ウェブの厄介者

どうすれば人を困らせることができるのか、どうしたら世界中から有用な情報を不適切な方法を使ってでも入手するかということを真剣に考えている輩が世界中に大勢いる。実に嫌なことだ。

  • 黒須教授
  • 2013年12月18日

このところ、立て続けにChromeがGoogle以外の検索ソフトに「乗っ取られて」しまった。最初にやられたのはdelta searchというもので、これをGoogleで検索すると1,460,000件もヒットする。相当多くの人たちが迷惑を被っているらしい。そして、その駆除方法が色々と書いてあるが、その通りにやって一瞬うまくいったかな、と思えても、しつこく居残っていてまた出てくる。削除法として紹介されている簡単な方法としては、Chromeの設定を開いて、ページ設定や検索エンジンの管理から削除したりするものがあるが、これでうまくいくほど柔ではない。registry editorをいじる方法も紹介されているが、これでもうまくいかない。ほとほと困っていた。

そんな状況でいたところ、ある日、それがSweetIMというものに変わっていた。良く分からないのだが、これがdelta searchを駆逐してくれた、という甘い話ではないだろうと思い、また調べてみた。こちらはGoogle検索では1,110,000件のヒットだった。やはり駆除方法が色々と紹介してあったが、こちらもコントロールパネルのプログラム削除で消えてくれるほど甘くはない。要するに、正攻法で攻めたところで、削除しようという試みの対象になることは先刻ご存じだろうから、名前で検索したとしても、別名でどこかにプログラムを潜り込ませてあれば、こちらとしては対処のやりようがないことになる。

さらに三番目としてsearchgolというのがやってきた。これは検索するとまだ5,050件しかヒットしないが、邪魔者であることに変わりはない。この嫌らしいところは、「スパイウェアが検出されました」とか「ディスクの空き容量が非常に低下してきています」とかの広告をだして、いかがわしいリンクに誘導しようとしているところだ。まず引っかかりそうにないデザインの広告なので、そこに誘導することを目的にしているのか、それは本当の目的のカモフラージュに過ぎないのかが分からない。

これらのマルウェアに対する対策のために、さらにフリーウェアなどを使うように書いてあったりするが、それを本当に信用していいのかどうか、さらには対策を書いてあるサイトには、却って症状を悪化させようとする悪意のあるものもあるのではないか、などと疑心暗鬼になってしまう。

しかし不思議なのは、ウィルスバスターやノートンなどのウィルスやマルウェアへの対策ソフトが、これらに対する対策を一向に取り込んでくれていない点だ。まだ現在は解析途中ということなのかもしれないが、早く何とかして欲しいと思う。

そもそも、これらのソフトは単純な嫌がらせをするために開発されたとは思えないところに怖さがある。これだけしつこく居残ってしまうソフトを開発する力があれば、検索エンジンを置き換えるだけで済ます訳がなかろうと思ってしまう。システムを書き換えたり、個人情報を吸い上げたりといったことを裏でやっているのではないか、と思うと本当に嫌になる。たとえば、検索エンジンを書き換えてしまい、delta searchからgoogleを呼び出してそれを使っていても、そこで何を検索したかということが全て先方に知られてしまう、というようなことだ。

通常のウィルスやワームなどの類は、ウィルス対策ソフトが対応してくれるし、それをインストールすることを学生にも勧めてきたが、大学で授業に使用しているパソコンが、何時、こうしたマルウェアの被害にかかってしまうとも限らない。

世の中には、こうした悪意をもった人間がいることは確かだが、それが相応の能力を持ってしまった時、その悪用は人類社会の生産性を阻害するほどの力を持つだろう。さらに、それがdelta searchのように企業という集団になってしまった時には、その力はとても一般の個人ユーザが立ち向かえるものではなくなる。そうした犯罪者の素顔を見る機会があったとしたら、意外にもふつうの大人しそうな若者だったりするのかもしれないが、まあそれはどうでもいい。僕のように機密情報とは縁遠い人間でも、そうした気持ち悪さや不愉快さを抱くわけだから、機密情報に関与している立場の人たちが神経を尖らせるのも無理はない。

時代が進めば、技術も進化する。いつまでも古典的ウィルスを作っているだけの人は少なくなるだろう。どうすれば人を困らせることができるのか、どうしたら世界中から有用な情報を不適切な方法を使ってでも入手するかということを真剣に考えている輩が世界中に大勢いる。実に嫌なことだ。