たどり着いたその先に

  • by Jakob Nielsen
  • 1995年8月1日

オンライン出版の方向性に関するコラムへの補足記事

Beyond Being There(たどり着いたその先に)という研究プロジェクトがあった。これはBell Communications Researchが1991年から1992年にかけて行ったものだ。そこで得られた知見のうちもっとも重要なのは、コンピュータ、およびコミュニケーション技術を使って、PPR(physically proximate reality 物理的近傍現実 – 面と向かって人に会うことを、ちょっとわかりにくく言い換えた言葉)に匹敵するクオリティを実現するのは、当分の間は無理だろうということだ。よって、ほとんどのプロジェクトが、さらに高度なコミュニケーション帯域、高品質なビデオを指向しているのに反して、私たちはPPRでできないこと(例えば匿名でのインタラクション)に関してコンピュータを役立てることをねらった。言い換えると、現実よりもよいものを求めたのであり、たどり着いたその先のことを考えていたのだ!

Beyondプロジェクトで発案されたものとして、短期的同好グループというものがある。短期的同好グループは、元になる情報オブジェクト(例: ニュース記事、ウェブページなど)にリンクした会議室で、元情報に対するコメントやフォローアップでできている。ウェブページ、会議室、ネットニュースやメーリングリストと違って、短期的同好グループなら、実質上、ユーザやシステム管理者には何の負担もかけないでできる。グループは、数日、あるいは数時間で消滅する使い捨てでも構わない。

1991年に実装した短期的同好グループシステムでは、会議室に投稿「参加」することで、話題に興味があることを表明する。その投稿にフォローアップがつくわけだ。投稿された各メッセージがまた、短期的同好グループのタネとなる可能性を秘めている。グループは、メンバーがフォローアップを投稿し続ける限り、存在する。この方式はきわめてうまくいった。各個人参加者からみた投稿の質が向上したのだ。1~5の尺度(1がまったく無関係な内容、5が非常に関係の深い内容)で言うと、短期的同好グループでのメッセージに対するユーザの評価は平均で3.9。一方、まったく同じメッセージをコントロールグループに送信した場合、その評価は2.7となった。

参考文献

Beyond Being Thereプロジェクトについて、くわしくは下記を参照のこと:

Brothers, L., Hollan, J., Nielsen, J., Stornetta, S., Abney, S., Furnas, G., and Littman, M.:
Supporting informal communication via ephemeral interest groups.
Proceedings of the ACM CSCW’92 Conference on
Computer-Supported Cooperative Work

(Toronto, Canada, 1-4 November 1992), pp. 84-90.

Hollan, J., and Stornetta, S.:
Beyond being there.
Proceedings of the ACM CHI’92 Conference on Computer-Human Interaction
(Monterey, CA, 3-7 May 1992), pp. 119-125.

謝辞

Beyond Being Thereプロジェクトの主な参加者は、以下のとおり:

  • Steve Abney
  • David Ackley
  • Laurence Brothers
  • George Furnas
  • Will Hill
  • Jim Hollan
  • Michael Littman
  • Jakob Nielsen
  • Joel Remde
  • Scott Stornetta
  • Jeff Zacks