ソフトウェアのバージョンアップ

私は最近、ソフトウェアのバージョンアップをあまりやらなくなった。仕事柄、新しい機能を確認するためにバージョンアップされるごとに研究費で購入してはいるが、実際にインストールすることは必ずしも多くない。理由は簡単だ。新機能の中に魅力的なものが見あたらないことが多いのだ。また、新しいバージョンにしてしまうとデータ形式が更新されてしまい、古いバージョンのソフトでは利用できなくなってしまうこともある。これは職場と自宅と携帯とで数台のマシンを利用している私にとっては不便なことである。一旦、あるマシンでバージョンアップをしてデータが新しいバージョンに対応してしまったら、すべてのマシンのソフトを同じようにバージョンアップしなければならないのだ。

そもそも新しいバージョンにアップする必要がなく、現状のままでも十分に使えているソフトは多い。デジカメ写真の加工や管理のソフト、辞書ソフト(時事用語は別)、住所録ソフト、仮想CDソフト、ドローソフトやペイントソフト、統計解析ソフトなどはソフトウェアでの成熟商品ではないかと思っている。

反対に逐次のバージョンアップが必要なソフトもある。ウィルス対策ソフトはその典型だし、電車の時刻表ソフトなどもそれに該当する。ただし、これらはデータの更新が必要なのであって、本体のプログラムが更新される必要はあまりないだろう。

性能向上がまだ望ましく、その意味でのバージョンアップが望まれるソフトもある。OCRのソフトや音声認識ソフト、翻訳ソフトなどがそうしたソフトウェアである。

こうした中で気になるのはOSのバージョンアップだ。攻撃の対象となっている脆弱性に関して逐次のバージョンアップが必要となるのは致し方ないが、機能追加という形でのバージョンアップが本当に必要なのかどうか疑問に思っている。OSについては、むしろ現状の仕様の見直しをきちんとして欲しいと思う。

WindowsはXPになって安定性や性能も向上したようには思うが、起動や終了の速度はもっと速くなって欲しいし、ネットワーク関連の設定やデスクトップの管理などについてまだまだ使いにくい部分が多い。以前も書いたことがあるが、新しいマシンに自分の環境を構築しようとしたときに以前と同じ手順を反復してすべてを新規にインストールしなければならないというのも面倒だ。せっかくある環境をアプリを含めてそのまま移行できるようにすべきだと思う。

また、雑誌の記事に、初期設定はこうなっていますが、これこれのように変えた方が使いやすいでしょう、といった内容のものが掲載されるということ自体がそもそもの問題点だ。企業戦略として、将来の利用形態を先取りしているつもりかもしれないが、少なくとも現在のユーザにとってはデフォルトの設定では使いにくいことが多い。

私の場合、Windowsをインストールしたら、まずスタートメニューをクラシック表示にしてしまい、タスクバーの設定を変更し、フォルダオプションで従来のWindowsフォルダを使うように変更し、ファイルの表示に関してはすべてのファイルとフォルダや、登録されている拡張子、保護されたオペレーティングシステムファイルを表示するように変更する。画面のプロパティでもウィンドウとボタンをWindowsクラシックスタイルに設定する。そのほか電源設定を変更したり、ウィンドウのフォルダオプションを変更したり、仮名漢字変換をMS IMEからATOKに変更したり、と様々な設定変更を行う。システムの変更が終わったら、次にIEやOEの設定の変更を行う。たとえばOEでは、メール送信の形式をHTML形式からテキスト形式に変更するというほとんどすべてのユーザがやっているだろう変更を行い、そのほかにも起動時に受信トレイを開くようにしたり、いろいろなことをしなければならない。新機能の導入や新しいルックアンドフィールを導入するのも結構だが、まずこうした点で現状の仕様の見直しをきちんとできないものだろうか。私のやっている設定が必ずしも最適なものとは思わないが、少なくとも雑誌で推奨されている程度の内容をデフォルトにするような改善は必要だと思うし、そうしたバージョンアップであれば歓迎だ。

また、バージョンアップというのは一般的に機能の追加であり、その際には下位互換性を維持することも必要と思いこんでいるようにも見受けられる。もちろん頻繁に大規模な変更が発生するのは好ましいことではないが、時にはそれをしなければならない。9X系のしがらみをXPでカットしたのは英断であったと評価しているが、現状のXPの基本仕様をいつまでもひきずる必要もないだろう。LANやインターネットの設定、プリンタの設定、ディスク管理のやり方、アプリケーションソフトの位置づけなど、根本的に整理し直した方がいいように思われるところも多い。前述したように、ハードウェア依存の部分とソフトウェアで独立している部分を綺麗に切り分けることも大きな課題だろう。

このように、ソフトウェアのバージョンアップはソフトの種類によってその対応すべき形は様々である。ただし、営利企業としてはいつまでもソフトを売り続けなければならないのだろう。そのためには、新しさをアピールするために不必要なバージョンアップを行うケースも出てくる。そうしたケースについては、企業の戦略のためにユーザに迷惑をかけるのではなく、ソフトウェアの売り方を年間契約制にするといったような形で根本的に切替えてゆくことも考えるべきだろう。何が何でもバージョンアップ、というのは間違いだと思う。

公開: 2003年10月20日
著者: 黒須教授