eコマース検索の現状

eコマースの検索ツールは、過去に比べて、見つけやすく、関連度の高い結果が返ってくるようになった。そして、検索空間でのユーザーの道案内にはオートサジェストやファセットが利用されている。

ECサイトの成功にはシンプルで使いやすい検索ツールが不可欠だ。ユーザーは商品を見つけることができなければ、買うことは不可能だからだ。また、サイト内検索の出来が悪いと、ユーザーがイライラして、あなた方のサイトを見捨て、競合サイトに行ってしまうこともあるだろう。

最近、我々はさまざまな種類のECサイトについて大規模な調査を実施し、オンラインの購買体験を有意義なものにするのに役立つ要因について考察をおこなった。サイト内検索は、その調査で特に重視した分野だが、eコマース検索の状況は2000年と2011年に実施した過去の詳細調査から劇的に変化したことが明らかになった。

調査

我々はこれまで3回調査を実施しており、その各回の調査で検索を含む、ECサイトのいろいろな要素についての検証をおこなっている。こうした調査では、デスクトップサイトとモバイルサイトでの、対面のユーザビリティテストからリモート形式のユーザビリティテスト、アイトラッキング調査、日記調査まで、さまざまな手法を利用している。

検索成功率の向上

我々が3回の調査を実施した17年間で、検索成功率は着実に向上した。

検索成功率(Search success)とは、ユーザーの検索がうまくいって、適切な結果を見ることができたかどうかをいう。検索成功率はタスク成功率とは別ものであるし、その検索をとおして見つけた商品の購入を参加者が決めたということでもない。検索成功率は、ユーザーがタスクを完了するのに検索が妨げにならなかったということを示すもの、つまり、検索が検索としての役割を果たしているかどうかを測定する手段であると考えればよい。

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(絞り込み検索や複数回の検索問い合わせを含む)検索全体の成功率(=Overall success)と、参加者が初めて検索をかけたときに正確な結果が返ってきた検索の割合(=Success in 1st try)のどちらをみても、検索の成功率はこの17年間で着実に向上している。この分析は3回の調査の参加者が実行した500回以上の検索問い合わせを元にしている。

2000年の第1回調査と2011年の第2回調査の間で、検索全体の成功率は10%向上した。第2回調査と2017年の第3回調査では、18%向上している。そして、まったく初めての検索でうまくいった、つまり、参加者が検索キーワードを修正する必要がなかった割合に関しても同様の改善結果が示されている。1標本の比率の検定によると、2017年の検索の全体成功率(92%)は、2000年の全体成功率(64%)と2011年の全体成功率(74%)に対して統計的に有意(p < 0.05)な差がある。

検索成功率が向上していることは励みになるが、これにはさまざまな要因があるように思われる。こうした改善の影響因子となったものの中には、検索には直接関連のないものもある。たとえば、デバイスや画面、ハードウェア、接続スピードの進歩は、オンラインエクスペリエンス全体の改善に役立っているだろう。しかしながら、eコマース検索における好ましいトレンドの一部が、検索成功率の改善に影響を与えているのは間違いない。我々のeコマース検索に関するフルレポート(第4版)で、こうした内容はすべて詳しく説明されているが、この記事では以下の5つのトレンドを取り上げることにする:

  • サイト内検索とランキングアルゴリズムの改善
  • 検索ボックスの表示の(ある程度の)標準化
  • 過度に複雑なアドバンストサーチやスコープ検索の人気の低下
  • ファセット検索の普及
  • 検索サジェストの流行

検索とランキングアルゴリズムの改善

6年後に再テストしたほぼすべてのサイトで、検索エンジンとランキングアルゴリズムの品質が劇的に改善していた。おそらくこの点が検索成功率に最も寄与したように思われる。

以前、我々は経験豊富なユーザーの要望に応えるために、アドバンストサーチの演算子のショートハンドをサポートすることを推奨していた。こうしたショートハンドがサポートされていれば、「Seagate ANDハードドライブ」のような検索キーワードによって、「Seagate」と「ハードドライブ」の両方に一致する結果が返されるからである。

しかし、我々はもう複合検索の演算子のサポートを推奨していない。なぜならば、最近ではそうした演算子について知っていたり、使ったりするユーザーがほとんどいないからだ。その上、ユーザーがそういうことについて知る「必要もない」。というのも、ユーザーに不自然な言語の使用を強制せずとも適切な結果が返せるくらいに検索エンジンが賢くなればいいだけの話だからである。おそらくここでの唯一の例外は、個々のキーワードではなく、語句全体を検索エンジンに検索させるための、引用符の使用だろう。この検索演算子はGoogleで使用されているし、Webの上級者にも広く知られている。

