音楽の通信販売

  • 黒須教授
  • 2003年3月10日

試用券を入手したので、楽曲のダウンロード購入というのを試みた。これが結構手間のかかるもので、使い勝手に難ありと感じた。

まず、avex networkの音楽配信サイト@MUSICにアクセスし、曲を選択して保存用フォルダを指定し、ダウンロードする。曲は大きくても数メガバイトなので、それほど時間はかからない。ここまではまあ普通といってよいだろう。

面倒なのは支払いのやり方。今回使ったのはBitCashというプリペイドカードで、まずスクラッチカードの裏面をスクラッチしてカード情報を表示させておくような仕組みになっている。ひらがなと英字がでてきて両方いれるのかと思ったが、どうも英字の方は外国人ユーザのためのものらしく、ひらがなだけを使うということが後で分かった。これも日本人用、For Foreign Usersとでも書いてあれば分かりやすいのに。

さて、ダウンロードしただけでは曲は聴けないようになっている。そこで保存用フォルダを開いて購入したい曲をダブルクリックし、しばらく待つ。すると@MUSIC画面がでてきて、クリックしてください、と表示されるのでそこをクリックする。次に@MUSIC for WMA購入手順画面で、メールアドレスを二回入力する。さらに同じ画面で、BitCashのマークをクリックしてカード情報の入力に移行する。この画面で、私は、BitCashのマークをクリックするのだ、ということが分からずにBitCashの説明画面に移動してしまい、しばらくおろおろしてしまった。さて、カード情報の入力画面では、カードのスクラッチ部分に書いてある、もりむお、まろまほ、ろきかほ、やまてさのような平仮名文字16字を入力する。そしてその画面で、送信ボタンを押す。するとご利用の確認画面となり、そこで購入ボタンを押す。しばらくの間、コンテンツキーを取得していますという画面が表示されるので、その間は待っている。コンテンツキーを発行しましたという画面に変わり、そこで閉じるボタンを押す。こうすると@MUSIC画面で、ようやく再生が押せるようになる

一曲を聞けるようにするために、これだけの手間がかかる。しかも曲単位で購入するようになっているため、たまたま今回は15曲を購入することにしたら手間のかかることに驚かされた。なぜ複数の曲を一括購入するような認証画面にしておかないのだろう。なぜこのように複雑な画面遷移になっているのだろう。

どうもこの支払い方法は、使い勝手よりも決済の安全性を優先したものらしい。BitCashでなく、クレジットカード決済を選択すればもう少し簡単だったのかもしれない。しかし、曲単位で購入するという基本構造は同じなので、その場合でも毎回クレジットカードの情報を入力させられて辟易させられたことだろう。とすると、決済の安全性を優先したこともあろうが、やはり利用者の使い方を考慮せずにサイトデザインをしてしまったことに使いにくさの原因があると言っていいだろう。一曲が210円と値段はまあそこそこだったが、ほとんどのユーザは一回に一曲しか購入しない、という考え方で設計したのかもしれない。

この方法での楽曲の購入には、さらに厄介なことに、著作権保護の機能が働いていた。説明書に「ダウンロードした音楽ファイルには、DRM(著作権保護機能)がかけられています。一度音楽ファイルをスマートメディアに転送すると、そのファイルは他のポータブルデバイスには転送できません。」と書かれていたが、そのためだろうか、楽曲データを保存してあるマイクロドライブからハードディスクにコピーしてから再生しようとすると、Windows Media Playerのエラー「指定されたパスがみつかりません」がでてきてしまい、閉じるボタンを押すしかなかった。その反対に、マイクロドライブの中であれば、どこに移動しても聞くことができた。さらに自宅にもどってマイクロドライブをセットして聞こうとしたら、それもできない。条件を見ると、登録時と同じPCである必要があるそうだ。それではマイクロドライブに入れた意味がない。購入した当人が聞こうとしても、PCが違うだけで再生できないというのは、ちょっと問題があるのではないだろうか。

プロテクションの仕掛けについてはこうしたやり方もあるとは思うが、やはりユーザの立場からすると、それをどのように実現するかが問題だ。そう考えると、このやり方は少し柔軟性に欠けているように思う。自分で購入した曲を自由に自分のマシンの間で移動することすらできないというのでは、やはり困る。もちろん楽曲を提供する側からすれば、その曲がネットでどんどん無料で交換されていったら困るだろうことは容易に想像できる。しかし、たとえば購入した曲のデータに購入者の情報を入れてしまうようにしておけば、ネットで流れても、どこで誰が何時購入したものかが分かるようになるため、多少の抑止力にはなるのではないだろうか。偽りのデータを入力されないように、入力されたメールアドレスに対して解除キーを送り、それを入れれば他のドライブにコピーができるようにする、など考えれば幾つかのアイデアは浮かびそうな気がする。

このように、楽曲のダウンロード販売には、まだユーザビリティに関する課題が沢山残されているのが現状である。