リクエストマーケティング

ウェブでは従来のマーケティングの向きを逆にしなくてはならない。企業が顧客に何かを知らせたいことがある時にメッセージが生まれるのではない。リクエストマーケティングでは、企業は、ユーザの望むメッセージだけを送るのだ。リクエストマーケティングは特にモバイルインターネットに向いている。そこでは、でしゃばりなメッセージは怒りを買うことになるからだ。

その昔、パーミッションマーケティングは有効なパラダイムだったが、もはや役不足だ。「お買い得情報のお知らせ」というチェックボックスを見ただけで、ユーザは身構えるようになった。オプトインした場合でさえ、たくさんのEメールにすぐ飽きがきて、無視するようになる。

なお悪いことに、間近に迫ったモバイルインターネットの台頭とともにユーザの邪魔をするようなものはすべて滅びるだろう。ユーザと、彼らのオンラインでの目標との間に割って入るものも同様だ。画面が小さく、ダウンロードはキロバイト単位で課金されているとなれば、「お買い得情報のお知らせ」など欲しいとは思わない。誰かが宣伝を送ってくるたびにモバイル機器の呼び出し音が鳴るなんてごめんだ。

Seth GodinのPermission Marketing [訳注:邦訳「パーミッションマーケティング」阪本啓一訳/翔泳社刊 ISBN: 4-88135-805-7] は、大きな評価に値する。道徳的なウェブサイトにとって、オプトインを定評あるマーケティング戦略として確立した記念碑的著作だ。

しかしながら、パーミッションマーケティングではまだ不十分だ。それは、マーケティングとは企業から消費者メッセージ伝達だという前提にもとづいている。この一方向的なメタファーは、悪名高き略語B2Cにも共通している。道徳的企業は、送信してもらいたいと希望した人にだけ、何かを送信する。これ自体はすばらしい。だが、会話はあいかわらず一方通行だ。

ウェブでのパーミッションマーケティングは、正反対のしくみになる。パーミッションマーケティングでは企業からユーザへ、という流れであったが、ウェブでは、ユーザからウェブサイトという性質を持っている。究極の顧客主導型メディアなのだ。マウスでクリックしている彼、または彼女がすべてを支配している。そろそろこの事実に気づくべき時だ。そして、これを、インターネットマーケティング戦略に組み込むのだ。

リクエストマーケティングとは、基本的に、企業にしてほしいことを顧客が頼むということを意味している。それ以上、ターゲットを絞ることはできない。それ以上、強力に誘導することはできない。そして、ユーザビリティの観点から言うと、リクエストマーケティングは、結果的にウェブの基本法則と調和したデザインに行き着くものであって、決してこれに反することはない。

実例:ワンタイムのお知らせEメール

ウェブの他の多くの分野と同じように、Amazon.comはリクエストマーケティングのパイオニアだ。サイト全体でもベストの機能といえるのが、顧客の要望次第で、お気に入りの作家の新作が出たら、Eメールで知らせてもらえるというものだ。私はこの機能を1997年から利用し始めたが、いまだにそのとき登録した作家に関するメッセージが時折届けられる。好きな作家の新作が出たら、私がそれを買う確率はかなり高い。さらに重要なのは、近日発売のお知らせが、顧客サービスを感じさせることだ。スパムでもなく、広告でもなく、パーミッションマーケティング流のニュースレターとすら感じられない。純粋に助けになるサービスだ。これこそ私の求めるものだ。

Amazonはいい。彼らはこの機能を拡張して、たくさんのDVDを売るためにも活用している。Amazonは今、劇場公開中の映画リストを作っていて、そこにユーザがサインアップするようになっている。2、3年後、選択した映画のDVDが出たら、Eメールで知らせてもらえるのだ

私自身も、この機能の縮小版を提供している。同僚と私は、現在ロンドンでWAPのユーザビリティおよびコンテンツのフィールド調査を行っている。この調査はかなりの注目を集めている。カンファレンスの講演で、私が初期の調査結果について触れたからだ。しかし、現在も最終的なデータを収集中で、まだ最終レポートはできていない。ところで、私はAmazonのさえたアイデアを無視できるほどは、プライドが高くない。WAPプロジェクトページには今、ユーザ向けのサインアップセクションを設けてあって、最終レポートが出版され次第、Eメールを受け取れるようにしてある。
AmazonがDVDの話をするであっても、私がWAPレポートの話をするのであっても、収集したEメールアドレスは、その特定のお知らせを1度だけ行うためにのみ利用すべきである。大きなマーケティング機会を逃すように思うかもしれないが、リクエストした範囲を逸脱してしまうと、かえってあなたの目的を妨げ、信用を失うことになる。フォローアップのメッセージがいかにうまくできていても、ユーザがリクエストしない限り送ってはならない。

