Webサイトにおける自社情報提供

企業の沿革から経営陣の履歴、くわしいコンタクト情報まで、幅広い背景情報を調査協力者に検索してもらった。成功率は 70%。「About Us」のデザインには、まだまだユーザビリティ上の改善の余地があるようだ。

インターネット上で企業や組織の顔となること。それは、ウェブサイトの重要な役割のひとつだ。企業の目的や理念を説明することは、最終的にはそのサイトの他の目的にも役立つことだ。残念ながら、ほとんどのウェブサイトでは、この説明がうまくできていない。

サイト内に About Us セクションを設けるのは、かなり一般的だ。実際、私もホームページ上に、はっきりと About <企業名> もしくは About Us という名のリンクを設けておくように勧めている。このリンクはホームページの目立つところにある必要はないが、見やすいところに配置しておくべきだ。私たちの調査では、リンクが非標準的な名前、たとえば Info Center といったものになっていると、企業情報を見つられないユーザが出てくることがわかった。広告のように見えるグラフィック要素の近くに配置するのもよくない。無視されてしまうからだ。

ユーザ調査

ユーザは、ウェブサイト上で、どのようにして企業に関する情報を見つけ、解釈するのか?この疑問にこたえるために、私たちは、5 つの大きなカテゴリーから、15 の組織が運営するサイトを選んで、ユーザビリティ調査を行なった。

  • 企業(Allstate、Lexmark、Bristol-Myers Squibb、Sempra Energy)
  • 企業(Constellation Brands、Titan、Pier 1 Imports)
  • 企業(GiftTree、OneCall、Team Industrial Services)
  • 政府機関(the Department of Housing and Urban Development、the Department of the Interior、the Small Business Administration)
  • 非営利団体(National Multiple Sclerosis Society、the United Nations Children’sFund)

各サイトで、私たちはユーザにオープンエンドなタスクをひとつ与えた。それは、その組織を評価せよ、というものだ。また、目的指向のタスクもいくつか与えた。たとえば、その組織を運営しているのは誰か、とか、その組織の創立日といったものである。

被験者のほとんどは主流派のウェブユーザであり、最低でもネットを 2 年以上体験している人たちだ。この調査では意図的に 10 代のユーザも数人混ぜてある。企業情報をウェブに掲載する目的の中には、学生たちのプロジェクト、長期的なロイアリティの醸成、あるいはインターンの募集などが含まれることが多いからである。

成功率: まあまあ

目的指向のタスクの平均でみると、要求された情報を見つけることができたのは、全体の 70%。この成功率はかなり高い。私たちの行ったウェブユーザビリティ調査では、成功率は 55%から 65%の間になることがほとんどだったからだ。

見方を変えれば、企業の基本情報を調査するというタスクは、ウェブ上でのそれ以外のユーザ行動に比べて、簡単なタスクといえる。今回のタスクには、取引や、フォーム入力や、複雑な検索や、複雑なナビゲーションは出てこなかった。タスクが簡単なのだから、成功率がかなり高いからといって、ユーザビリティが特に優れているとはいえない。まずまずといったところだ。

ユーザは特に、以下のようなもっとも基本的な企業情報を見つけるのに苦労していた。

  • 組織のトップの役員、あるいは代表者:成功率 59%
  • 正確なコンタクト情報:成功率 62%
  • 組織の理念:成功率 59%
  • 沿革、主な出来事:成功率 58%

コンタクト情報の成績が悪いのは、ふたつの意味で嘆かわしい。第一に、それがニーズの高い情報だからである。これがすぐに入手できないとなれば、ユーザをイライラさせてしまうだろう。第二に、これが、その企業の信用を計る目印のひとつになっているからだ。インチキ会社なのか、それとも、正々堂々と公開できる本物の住所と電話番号をもった企業なのか?

業務内容

中でももっとも基本的な問題、すなわちその企業の業務内容を調べる件に関しては、ユーザはかなり高い成功率を収めた。このタスクの成功率は 90%。だが、結果がよかったからといって、ウェブデザインの正当性が証明されたわけではない。

ユーザは、ウェブサイトをうろうろしたあげく、最終的に企業の目的を発見できた。とはいえ、ほとんどのサイトは、ホームページや About Us セクションの最初に、はっきりと見やすい説明を掲載していなかった。

別のプロジェクトで企業ホームページのユーザビリティを評価したが、「ホームページ上に、はっきりと企業の目的を要約して掲載すること」というユーザビリティガイドラインに準拠していたサイトは、平均で 36%しかなかった。タグラインも、中身のないたわごとにすぎないことがわかった。この部分については、たった 27%の成績しか収められていない。本来なら、顧客の立場からみた価値の提案を行い、直接の競合他社との違いがどこにあるのかを、はっきり書かなければならないところだ。

