2003年までは古いブラウザを見捨てるな

あいかわらずウェブユーザは保守的だ。このため、以下の結論が導き出される。

  • 2001年初めまでは、バージョン3のブラウザを使っているユーザに対するサポートを継続すべきだ
  • バージョン4も、2003年まではサポートを続ける必要があるだろう
  • Netscape5は、Netscape4ほどのユーザを獲得できないだろう
  • 最先端のブラウザが一般に普及するのは、2003年以降の話になるだろう。それまでは、サイトをベーシックなものにとどめるべきだ

1998年3月のAlertboxで、私は、ウェブユーザが新しい技術の導入に熱心でないということを書いた。Netscape 3からNetscape 4へのアップグレードにかかるスピードは、それ以前のブラウザのリリース時に比べて、半分のスピードでしかないことに気づいたのである。

Netscape各バージョンの利用状況についての現在のデータは、StatMarketから得られたものだが、1年以上前に出した私の評価と驚くほど一致している。新しいデータを、古いトレンド曲線といっしょにチャート上にプロットしてみると(下図参照)、結果として得られるのはまったくの直線である。自分が正しかったと証明されること自体は気にならないが、これほどまでにズバリと的中すると薄気味悪い。

Chart showing how many users have different versions of Netscape
1995年から2002年1月までのNetscape各バージョンの利用状況。
太線は実測値、細線は予想値。
出典:Interse (1995-1997), AdKnowledge (1998), StatMarket (1999)

この図には、同時に、今後数年間のアップグレード曲線も予想して書き込んである。この中には、2000年末にNetscape 6.0が出るという仮説も含まれている。将来のアップグレード曲線も、最近観察された傾向と同じ道をたどることになるだろうと予想している。ただし、さらにスピードが鈍る可能性もありうる。結局、オンラインに参入してくる主流派ユーザの数が増えるほど、最新のソフトウェアをインストールすることに命をかけているような人の割合は減少する。

この予想で特に興味をひかれるのは、Netscape 5は「失われた世代」であるということだ。このチャート上では、バージョン4を上回ることは一度もない。事実、MosaicやNetscapeバージョン1~3のように、単一のブラウザバージョンがウェブを独占するというようなことは、二度と起こらないだろう。Netscape 4でさえ、本当にこの図のとおりに、市場を占有しているわけではない。

Internet Explorerのアップグレード曲線についてはデータが少ないのだが、新しいバージョンを普及させるということにかけては、Microsoftの方がわずかながら上手のようだ。恐らく、ブラウザをオペレーティングシステムといっしょに出荷しているせいだろう。IEの方が、アップグレードのスピードでNetscapeをわずかに上回るとはいえ、結論には変わりない。IE 5がウェブを支配することもないはずだ。かわりに1999年から2000年にかけて、ウェブにアクセスするための新しいデバイスが急増するだろう。WebTVや携帯電話、それに新種の情報家電といったものがそれだ。

基本を押さえたウェブデザイン

Microsoftは、Internet Explorer 5.0でいくつかの標準に準拠しなかった点を批判されているが、確かにもっともな話である。2年も前の仕様を、Microsoftがいまだに正しく実装できないなんて、実に驚きだ。だが、公正のために言っておくと、それでもなおIE 5はベストのブラウザであり、ウェブ標準の基本(HTML 4とCSS 1)を、ほとんどすべてサポートしている。

究極的には、IE 5の弱点は、たいした問題にはならない。なぜなら、ウェブサイトが先進的な機能を実地に使えるようになるのは、まだ数年先の話だからだ。2003年になって、バージョン6、あるいはそれ以上が普通になったとき、新しいデザインが可能になる。だが、今後4年間は、コンテンツ、情報アーキテクチャ、ナビゲーション、検索機能の向上に力を入れた方がよい。これらはいずれもブラウザとは関係のない問題だ。

普及速度の遅さ、先進的なブラウザ機能のバグや不具合といった一連の問題は、明かりの見えてきた雲のようなものだ。しばらくは古い技術から逃れられないと認識することで、技術的な問題にばかり頭を使うのをやめ、コンテンツや顧客サービス、それにユーザビリティに目を向けるようになるだろう。基本に立ち帰ろう。それが一番商売になる。なぜなら、それこそがユーザの望むものだからだ。

1999年4月18日