電源まわりのユーザビリティ

一般の家電品を使っているときにはACコンセントの使い方についてあまり不満を感じることはなかった。テレビや冷蔵庫、洗濯機、多機能電話などの常設機器については、壁面の適当な場所にコンセントがあれば、特に問題はない。また、ひげ剃りやコーヒーミルなどの一時的利用機器の場合にも、その利用場所にコンセントがあれば問題はなかった。ようするに、コンセントの豊富さとその設置場所という環境側の要因だけが問題だったといってもいいだろう。

それでもたとえばAV機器を設置するときに、ビデオがあって、それにDVDプレーヤ、ゲーム機、それからオーディオ機器としてCDプレーヤ、MDプレーヤ、アンプなど多数の機器をつなぐことになると、壁面のコンセントでは数が足りなくなり、テーブルタップなどの増設器具のお世話になった。こうなると多少足回りがごちゃごちゃしてきたが、それでも訳がわからなくなるというほどではなかった。

電源周りに使いにくさを感じるようになったのはパソコンと周辺機器を利用するようになってからだろう。パソコンについては、最小セットであれば本体とディスプレイのコンセントが必要なだけだから特に問題はない。事実、自宅で子供に使わせているパソコンでは、それにプリンタを追加した程度なので、足回りは割とすっきりしている。

しかし、パソコンには様々な周辺機器がある。スピーカ、スキャナ、外付けのHD、外付けのDVD-RAM、USBのハブ、インターネットのためのルータ、ペン入力装置など、私の自宅では二台のパソコンにそれぞれ違った周辺機器がついているので、もうパソコンラックの足下はそれらの機器のコードがからみあって大変な状況になっている。

私の場合は孫の手スイッチというものを二つ使って、A系統のパソコンとその周辺機器、B系統のパソコンとその周辺機器とをコントロールをしている。それぞれの先には大型のテーブルタップがシリアルにつながっていて、特定の系統のパソコンに関連した機器の電源ケーブルがそこに差し込まれている。このほかに非特定系統のテーブルタップがあって、それは卓上蛍光灯や携帯電話の充電器など、パソコンの周辺で利用しているが、特定のパソコンには関係ない常設機器がつなげられている。こんな具合で、私の場合は三系統の電源ケーブルが足下でからみあっているわけだ。そのため、機器を新型に切り替える時などは、古い機器をはずすために、そこからでているケーブルをたどりながら、ほかのケーブルの間をぬって、コンセントにまでたどりつくのが大変な作業となる。

電源ケーブルについては絡み合ってしまうという問題のほかに、トランスの問題がある。トランスのために電流をとるコンセントについては二つのやり方があって、トランスから直接コンセントの足がでているものと、トランスからケーブル経由でコンセントにつながっているものとがある。トランスから直接コンセントの足がでていると、トランスの大きさにもよるが、テーブルタップに差し込んだときに面積をとるために周囲のソケット穴がふさがれてしまい、テーブルタップの利用効率が低下する問題がある。こうした使い勝手の問題については既に気がついた人がいるようで、10センチ程度の短い延長ケーブルがパソコンショップで販売されている。これを使うと、トランスに直接コンセントがついていても、その延長ケーブルのコンセントのほうを差し込めばいいため、テーブルタップの利用効率は向上する。

しかし、ユーザビリティという観点からは、そもそもこうしたトランスがごろごろしなければいけないこと自体を問題にすべきではないだろうか。周辺機器で使われている電圧は12Vとか6Vとか、いくつかに限定されている。だとすれば大容量のトランスを内蔵した周辺機器用のテーブルタップのような製品を出せばいいだろう。その差し込みはACコンセントではなく、別の形を決めておけば良い。一つのコンセントに複数の接点がついていて、自分の機器で利用する電圧のところから電源を取るようにしてあればいい。もちろんそのためには各メーカがその規格に従って機器開発をすることが必要だが、こうすればごろごろトランスを一掃することができるだろう。

またUSB機器やIEEE1394機器の場合、接続ケーブル自体が電源を供給するようにしてあれば、機器とパソコンあるいはハブを一本のケーブルでつなぐだけでよくなる。機器から接続ケーブルと電源ケーブルの二本がでているという現状を改善するこどできる。現在でもPCカードリーダやスキャナなど一部のUSB機器の場合には、USBケーブルからの電源だけで駆動するようになっているが、これはとても使い勝手がいい。

このように、電源まわりのユーザビリティという問題は、これまではあまり真剣に考えられてこなかったように思う。しかし、多様な周辺機器が登場するようになった現在では、一つの重要な課題領域だという認識が必要だろう。

公開: 2002年7月15日
著者: 黒須教授