ホームページの内容を簡潔に説明しておくことは、ユーザビリティ面で重要なことだ。それはユーザに文脈を与えるからである。これによって、サイト内のあらゆる情報の解釈がしやすくなる。同様に、About Us ページのトップに少し長めの記述を掲載しておけば、ユーザは、そのセクションの情報をより深く理解できるようになるだろう。

外部の人たちへの補助

組織の外部にいる人こそ、そこが何をやっているかを知る手助けを必要としている人たちだ。なのに、組織の目的の記述は、主として内部の人間にしかわからないような書き方になっていることが多い。

政府機関は、しばしばこの最悪の違反者となる。この調査では、数多くのユーザが、テスト対象となった政府サイトの大げさなお役所言葉や、訳のわからない短縮語に困惑していた。組織の長を探してほしい、といわれて、数多くの連邦政府機関で昔から用いられている役職名に困惑するユーザが何人かいた。組織図やリストを見て、ユーザはこう語った。「秘書(secretary)なんかどうだっていいんだ」。彼らが見つけたいと思っていたのは、「チーフ(chief)」なんとかといったような、もっと重役っぽい響きの役職名だったのである。

部門長として内務長官(Secretary of the Interior)のような大物を見落とすなんて、Washington, D.C. の誰ひとりとして想像だにしないのだろう。これこそ、組織がユーザビリティ調査を行うべき理由だ。自分の領域外の人たちが何を知っているかを調べるのである。たいてい、その結果は自分たちが思ったほどではない。ウェブサイトは、多数派のユーザに役立つように書くべきだ。すでにあらゆることを知っているユーザなら、そもそも About Us セクションに来るはずがない。

取引サイトとオンラインサービス

多くのウェブサイトは、単に企業の窓口となるだけでなく、独立したサービスの提供を目的としている。e コマースサイトは特にこれに該当する。売ることに意義があるのだ。そのサイトで企業について調べようと思う人もいるということは、二の次になることが多い。

だが、この種のサイトには強力な About Us セクションを備えておくべきだ。なぜなら、そのウェブサービスの裏側にいるのが誰なのか気にするユーザがたくさんいるからだ。創立の経緯は?信用はできそうか? e コマースサイトで注文したものが、本当に送られてくると信じられるだろうか?ひどい状態で到着したら、返品に応じてくれるだろうか?サイトに登録したら、その個人情報が金のあるところに転売されたりしないだろうか?そうなれば、その取引に関係ある商品から不快なポルノまで、ありとあらゆるスパムに果てしなく襲われることになるかもしれない。

信用と信頼は、ウェブの重要問題だ。ウェブでは、最大手の企業でさえ、ブラウザウィンドウの中のわずかな言葉と画像だけで勝負するしかない。もっともたちの悪い非倫理的な企業でも、コミュニティの一員として長年の歴史を持ち、顧客と誠実に接してきた企業と同じような見た目を装うことができるのだ。自分たちが何者であり、どこからやって来たのかを説明することが重要だ。経営陣の経歴や写真などのちょっとした要素も、同様に重要である。

取引と企業情報の間の落差を吸収するのは簡単だ。なによりもまず、ホームページの大部分を販売と、現在の特売品、製品やサービスへのナビゲーションのために割くこと。About Us セクションへの簡単なリンクを設けることさえ忘れなければ、それでよい。一番最初にする必要も、一番目立たせる必要もない。左側にナビゲーションコラムを置く標準的な配置をとっているなら、このリンクはリストの一番最後でいい。ただ、隠れてしまわないようにだけはしておこう。

ユーザとのつながり

自己紹介をするというのは、どんな会話においても基本的な礼儀作法である。ビジネスにおいては、自社の発祥や、ビジネスの考え方、コミュニティとの関わりを説明して、信頼と尊敬を得ておくのもよいことだ。

ウェブは非常に非個人的である。だが、私たちの最初期のユーザビリティ調査では、ユーザはウェブサイトの背後にある企業の感触を知りたがることがわかった。画面の向こう側には誰がいるのだろう?

優れた About Us セクションを設けておけば、この理解が容易になる。何をやっているかを明快に伝えられれば、顧客もサイト全体を理解しやすくなる。もちろん、最終的にユーザの印象を形作るのは、サイト全体である。その組織が購入先として、ビジネスパートナーとして、就職先として、投資先として、あるいは(福祉関係なら)寄付先として適当かどうか評価したいとき、製品ページを閲覧し、サイトのコンテンツを読む。コミュニケーションは About Us だけにとどまらない。だが、その組織に関する事実、歴史、価値観をユーザに提供するための専用のエリアを設けることは、サイトコンテンツ全体のレベル向上につながる。

くわしくは

「About Us」情報のユーザビリティに関する 124 ページのレポートがダウンロードできる。50 項目のデザインガイドラインと、ユーザ調査からの画面ショット 85 点が含まれている。

2003年10月27日

公開:2003年10月27日
著者:Jakob Nielsen

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