1996年の予測を再点検
※1997年のウェブトレンドに関するコラムへの補足記事
1996年に書いたコラムで「1996年のウェブトレンド」として、私は次のように予測した。
- 「サーフィン」式のウェブ利用が絶滅する
- 顧客関係を樹立するために、ウェブサイトはユーザに対して個別化サービスを提供するようになる
公式の統計がどうなっているか知らないが、私がユーザ・インタビューとユーザビリティ調査から得た定性的なデータに照らしてみると、サーフィンはどうも絶滅してきたようだ。ほとんどのユーザは、普段ごく限られたお気に入りのサイトにだけアクセスしていて、それ以外のところへ行くのは、特に処理すべきタスクがある場合に限られるということがわかってきたのだ。ほとんどの人には、単にウェブを見て回るだけの目的で、クールなサイトをチェックしているヒマなどない。
個別化サービスや関係性の確立という点では、私の予想したほどめざましい進展はなかった。例えば、ほとんどの新聞サイトでは、あいかわらずフロントページのカスタマイズ機能(いわゆる自分用新聞)を提供していない。どのユーザにも同じページを表示するだけだ。cookiesの利用はそれなりに普及したので、ユーザの設定をいくらか覚えているサイトもたくさんある。例えば、「フレーム解除」ボタンを1回クリックしたら、それ以降の訪問では、すべて使いやすいフレームなしバージョンになる。useridをcookieに保存するのも一般的だ。それ以降の訪問時に、ユーザをわずらわせる(さらにハイパーテキスト性を損なう)ログオン画面を表示しないようにするためだ。
だが、ほとんどのカスタマイズ機能はきわめてシンプルなもので、実質的なユーザとウェブサイトの関係性を樹立するほどのものではない。高度なウェブサービスをサーバ上にプログラムするのは、まだ非常に複雑な作業となるため、ほとんどのサイトがまだこれを行っていない。
1996年1月、私はいくつかのサイトに注目していた。これらのサイトでは、他に先駆けて、各ユーザにぴったりの新情報ができたら、すぐに知らせるサービスを開始したのだ(例えば、SunSolveでは、やっかいなバグを修正するパッチができたらユーザに告知した。またAmazon.comでは、お気に入りの作家の新作が出たことをユーザに知らせていた)。これらは、1996年後半に人気を得たいわゆるプッシュ型ウェブ・コンテンツに極めて近いサービスだ(リンク先のNew York Timesの記事を閲覧するには登録が必要 – 先に述べた不愉快なログイン画面の好例だ。だが、Timesではuseridをcookieに保存してくれるようだ)。
残念ながらほとんどの「プッシュ」技術は、単に関係のないコンテンツを、あふれんばかりにユーザに押し付けるだけでしかない。できるだけ数多くの注目を集めようとしているのだ。PointCastは、生産性を低下させる。絶え間ないニュースでユーザを誘惑して、仕事に取り掛かるのを先延ばしにするデバイスとしては完璧なものだ。1996年1月に私が気に入ったプッシュ・サービスは、非常に選択的で、しかもそのユーザにとって大きな意味のある出来事が起こった場合にのみ、ユーザにコンタクトしてくるものだ。