検索アルゴリズムの改善を示す例の1つに、The Container StoreのWebサイトがある。前回の調査では、参加者はこのサイトの検索結果の精度が低いことに失望していた。あるユーザーは透明の蓋がついたステンレススチールの容器のセットを買おうとしていたが、「スチールとガラスの容器」で検索しても、ケース付きのトイレブラシのような結果しか出てこないのでイライラしていた。彼女は何度も検索結果の修正を試みたが、うまくいかなかった。

以前のThe Container Storeの検索機能の問題は、キーワードのどれか(「スチール」か「ガラス」か「容器」)に一致したアイテムをすべて返してしまい、すべてのキーワードに一致したアイテムがページトップに優先表示されないことだった。しかし、前回のテストの後、The Container Storeは検索を改善して、キーワードのすべてかほとんどが一致するような商品が必ず最初に表示されるようにした。

検索やランキング機能における次のステップは、単にレビューの平均点で商品を並べ替えるのではなく、重み付けしたレビュースコアによる商品の並べ替えが普及することだろう。

ユーザーが検索結果を「カスタマーレビュー」で並べ替えるとき、彼らが見たいのはたった1人が5つ星をつけた商品ではない。また、ユーザーは偽のレビューを非常に警戒しており、ほんの数人のレビュアーからなる平均レビュースコアには懐疑的である。しかし、サイトが重み付けしたレビューによる並べ替えをおこなえば、平均が4.9点でも342個のレビューがある商品のほうが、3人しかレビュアーがいない平均5点の商品よりもランクは上になる。

検索ボックスの表示の標準化

ほとんどのサイトは、検索ボックスや検索結果の表示方法の外部の一般基準にうまく適合している。しかし、明らかな例外も一部見受けられた。

最近では、検索ボックスはほぼ一様にWebサイトのグローバルナビゲーションの隣に置かれている。そうなったことで、我々がテストで見つけた過去の課題の多く、たとえば、検索結果ページで毎回検索ボックスを出さなければならないこと、ナビゲーションメニューの干渉を受けること、一部のページで検索ボックスが表示されないことなどが解決された。また、検索ボックスの配置の外部整合性がサイト間で保たれていることで、検索をどこで探せばいいのかをユーザーも学習しやすい。

その結果、「検索」という明示的なラベルはもはや必要なくなった(あっても害はないが)。ユーザーが探すのは、幅広の空の入力欄か虫眼鏡アイコンだからだ。モバイルでは、虫眼鏡アイコンだけを使っているサイトが多いが、それで問題なく機能する。検索ボックス全体を表示しているサイトもあるが、売り上げが検索に左右されるとわかっていれば、貴重な画面スペースとのトレードオフで、検索ボックスを表示するのは無駄ではない。そして、デスクトップサイトでも、「検索」ボタンまたは虫眼鏡アイコンのついた、シンプルで目につく空の入力欄を利用するべきである。(しかし、残念ながら、いまだに検索を発見しにくくする意味のないやり方、たとえば、検索ボックス全体を見せるための空間が十分あるデスクトップでもごく小さな虫眼鏡アイコンを使うなどして、このパターンを守れていないサイトは多い)。

アドバンストサーチやスコープ検索の減少

かつて、eコマースでは、ユーザーが複雑な商品群にうまく対応できるように、アドバンストサーチとスコープ検索が多用されていた。しかし、こうした検索方法が採用されることは大幅に減ってきている。それにはもっともな理由がある。つまり、ユーザーはアドバンストサーチを利用しないし、スコープ検索では立ち往生して混乱してしまうことが多いからである。

今では、こうした複雑な検索機能は本当に意味があるようなサイトでしか表示されなくなった。たとえば、アドバンストサーチは、今でも、Ebay.comやDeltaのような航空会社など、特殊な検索ニーズのあるサイトでは利用されているし、スコープ検索は、膨大な商品群を抱えるAmazonやWal-Martのようなサイトでは引き続き提供されている。

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スコープ検索はWal-Martにとっては意味がある。極めて広範で、多種多様な商品カテゴリーを抱えているからだ。

アドバンストサーチやスコープ検索はファセット検索に置き換えられてしまっていることが多い。前者とファセット検索との決定的な違いは、ファセット検索なら検索キーワードの送信前でなく送信後に、ユーザーが選択肢を絞り込めることである。

