UIデザイン改善のためのユーザビリティ評価

スマートフォンアプリやWebサイトなどのデジタル製品やサービスでの、ユーザー側とビジネス側、双方の目的達成には、UI品質をユーザー視点で評価し、ユーザビリティを向上させることが不可欠です。

UI開発プロセスでは、個々のUIの具体的な問題点の発見と向上のために、ユービリティを定性的に評価する方法が多く用いられます。代表的な方法としては、「ユーザビリティテスト」と「ヒューリスティック評価」が挙げられます。また、複数のUIの比較や、1つのUIに対する評価の変化を測定する場合には、ユーザビリティをアンケートで定量的に評価する方法を用いることもあります。

「ユーザビリティが高い・低い」とはどういうことか

国内規格JIS Z 8521:1999(国際規格ISO 9241-11:1998と同じ)では、ユーザビリティ(使用性)は以下のように定義されています:

ある製品が、指定された利用者によって、指定された利用の状況下で、指定された目的を達成するために用いられる際の、有効さ、効率及び利用者の満足度の度合い。

(引用者注:ISO 9241-11:1998の「goal」は、JIS Z 8521:1999のこの文中では「目的」と訳されていますが、他の箇所では「目標」と訳されています)

この文で用いられている用語は以下のように定義されています:

利用者
製品とやりとりする人間。
利用の状況
利用者、仕事、装置(ハードウェア、ソフトウェア及び資材)、並びに製品が使用される物理的及び社会的環境。
目標
意図している結果。
有効さ
利用者が、指定された目標を達成する上での正確さ及び完全さ。
効率
利用者が、目標を達成する際に正確さと完全さに関連して費やした資源。
満足度
不快さのないこと、及び製品使用に対しての肯定的な態度。

(JIS Z 8521:1999より)

つまり、利用を想定されていない人が、想定外の状況と目的で利用して「これは使いやすい/使いにくい」ということはユーザビリティではないのです。まず、そのアプリやWebサービスの「ユーザー」「状況」「目的」を明確にすることが必要なのです。その、特定の「ユーザー」が特定の「状況」において、やりたいことが効率よくできるか、そして、「嫌な思いをしないか」「また使いたいと思えるか」といったことがユーザビリティなのです。

ユーザビリティを取り巻くISO規格についての詳細は「ユーザビリティの関連規格」をご覧ください。

ユーザビリティを左右する要素

ユーザビリティの権威であるヤコブ・ニールセン博士は、UIのユーザビリティは、以下の5つの特性からなる、多角的な構成要素を持っているとしています:

学習しやすさ
システムは、ユーザーがそれを使って作業をすぐ始められるよう、簡単に学習できるようにしなければならない。
効率性
システムは、一度ユーザーがそれについて学習すれば、後は高い生産性を上げられるよう、効率的な使用を可能にすべきである。
記憶しやすさ
ユーザーがしばらくつかわなくても、また使うときにすぐ使えるよう覚えやすくしなければならない
エラー発生率
システムはエラー発生率を低くし、ユーザーがシステム試用中にエラーを起こしにくく、もしエラーが発生しても簡単に回復できるようにしなければならない。また、致命的なエラーが起こってはいけない。
主観的満足度
システムは、ユーザーが個人的に満足できるよう、また好きになるよう、楽しく利用できるようにしなければならない。

(『ユーザビリティエンジニアリング原論』より)

「学習しやすさ」「記憶しやすさ」「エラー発生率」の3つは、後者(ヤコブ・ニールセン博士)の定義にしかありません。一方、「効率(性)」と「(主観的)満足度」の2つは、前者(JIS Z 8521/ISO 9241-11)と後者(ヤコブ・ニールセン博士)のどちらの定義にも共通して存在しています。

ユーザビリティが低いと、どんな問題があるのか

ユーザビリティが低いと、ユーザーにとってどのような問題があるのでしょうか。ネットショッピングサイト/アプリを例にとって考えてみましょう。

  • 期待した商品が思っていたカテゴリーに入っておらず、いくつも開いてみる手間がかかった。
  • 商品詳細の書き方が統一されておらず、候補の商品同士の比較がしにくかった。
  • 支払方法や配送先などを入力しているとエラーが出てしまい、何度もやり直した。
  • 思ったとおりに注文できたのか、確認する方法がわからず、不安になった。

