リサーチ視点でチェックした、今どきのクルマ3車種
自動車関連のマーケティングリサーチに関わる筆者が、今どきのクルマ3車種、トヨタのクラウンクロスオーバー、メルセデス・ベンツのE350e、BYDのSEALを体験し、着目した点についてお伝えします。
イードのリサーチ事業本部では、Webメディア「Response」と同じ会社である強みを活かし、車両取材に同行して普段なかなか触れられない「今どきのクルマ」を体験させてもらいました。 自動車メディア的視点はResponseさんにお任せして、ここでは自動車関連のマーケティングリサーチに関わる筆者が着目した点についてお伝えします。
トヨタ クラウンクロスオーバー ハイブリッド
クラウンクロスオーバーは2022年7月登場。今回のクラウンから、セダン単独ではなくクラウンシリーズとしての展開となりました。クラウンクロスオーバーは、「『セダンを超えるセダン』として進化した、セダンとSUVのクロスオーバー」とのこと。2023年10月には、「俊敏でスポーティな走りが楽しめる新しいカタチのスポーツSUV」クラウンスポーツも登場。2023年11月にセダンボディを継承したクラウンセダンが、また、今後ステーションワゴンのクラウンエステートが登場予定となっています。
物理スイッチ中心の操作系
「今どきのクルマ」としては物理スイッチが多く、特に空調周りはその印象が強いです。シートのベンチレーター(送風機能)とヒーターのスイッチが隣接しており、それが左右に配置。また、右側の設定温度表示の真下が右側の温度設定スイッチ、左側の設定温度表示の真下が左側の温度設定スイッチと、直感的に使いやすい配置となっている点が好印象です。
押し込むタイプのスイッチ(シートヒーター、A/Cなど)と、シーソー式のスイッチ(温度設定、風量など)が混在していますが、特に違和感なく収まっています。
初見でも設定できたアドバンストパーク
アドバンストパーク(自動車庫入れ機能)を試してみたところ、特に違和感なく開始まで設定できることと、自動で後退する際や操舵する際の動きが速すぎないため安心して見ていられる点が好印象でした。
自分で運転操作して車庫入れするのと比較して、早く完了する感じではないですが、枠線に対して左右均等にぴったり入れてくれるので、これならば使う価値がありそうです。
プロアクティブドライビングアシスト
混雑した市街地で地味に有り難い機能がプロアクティブドライビングアシスト。公式サイトでは、「安全運転をさりげなくサポート」「運転の状況に応じたリスクの先読みを行うことで、危険に近づきすぎないよう運転操作をサポートし、ドライバーの安全につなげます」とのことです。
ACC(アダプティブクルーズコントロール)のような事前の設定は必要なく、先行車に近づいたときに減速したり、下り坂で速度が上がらないよう制御されたりといったサポートが入ります。いずれの動きも特に強く介入する印象はなく、人によっては制御が入っていることに気づかないこともありそうな介入度合いです。これにより、より自然な走りとなり、またハイブリッドの回生制動がより多頻度で動作するため実用燃費の向上効果もありそうです。
乗ってみての印象
- 軽めの操作系と、フワッとした乗り心地
- 初見でも全体的に使いやすい
- 見た目は従来のクラウンとは大きく変わったが、これまでのクラウンの良さは継承
メルセデス・ベンツ E350e
E350eは、メルセデス・ベンツの定番ラグジュアリーセダンEクラスのPHEV(プラグインハイブリッド車)。2リッター直4のガソリンターボエンジンとモーターが組み合わされています。バッテリー容量が25.4kWhと大きく、「普段の近距離走行はモーターのみで、長距離移動はエンジン+モーターでパワフルかつ快適に」移動できるとのことです。
MBUXスーパースクリーン
室内で最初に目に入るのは、全体が一体化されたような印象のモニター。メインモニターが14.4インチ、助手席前が12.3インチ。
写真ではYouTubeが出ていますが、各種メディア再生、対応アプリによるゲーム、オンライン会議などが可能です。
案内が直感的なARナビ
最近のメルセデスでは他車種でも同様ですが、カメラで前方を捉えた画像の上に案内の矢印を重ねて表示し、併せてヘッドアップディスプレイでも矢印表示をすることにより、交差点での右左折指示がより直感的にわかりやすくなっています。
乗ってみての印象
- 重厚感のある動き出し
- 精緻な作り込みで、さすがと思わせる高級感
- 状況によってはやや目障りな、表示領域の広いヘッドアップディスプレイや派手な色のアンビエントライト(いずれも設定で目立たないように/オフにできますが)
BYD SEAL (RWD)
