイトを訪問するユーザに対しては、十分なサポートを提供できていない。
  • リンクの品質評価に、他のユーザの行動を取り入れるための様々な仕組み。いまだにまったく存在しない。現在のブラウザでは、あらゆるリンクが対等に扱われている。
  • ユーザのナビゲーション履歴を俯瞰する図解。確かに、今なら履歴リストをソートできるので、特定のサイト内で閲覧済みのページは全部まとめて表示されるようになった。だが、まだ視覚化が抜けている。ユーザの動きと足跡を示した動的なサイトマップがあれば非常に役立つだろう。注目しているところだけがさらに詳細に表示され、それ以外の場所は縮小されるとか、他のサイトとのつながりを表示して、さらに先方のサイト内の関連セクションをプレビューできるなどの機能もあれば便利だろう。
  • 1995年以前に創案されていたのに、1995年時点でウェブブラウザに取り入れられなかった15のナビゲーション機能リスト。今なお実現されていない。

確かにいくぶんかの改善は見られた。例えば、Backボタンにポップダウン式の履歴リスト表示がついたり、Backボタンを押したらどこに行くのかを表示するよう改善されたツールチップなどである(もともとのツールチップには「Backで元に戻ります」というようなことが書いてあった。これほど無益なオンラインヘルプはないだろう)。チャンネルも、恐らく新しいナビゲーション機能のひとつに数えるべきだろう。これは、1ページ単位ではなくもっと大きな範囲をユーザがモニターするための、動的かつ重量級のブックマークと見ることができる。

構造サポートの欠如

ブラウザナビゲーションの問題のほとんどは、その原因をひとつの現象に集約できる。ブラウザは、いまだに個々のページを基本単位としてナビゲーションを考えているのである。複数ページを構造として扱うためのサポートはまったくない。閲覧したページ間の関係を表示しないと、ユーザが迷子になる可能性はかなり高い。

少なくとも、サイトレベル、サブサイトレベルでの構造くらいはサポートしておくべきだ。例えば、各サイトには名前(代表的なのは企業名)をつけるべきであり、サイト内でのリンクには、これをツールチップとして提示できるだろう。また、履歴リストやブックマーク、検索などでは、サイト内の同一地域のページ(すなわち、サブサイト)を、ひとつの単位として扱うべきである。

検索結果をスライドするブラウザペインに表示することで、検索と閲覧の一体感を少し高めることができるだろうが、さらに緊密な統合が求められている。例えば、そのページの中のリンクが検索結果一覧にも含まれていた場合、そのリンクは目立つようにしておくべきだ。ユーザの現在の関心事項に関連したものであることを示すのである。別の例を挙げよう。検索結果一覧に過去にそのユーザが訪れたことのあるサイトが含まれていた場合、これを目立つようにしておくべきだ。ユーザがこれらのリンクを気に入る公算が高いからだ。後者のアイデアを拡大して、各サイトでのユーザの滞在時間にしたがって、目立つ度合いを変えておくということも考えられよう(しょっちゅう利用するサイトは、たまにしか利用しないサイトより目立つように表示する)。

一般的にいって、ページナビゲーションは、第三者のサーバから入手した付加価値サービスと統合しておかなくてはならない。現在の例でいうと、(不恰好なアドオンであって、ブラウザと本当に統合されているわけではないが)Alexaのwhere-to-go-nextサービスがそれにあたる。今ユーザが読んでいるものに似た別のページを推薦してくれるのだ。もっといい例は評価管理であろう。各ハイパーリンクに注釈をつけ、そのユーザと似た性向を持つ他のユーザが判断したリンク先の品質を表示するのだ。

ナビゲーション向上の手法

ブラウザのナビゲーションサポートがお粗末なので、コンテンツデザイナーは余計な仕事を抱えることになった。ウェブサイトに、広範囲なナビゲーションサポートを組み込む必要がでてきたのだ。こうして、ユーザがソフトウェアの限界を乗り越える手助けをしているわけだ。ここに挙げたのは、今日にでも実行可能な事項である。

  • 全ページにサイト識別子を入れて、ウェブ全体の中での、ユーザの位置を知らせる。通常、これは画面左上隅(右から左に読む言語では右上)の企業ロゴという形を取ることが多い。
  • 簡単にランドマークページへ移動できるようにしておく。すべてのページにホームページ(通常はロゴをリンクにしておく)、および検索ページへのリンクを設けるべきだ。
  • 情報アーキテクチャの構造を強調する。全ページに、そのページが属するサブサイト(あるいはその他の構造要素)を表示し、構造的に少なくとも1レベル上にある概観ページ、あるいはメインページへのリンクを入れておく。この種のリンクは、「1レベル上がる」といった一般的な名前にしてはいけない。指示先のレベル名を明確に表示すべきだ。
  • デフォルトのリンク色を変えてはならない。未訪問ページへのリンクは青系統、訪問済みページへのリンクは紫系統にするべきだ。デフォルト色と同系統にしておけば、サイト内のどのページが閲覧済みか、ユーザにも理解できるようになる。サイトのメンタルモデルを形成する上で、これは有益だ。サイトの構造を、各自のナビゲーション履歴と結びつけることができるからだ。
  • サイトマップを作成し、情報構造のうちでもっとも重要なレベル、およびサイト各部の関係を図示しておく。

1997年11月1日