ファセット検索

1回目の調査で失敗したタスクの27%が、サイトで適切なアイテムを見つけられなかったことによるものだった。調査のタスクはどれも設計されたものなので、常に最低1個は在庫があるようになっていたにもかかわらずだ。選択肢が非常に多くあるのにそれを絞り込む方法がないと、ユーザーは自分のニーズに最も合う商品を見逃しやすい。

ファセット検索があれば、ユーザーは検討している商品の属性を元にした検索フィルターを使って、検索結果を絞り込むことができる。ファセット検索は以前はECサイトに「あると便利」な機能だった。しかし、今では、まれにファセット検索がない場合には、それに気づいたユーザーに不満を言われるようになった。最近では、ファセット検索のないECサイトのほうがむしろ例外的である。

検索サジェスト

ファセット検索が、例外ではなく、あるのが当たり前になってきたのと同じように、検索サジェストもそうなってきている。検索サジェスト(オートサジェストともいう)とは、ユーザーが検索ボックスにキーワードを入力していくと、推奨される検索キーワードがドロップダウンで出てくるというものだ。そうしたサジェストに応じることで、ユーザーは時間と精神的な努力を節約できるので、入力ミスなどのエラーをしにくくなる。

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Dick’s Sporting Goodsでは、検索キーワードのサジェスト機能が用いられている。

しかしながら、テストでわかったのは、多くのECサイトで検索サジェストが提供されているにもかかわらず、そうしたサジェストはユーザーからはあまり選択されていないということだ。3回目の調査で、そうしたサジェストが提供されている際に検索サジェストを選択したユーザーは23%にすぎなかった。

多くの場合、ユーザーは単に入力を続けて、自分の打ち込んだキーワードを送信している。しかし、検索サジェストは利用されない場合でも、サイトでどんな商品が提供されているのか、また、他の人は何を検索しているのかということをユーザーに伝えてくれるメリットがある。

さらに、リッチな検索サジェスト(キーワードのサジェスト以外にも、お勧めの商品やサムネイルなどのコンテンツを含んだ検索サジェストのこと)が一部のECサイトで人気を集めていることもわかった。

リッチな検索サジェストは5年以上も前に少しの間だけ流行ったトレンドだが、徐々に一般には使われなくなってしまった。しかし、大型のメガメニューに似た形を取り、最近、カムバックを果たしたように思われる。

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旧バージョンのUrban OutfittersのWebサイトでは、リッチな検索サジェストを使って、お勧め商品のサムネイルを表示していた。このやり方のマイナス面は、サジェストされるのは商品だけなので、商品以外の検索キーワードには対応できないことである。

テストによると、リッチな検索サジェストは、商品カテゴリーが多様だったり、商品同士の見た目がお互いにかなり異なるサイトで最もうまくいくようだった。

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Home DepotのWebサイトで燻製器を検索したユーザーは、従来の検索サジェストだけでなく、商品のサムネイルや名前、レーティングも見ることができることを高く評価していた。

検索が良くなるほど基準は上がる

ユーザーエクスペリエンス全体の改善というのはもろ刃の剣といえる。ユーザーが有意義な経験をする頻度が増えれば、彼らの期待も高まるからだ。そして、この業界が進歩すれば、皆が考える基準も上がるだろう。たとえば、実用的な検索機能を誰もが提供できるようになれば、ただ実用的だというだけで競争相手より優位に立つことは難しい。

ユーザーがうまく使える検索機能がある、というだけでは十分ではないということだ。シームレスでスムーズなエクスペリエンスを提供して、思いのままに選択肢を見つけることができているとユーザーに感じさせなければならないのである。

検索の重要な課題

シームレスなサイト内検索という目標に向けて、たくさんの共通する課題を我々は特定した。今後、eコマース検索の最大の課題となりうるのは以下のような点だろう:

  • 検索ボックスがわかりにくい(たとえば、大型のデスクトップ画面でごく小さな虫眼鏡アイコンの裏に置かれている、モバイルでハンバーガーメニューの下に隠れているなど)。
  • 入力ミスやエラー、キーワードでの一般的な同義語へのサポートが不足している。
  • 検索結果の表示(ページネーションや並べ替え、絞り込みの仕方)が標準的でない。
  • 検索フィルターが適切に機能しない(的はずれの属性、不十分な機能性、検索結果なし)。

この調査やすぐれたeコマース検索の作成のためのヒントについて、さらに詳しくは、根拠のある、検索のためのUXデザインガイドライン80個の入ったフルレポート(新版の『Ecommerce User Experience』(eコマースのユーザーエクスペリエンス)シリーズの中のレポートの1つ)を参照してほしい。