SEALは、中国BYDが2024年6月に国内発売したラージセダン。8月末までの受注が425台(https://byd.co.jp/e-life/news/2024_0909_1.html)と、出足好調のようです。
BYDは、乗用車・バスとも日本に導入されているのは全てBEV(電気自動車)です。
電動回転式スクリーン
乗り込んでまず目に入るのは、15.6インチの大きなセンタースクリーン。同社のATTO 3やDOLPHINと同様、画面の縦横を電動で切り替えることができます。画面中央下のソフトウェアキーに加え、ステアリングスイッチに専用の縦横切り替えボタンも付いています。
画面を縦にしていても、電源OFFで横になります。デフォルトは横のようです。少し残念に思ったのは、どの画面(設定画面、ナビ画面、オーディオ画面など)でも、単に「縦横が変わるだけ」で表示内容は変わらない点。縦にするとナビ画面とオーディオ画面が上下分割表示できるなど、画面の縦横で表示内容も連動して変えられれば優位性がありそうです。今後のソフトウェアバージョンアップに期待でしょうか。
エアコン吹き出し口の向きは電動調整
最初に戸惑ったのは、エアコン吹き出し口の風向きを変えるレバー(吹き出し口中央にあるレバー)が見当たらないこと。答えは画面の中で、まさかの電動方式でした。かつてのクラウンでお馴染みだった「スイング」もできます。「エアコンが扇風機みたいに首振りするの、気に入っていたのになあ」という元クラウンオーナーの皆さま、BYDはいかがでしょうか。
PM2.5モニターと空気清浄機能
画面の右上には、常に現在の車外・車内PM2.5値が表示されています。しばらくの観察の結果、概ね車外のPM2.5値が20マイクログラム前後、車内はひと桁台を示していました。ところが、整備状況に問題のありそうなトラックの後ろに付いたところ、当初の車外20マイクログラムから794マイクログラムまで上昇。排気ガスの見た目に「問題のありそうな」車両は実際にも「問題がある」ことが可視化されました。
この後も車内のPM2.5はひと桁台を保っており、空気清浄能力の高さを実感。この機能、欲しいですねえ。
大型ガラスルーフ
SEALは天井がガラスルーフで、ガラス面積が大きくこのような都会の景色も楽しめます。
天井のほぼ全面といって良い大きさで、特に後席からは開放感がなかなか心地よいです。
ガラスはスモークですが、やはり陽射しが強いときはシェードを閉めたくなりますね。でも、シェード開閉スイッチが見当たらない。マップランプ周辺にもそれらしきスイッチがなく、音声アシスタントに「サンシェードを閉めて」と言っても反応なし。困っていたのですが、トランクを開けたら発見しました。まさかの手動。布袋に入ったシェードを手ではめる方式です。
助手席ISOFIXアンカー
このようにハイテクとローテクが混在するBYD SEALですが、小さいお子さんのいる方には注目のポイントを発見。助手席にもISOFIXタイプのチャイルドシートを装着できます。助手席に後ろ向きに装着する際に必要な、助手席エアバッグのOFFスイッチも装備されています。
助手席にチャイルドシートを装着することには否定的な意見も多いですが、助手席への装着が危険なのは「エアバッグがOFFにできない」「チャイルドシートをきっちり固定できない」のが要因であり、助手席という「場所」自体が危険なわけではありません。子育て期の乗せ方の自由度が高まるので、注目の装備かと思います。
乗ってみての印象
- BEVならではの静粛性
- 視界がスッキリしているためか、大きさをあまり感じさせず取り回しがよい
- 薄型バッテリーの恩恵でフロアが低く、特に後席の着座感が自然
- ラージセダンとして考えると、もう少し動き出しの重厚感が欲しい
まとめ
「今どきのクルマ」3車種に共通していたのは、「液晶画面が大きい」というとてもシンプルな印象でした。特にメルセデス・ベンツEクラスの「MBUXスーパースクリーン」はインパクトがありました。ただ、ADAS(高度運転支援システム)の動作状況表示や、よりわかりやすいナビゲーション表示、インフォテイメントなど、液晶画面に表示する内容が増えてきた結果、大きな画面にどのように表示すればより自然に理解できるかという点については、まだまだ今後の熟成が必要と感じます。
今回試乗していても、ナビゲーションの右左折の案内が凝っている割には曲がるべき場所がわかりにくかったり、「そこまで大きく表示されても邪魔なだけ」と感じたり、表示内容が充実した結果、「見せ方」が難しくなっているようです。また、画面上で使われているフォントの統一感、アイコンのデザインテイストなど、画面内でのデザインの統一感や洗練性の重要度も増してきていると感じました。
イードの自動車関連マーケティングリサーチ
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