テキスト広告の勝利は長続きするか?

テキストのみによる広告は、バナーよりはるかに効果的だ。だが、それは目新しいことだけが理由なのだろうか?検索エンジンでのテキスト広告の優位性は、今後も変わることはないだろう。しかし、それ以外のサイトでテキスト広告が効力を発揮するのは、それが直接ユーザのニーズに応えている場合に限られる。

一般的にいうと、ウェブでは広告は役に立たない。ユーザビリティ研究者の間では、1997 年から明らかになっていた事実だ。ユーザが広告を無視するのは、それがウェブの基本的な約束事に反するものだからである。ウェブでは、ユーザが自分の行きたいところへ行き、各自の情報ニーズを即時に充足できるようにしておくべきなのだ。

当初から、ウェブ広告に対するこの告訴状には、2 つの例外があることもはっきりしていた。

  • 項目別小広告は、それがユーザの興味に合致しているかぎりは有効だ。それはコンテンツであって、広告ではない。何か買いたいものがある人は、積極的に広告を探し回る。eBay や Monster/HotJobs のようなサイトの多くが成功をおさめた理由はここにある。ウェブの小広告の優位性のおかげで、伝統的な印刷物の新聞紙の先行きは暗い。もっとも利益率の高い収入源が、どんどんオンラインへ移行していくからだ。
  • 検索エンジン広告は有効だ。なぜなら、検索エンジンは、明確にそこ以外のどこかを見つけるために訪れるウェブサイトだからである。よって、探しものに関連する広告をみたユーザが、その広告をクリックする可能性は高い。広告主は、ユーザのニーズに即応できる。ユーザの検索キーワードにもとづいて、広告を表示するターゲットを決めてあるからだ。(検索エンジンのホームページ上の広告が機能しないのも、同じ理由による。ユーザが、今何を求めているかがわかるまでは、サーバ側で広告のターゲットを絞ることはできない。)

検索エンジンでのテキスト・オンリーの広告は、特に近年成功を収めている。この成功にならえとばかり、検索以外のサイトも、現在、このフォーマットを試行中である。しかしながら、彼らの努力が実を結ぶかどうか疑わしい。非検索サイトには、決定的な要素が欠けているからである。検索サイトでのユーザの唯一無二の目的は、できるだけ速くそのサイトを離れることにあるのだ。

バナー無視からボックス無視へ?

テキスト・オンリーの広告は、当分の間、従来のグラフィック・ベースの広告よりもうまく機能するだろう。ウェブ・ユーザはかなり以前から、はっきりとバナーを無視する傾向を示していた。見かけが広告に似たものは、何であれ避けてきたのである。テキスト・オンリーの広告は、みんなが今まで無視するように習慣づけられきたデザインとは似ていない。その結果、彼らの目にとまるようになった。この事実が、テキスト・オンリー広告の成功につながっていることは確実である。

また、テキスト・オンリー広告は、一時的な物珍しさ効果の恩恵も受けている。新しい広告フォーマットは何でもそうなのだが、人々は、まだそれを無視する習慣を身に付けていないのだ。

しかし、長期的には、物珍しさ効果が色あせるのは間違いない。ユーザはボックス無視の習慣を身に付けるかもしれない。以前から、画面内でバナーの形をしたエリアを無視してきたように、小さなテキスト・ボックスも無視するようになることが考えられる。よって、生誕の地である検索エンジンを一歩離れれば、テキスト・オンリーの広告とて、輝かしい未来を約束されたわけではない。

簡潔明瞭なコンテンツ

テキスト・オンリー広告には、ひとつ、長続きしそうな利点がある。ローエンド・メディア形式であるために、ユーザに、よりまじめに受け取ってもらえる可能性があるのだ。メッセージを数語で表現しなければならない状況に追い込まれると、広告主も知恵を絞るようになり、より簡潔明瞭な広告ができる可能性がある。その製品あるいはサービスが、ユーザにとってどんな利点を持つのかを説明することに注力したものになるだろう。

とはいうものの、テキストを使って、くだらないたわ言を並べることを妨げる理由は何もない。たとえば、「where do you want to go today?」などという広告をユーザがクリックする可能性はない。ユーザが当面しているニーズを無視することは、ウェブでは即、死を意味する。

ユーザのニーズを無視してリッチ・メディア広告を出している企業は、「ブランド促進」をやっているつもりで自己欺瞞に陥っている。現実には、たんに無視されるだけだ。人々のニーズに結び付くものがないからである。テキスト・オンリー広告のフォーマットでは、中身のないメッセージが無用の長物であることがさらに明らかになる。だが、このせいで、広告主は、旧来メディアで培われてきた悪習から抜け出すことができるのである。

ウェブ・ユーザを 10 年間観察してきた結果、ひとつはっきりした結論がある。彼らはまったく自分勝手で刹那的なのだ。ユーザが求めているものを、ずばりその場で提供すること。これがウェブでの成功の道だ。小さなテキストボックスを書くことで、広告主たちも、この王道を歩みだすことができるだろう。

2003年4月28日