サイト観光客に価値がない理由

  • by Jakob Nielsen
  • 1997年8月1日

インターネットでのロイヤルティに関するコラムへの補足記事

観光客とは、サイトにはやって来るものの、実際に利用するには至らないユーザのことである。彼らは、1ページか2ページ見るだけで、他所のサイトへ行ってしまうのが普通だ。ロイヤルティの高いユーザは、何度も繰り返し来て、多い時は5ページも見てくれる(かなり珍しいケースだ)のとは対照的だ。

広告を販売しているなら、ヒット率が上がるだけで、それ自体、利益につながると思うかもしれない。ヒット数が増えれば、それだけあなたのサイトの広告を見る目玉を確保することができ、つまりは高収入につながる。確かにそうだが、それもCPMを一定額に維持していて始めて可能なことだ。頭のいい広告主なら、CPM(広告視聴者1000名あたりのコスト)の値下げを要求してくるだろう。いくら「目玉」をサイトに誘導できても、単に間違って来ただけだったりして、その質が低いからである。これでは、広告した製品の見込み客にはなりえない。CPMを高額に維持するには、ユーザを絞り込んで、ある話題に本当に興味のある人だけを集めることだ。さもなくば、クリック率はレンガのように落下する。

サイト観光客には、主に3タイプいる。

  • 迷子:検索エンジンや、他のサイトのリンク、あるいはURLの誤入力、その他の理由から、間違ってあなたのサイトに迷い込んでしまったユーザ。彼らが元々行きたいサイトは別にある。検索エンジンの出来が悪いので、間違ったリンクをたどるユーザが後を絶たない。求めているものでないとわかると、Backボタンにマウスを移動するが早いか、すぐさまサイトを後にしてしまう。うろうろ見て回ったりはしない。何か探しものがあるからだ。従って、まぎらわしい検索用語やリンクを使って、ありもしないものでユーザを釣ろうとしても、かえって逆効果だ。
  • 見物人というのは、あなたのホームページ(およびそれ以外に数ページ)をチェックしに来た人だ。違うウェブサイトと、そのデザインを見たいと思ったからだ。もしあなたがウェブデザインの仕事をしているなら、この手のユーザは貴重だ。だが、何かモノを販売しているサイトなら、この人々と取引が発生することはほとんどないだろう。彼らが興味あるのは、モノよりもページのレイアウトだからだ。
  • 通りすがり客とは、興味のあるページをひとつ見に来ただけで、それ以上は見てくれない人のこと。この手のユーザは、他の人にサイトを推薦してくれたりするし、あなたの会社にかなりの好印象を持ってくれることもある。とはいえ、二度と戻ってこないとすれば、それほど好感を持ってくれたわけでもない。通りすがり客が、積極的にトラフィックを呼び込んでくれる熱心なユーザになる見込みはない。同様に、何か買ってくれる見込みも薄い。

オンライン広告をクリックしても、1、2ページ見てすぐに元に戻ってしまう人というのは、特性によってこのいずれかに属する。広告に「だまされ」て、ありもしないものを期待させられた人は、間違ったリンクをたどらされたことになるので、とても腹を立てて、二度と帰ってこないだろう。サイトのデザインや、特典付きのページを見てみたい、という気持ちにさせる広告なら、少なくとも見込みはある。だが、さらに突っ込んでページを見たいとか、また来てみたいと思わせない限りは、本当には利益を得られないだろう。

非インターネットマーケティングで従来から行われてきた議論は、これからも有効だ。満足度の高い顧客を引きとめ、リピート注文をねらった方が、新規にワンタイムの顧客を引き付けるよりも簡単だ。初回の取引では、正味の利益は赤字になっている可能性もある。新規顧客を競争相手から奪い取って獲得するためのコストが莫大だからだ。また、初回の注文は少額である可能性が高い。顧客は、継続的にまとまった金額の取引をする前にちょっと試してみたいと思うからだ。既存の顧客を抱え込む方が、新しい顧客をつかむために広告を打つよりも安上がりだし、リピートの注文は徐々に額が上がっていく見込みがある。コストの低さ、注文額の大きさを合わせてみれば、リピート客が、ほとんどの利益の源泉になっていることに気付くだろう。これは「実世界」では何度も繰り返し証明された事実であり、インターネットでもまた、確実に真実なのだ。