電池のあるべき姿

  • 黒須教授
  • 2005年12月26日

私たちが携帯している機器にはさまざまな種類のものがある。腕時計、携帯電話、デジカメ、オーディオプレーヤ、ビデオカメラあたりはかなり一般的だし、小型ラジオ、ICレコーダ、電子辞書、電子ブック、会話練習機など、他にも種類は多い。ノートパソコンくらいの大きさになると、さらにDVDプレーヤもあるし、最近ではプロジェクターも携帯できるサイズと重さのものが出てきた。ユビキタス時代に入ってきて、携帯機器は今後ますます多様に、また重要な存在なってゆくだろう。

そこで問題になるのがそれらの機器の電源だ。最近の会議や授業ではノートパソコンが林立する様子を見かけることが珍しくなくなった。そうした会議室や教室では、AC電源とLANコネクタを常備することが増えてきた。しかし携帯機器はAC電源のある場所で使うことはむしろ例外的だ。携帯、という言葉から連想されるようにAC電源のない場所で使われることの方が多いといえる。そうした時、頼りになるのは電池だ。

携帯機器に使われる電池には乾電池と充電池がある。それぞれにメリットとデメリットがあるが、個人的には乾電池の方が好きだ。その利点としては入手が容易なこと。コンビニでも駅の売店でも購入できるし、人里離れたところに行くときにはまとめ買いして持って行けばよい。携帯機器は電気がなくなってしまったらただの荷物になる。その意味で、電気が無くなったらどこでも入手し、利用できるという乾電池のメリットは大きい。しかし乾電池にはデメリットも多い。まず値段が高くつく、使い終わった電池は捨て方を誤ると環境汚染につながる、パワーを大きくしようとするとサイズが大きくなってしまうなどの欠点がある。

その意味で充電池には魅力がある。値段は安い、長持ちするので廃棄される数も少なくてすむ、サイズを小さくできる、というように乾電池とは反対の特性をもっている。しかし乾電池の反対に、どこでも容易に入手できるわけではないという欠点も持っている。

たとえば携帯電話がバッテリー切れで通話できなくなることはしばしばある。そのためにコンビニや駅の売店には乾電池式のバッテリー補充機が用意してある。最近では、災害時のために、懐中電灯を兼ねた手回し発電機付きのバッテリー補充機も出回るようになった。そんな形でなんとか急場をしのぐことができるようにはなっている。

デジカメには乾電池式のものもあるが、大半は充電池式だ。しかしバッテリーが上がってしまったら、せっかくのシャッターチャンスを逃してしまう。だから私はデジカメを買うと、かならず充電池を追加購入し、常に予備の充電池を持つようにしている。

この問題は、充電池のパワーを強化して長時間保つようにすれば済むという問題では必ずしもない。いくら長持ちするようにしても、切れる時には切れてしまう。だからバックアップの方策が必要になる。この点が充電池の最大の問題だといえるだろう。充電池がバッテリー上がりを起こすと機器が使えなくなる、つまりアン・ユーザブルになってしまうのだ。

この問題に対して私の考えている方策は充電池の交換販売という方式だ。バッテリー上がりを起こした充電池をコンビニや駅の売店にもってゆくと、わずかな金額で充電済みの充電池に交換してくれる。そうしたシステムができれば人里離れた場所に行くケースを除けばバッテリー上がりの問題は解消するといえるだろう。

しかし、この方策には大きな課題がある。各メーカーが規格の違う充電池を使っているという問題だ。現在のように多種多様な充電池が出回っているような状態では売店としても在庫を揃えることはできないだろう。せめて携帯電話には一種類、ビデオカメラにも一種類、デジカメにも一種類というように規格が統一されていればなんとか対応してもらうことはできるだろう。このためには業界団体の合意が必要だ。しかしユーザの利用状況を考えるなら、こうした形でのサポートシステムを真剣に考えることが必要だといえる。携帯機器の爆発的な普及の時代に入った今、この問題は切実なものになっているのだ。