ユーザにニュースレター(あるいはコラム、それも、今まさにあなたが読んでいるような種類の)を出すのはいいが、リクエストマーケティングとは別に提供すべきである。リクエストによるサービスでは、ユーザからはっきりと要求されたもの以外は送ってはならない。

残念ながら、Eメールベースのリクエストマーケティングに関する限り、現在のメーリングリストサービスのサポートはおそまつだ。この手のサービスでは、メーリングリストを一大事だと考えていて、よもや使い捨ての一時的なサービスとは思っていない。メーリングリストを開設し、管理するには相当のオーバーヘッドを覚悟しなくてはならないが、Alertboxのお知らせのような場合なら許容できる。このコラムには膨大な加入者がいて、しかも新規加入者は後を絶たない。さらに加入者は、長期にわたっての配信継続を望んでいるのだ。数100人に向けてワンタイムのメールを送信するために、これと同じオーバーヘッドを覚悟するというのは馬鹿げている。

一時的なメーリングリストのためのソリューションとして私がもっとも優れていると思うのは、Listbotだ。年間たったの99ドルで、開設できるメーリングリストの数は無制限。新しいリストを作るのも、Listbotなら簡単だ。1回きりの利用の後、消去するのも非常に楽にできる。ただ残念ながら、ユーザにとっては、サインアップが不愉快なほど難しい。Listbotでは、大規模なディスカッショングループ向けのパスワード、その他の機能がフル装備されているのだが、たんにワンタイムメーリングに加入したいだけの人にとっては意味がない。

リクエストマーケティングのタイプ

リクエストマーケティングは必ずしもEメールでやる必要はない。とはいえ、ユーザにコンタクトをとる手段としては、これがもっとも優れたテクノロジーなのだ。だた、Eメールは最終的には失敗する宿命にある。あふれかえる受信箱で、みんなが溺れてしまうからだ。

情報をリクエストしても、そのすべてを受信箱で受け取らなくてもいいように、新しい仕組みを開発しなくてはならない。ここでいくつかのアプローチを挙げよう。今ある技術でも実現可能なものがほとんどだ。

  • ウェブサイトのホームページに、専用の入り口を設ける。そのユーザが常連客なら、イベントがある時には、ホームページに告知を表示するようにすればよい。例えば、バックオーダーになった商品をユーザがリクエストした場合、ホームページ上に小さなセクションを設けて注文の状況を表示し、ユーザへの出荷が可能になったら知らせるようにしておく。
  • 他のサイトで情報を表示する。サードパーティのウェブサイトにユーザのリクエストを追跡させ、各ユーザごとにカスタマイズされたページで関連情報を一覧にしておくことができる。
  • 情報コントロールパネルを開発する。情報コントロールパネルとは、インターネット上の各エリアで起こっている出来事をモニターするアプリケーションである。例えば、ターゲットとなるニュースグループで、特定のトピックについての議論が盛り上がった時に知らせてくれるように、ユーザがリクエストできる。また、特定のインターネットサービスに対して、コントロールパネルへのアクセス権を与えることで、リクエストマーケティングの最新情報を受け取ることもできる。コントロールパネルにある程度の判断能力があれば、ユーザの関心度を推定して、こういった最新情報に優先順位をつけることもできるだろう。
  • Eメールを利用せよ。非常に邪魔なものではあるが、Eメールはいくつかの目的には有効だ。また、コントロールパネルの登場を待つ間、何らかの「プッシュ」の仕組み、すなわちユーザがどこかに行かなくてもすむ仕組みが必要だ。
  • モバイル通知を利用せよ(ただし控え目に)。ユーザに、今すぐどうしても必要な情報がある場合、あなたは、ページャ、あるいはその他のタイプのモバイルインターネット機器を利用してこれを通知できる。あらゆるもののなかで、もっとも割り込み度の高い仕組みだから、これを利用するのは、ユーザからの指示を受けた場合に限定すること。

2000年10月15日

公開:2000年10月15日(原文:2000年10月15日)
著者:Jakob Nielsen
原文:Request Marketing