このように、「うまくいかない」「効率が悪い」ことから面倒くささやストレスを感じて、最後までたどり着けずに途中でやめてしまったり、最後までたどり着けてもそのサービスに対する印象が悪くなってしまったりする恐れがあります。

ユーザーが利用する際にこのような問題に遭遇した結果、購入率やリピート率が期待どおりにならないという、ビジネス側の問題が発生してしまうのです。

裏を返せば、ユーザビリティを向上させる(ユーザーのやりたいことが効率よく達成できるようにする)ことが、ビジネス側の目的達成にもつながってくる、ということなのです。

ユーザビリティが低いUIが出来てしまう理由

UIを利用していて、ユーザーが「使いにくい」「使い方がわからない」「間違える」状況に陥ってしまうのは、そのアプリやWebサービスの設計担当者と、それを使うユーザー、双方の常識・期待・思考のギャップが原因です。

アラン・クーパーは、その著書『About Face 3-インタラクションデザインの極意』の中で、以下の3つのモデルについて解説しています:

実装モデル
エンジニアによって実装されたプログラムが、実際に動作する仕組み
表現モデル
プログラムの動きをユーザーに対して表現するために選ばれた方法(≒UI)
脳内モデル
ユーザーがプログラムについて、単純化して認識している内容

現在のアプリやWebサービスには多くの機能があります。また、エンジニアがアプリやWebサービスを構築する方法は、技術上・業務上の制約によって選択の余地が限られていることもあり、アプリやWebサービスの実装モデルは大変複雑なものになっています。

一方、ユーザーは、UI(表現モデル)を通して、そのアプリやWebサービスに何ができるかを理解し、操作し、意図したとおりに動作したのかしなかったのかを判断しながら脳内モデルを構築します。ユーザーは、背後でどのようにプログラムが動いているのかを理解していません(理解する必要もありません)。

エンジニアではないユーザーに、背後にあるプログラムの挙動(実装モデル)を反映しただけの複雑なUI(表現モデル)を提供しても、ユーザーはそれを理解できず、使いこなすことができないのです。

ユーザーにとって使いやすいアプリやWebサービスにするには、それらを利用するユーザーの行動を観察してその脳内モデルを理解し、それに沿ったUIを作る必要があるのです。

インタラクションとは

UIに似た言葉として「インタラクション」というものがあります。インタラクションとは、ユーザーの操作・動作と、システムの変化・反応という、具体的な「やりとり」のことです。インタラクションデザインとは、ユーザーの操作・動作に対して、どのようにシステムを変化・反応させるかを設計することです。

黒須正明教授は、インタラクティビティという概念を次のように説明しています:

対話性(interactivity)という概念は、日本語では「やりとり」と考えれば理解しやすい。「やり」があり、それに対する「とり」がある。これは人工物に対する入出力ということである。すなわち、人工物に対する人間の操作や動作があり、それに対する人工物の変化や反応がある。人工物の変化や反応は、明確な場合もあれば、そうでない場合もある。また明確な変化や反応は、次の操作や動作を要求している場合もあり、そこに操作の系列が発生する。

(『ユーザビリティ ハンドブック』より)

インタラクションの例

たとえば、「ユーザーがフォームに情報を入力してボタンをクリックすると、その情報の確認画面が表示され、ユーザーがさらにボタンをクリックすると、その情報が送信されて『送信が完了しました』というメッセージが表示される」といったこともインタラクションと言えます。

以前のWebサイトでは、ユーザーがフォームに入力した情報がサイト設計者の想定どおりかどうかは、次の確認画面が表示されるまでわからず、エラーメッセージが表示されなくなるまで入力フォーム画面と確認画面を行き来しなければならず、非効率で、ユーザーが途中で諦めてしまう可能性も高いものでした。

しかし、現在のWebサイトでは、ユーザーがフォームに入力した情報が設計者の想定と異なっていると、入力したその場で変更を促すメッセージが表示され、設計者の想定どおりの情報に変更されればそのメッセージは消えるようになり、ユーザーが作業を効率的に完了しやすくなりました。

ただ、そうやって技術的には即座にフィードバックできたとしても、設計者の想定どおりの情報をユーザーに入力してもらうには、メッセージの内容やタイミングを含めた見せ方が適切でなければなりません。

時間軸を意識したデザインを

UI (User Interface)のインターフェースとは、「面」のことで、ユーザーとシステムの間をつなぐものです。インタラクションとは、UIを通じた「やりとり」のことで、二者がお互い反応(変化)していくものです。

通常、インタラクションは画面を1回操作するだけでは完結しません。ユーザーとシステムの反応の繰り返しですから、画面という1つの平面だけで考えるのではなく、時間軸を意識してデザインする必要があります。

ユーザビリティを評価する方法

では、ユーザビリティを向上させるためには、どのようにしたらいいのでしょうか。

そのためには、まずその製品・サービスの「ユーザー」「状況」「目的」を明確にして設計した上で、本当にうまくいくのか、そのユーザーと状況で目的達成できるのか確認(評価)する必要があります。

ユーザビリティを評価する方法には、評価の目的や実施の制約条件に応じて、いくつかの選択肢があります。

ユーザビリティテストとは、リアルなユーザー行動からユーザービリティ上の問題の所在と原因を特定する方法です。評価対象物を見るユーザーの目の動きをアイトラッカーを用いて把握することもあります。

ヒューリスティック評価とは、経験則やガイドラインに基づいてユーザビリティを評価する方法です。コスト・期間の制約や評価範囲の広さなどによりユーザービリティテストの実施が難しい場合に適しています。

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ユーザビリティテスト

ユーザビリティテストとは、製品を利用するユーザー行動を観察することで、UIのユーザビリティ上の問題の所在と原因を特定する方法です。

特定の状況下でユーザーに製品の実物やプロトタイプを利用してもらい、そこで観察された行動や発話から、UI上のどの部分に問題があるのかや、なぜその問題が起きたのかを把握します。

ユーザビリティテストとは

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アイトラッキング調査

アイトラッキングとは、人間の視線の動きを追跡・分析する方法です。これにより、見られていない箇所を正確・客観的に把握できます。

たとえば、「UI要素のレイアウトが適切か」をテストする際、アイトラッカーを用いることで、ユーザーが画面のどこを見て、どこを見ていないのかを客観的に把握することが可能です。

アイトラッキング調査とは

図

ヒューリスティック評価

ヒューリスティック評価とは、経験則に基づいてユーザビリティを評価し、UI上の問題を発見する方法です。

ユーザーの協力が不要なため、柔軟な評価範囲・短い評価期間で、コストを比較的安く抑えられます。また、ユーザーには理解しにくい、仕様書やごく初期のプロトタイプでも評価できます。

ヒューリスティック評価とは

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ウェブユーザビリティ評価スケール

ウェブユーザビリティ評価スケールとは、ウェブユーザビリティを定量的に評価するためのアンケート手法です。

Webユーザビリティに関する21項目の5段階評価質問を行い、7つの評価因子でユーザビリティを評価します。競合のWebサイトとの比較や、同一サイトの経時変化の測定に利用できます。

ウェブユーザビリティ評価スケールとは

ユーザビリティ評価・向上には、専門性と客観性が必要

ユーザーの思考・行動を理解し、製品・サービスの価値をユーザーに理解してもらえるUIにしていくには、「ユーザーの思考・行動やUIに対する深い知識」「ユーザビリティ評価の豊富な経験」という専門性と、製品・サービスを客観的に見る目を持った人材です。

ユーザビリティ評価の弊社実績

市場調査会社としてスタートした弊社リサーチ事業部門は、ユーザビリティ評価・UI改善の分野で15年以上の実績があります。調査経験豊富な人材が揃っていますので、ぜひご相談ください。

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