ユーザビリティ・HCDの定義

ユーザビリティは、日本語では「使いやすさ」と訳されています。しかし、この「使いやすさ」を定義するのは、大変難しいと考えられています。なぜならば、製品の性格やその製品を使うユーザー、その製品をユーザーが使う利用状況などによって、「使いやすさ」は様々に変化するからです。さらに、あらゆる製品は新しい機能が備わったり、新しいデザインになったり、日々進化しつづけています。製品の進化に伴って、「使いやすさ」も進化しなければなりません。

このような理由から、最近では「使いやすさ」とは、製品開発をユーザの視点で行い、製品の「使いやすさ」を考慮した製品開発プロセスを継続することそのものであるとの見解も出てきています。そのような動きの中でも、認知度の高いユーザビリティの定義をいくつかご紹介いたします。

ユーザビリティの定義

ISO 9241-11/JIS Z 8521における定義

ISO規格・ISO 9241-11は、ユーザビリティの定義を行い、ユーザーの行動と満足度の尺度によって、ユーザビリティを規定又は評価する場合に、考慮しなければならない情報を、どの様にして認識するかを説明している国際規格です。ISO 9241-11は、JIS Z 8521としてJIS規格となっています。

Usability (使用性):

Extent to which a product can be used by specified users to achieve specified goals with effectiveness, efficiency and satisfaction in a specified context of use.
ある製品が、指定された利用者によって、指定された利用の状況下で、指定された目的を達成するために用いられる際の、有効さ、効率及び利用者の満足度の度合い。

Effectiveness (有効さ):

Accuracy and completeness with which users achieve specified goals.
利用者が、指定された目標を達成する上での正確さ及び完全さ

Efficiency(効率):

Resources expended in relation to the accuracy and completeness with which users achieve goals.
利用者が、目標を達成する際に正確さと完全さに関連して費やした資源

Satisfaction(満足度):

Freedom from discomfort, and positive attitudes towards the use of the product.
不快さのないこと、及び製品使用に対しての肯定的な態度

Context of use(利用の状況):

Users, tasks, equipment (hardware, software and materials), and the physical and social environments in which a product is used.
利用者、仕事、装置(ハードウェア、ソフトウェア及び資材)、並びに製品が使用される物理的及び社会的環境

『ユーザビリティエンジニアリング原論』における定義

ウェブユーザビリティの権威であるJakob Nielsen博士が、その著書『Usability Engineering』(日本語訳『ユーザビリティエンジニアリング原論』)のなかで語っているユーザビリティの定義をご紹介します。

Jakob Nielsen博士は、その著書の中で、システムの受容性を最上位概念とし、その下位概念としてユーザビリティが存在するとしています。「システムの受容性とは、システムがユーザおよびそのクライアントや管理者すべてのニーズと要求を満たしているかどうか」ということです。

ユーザインターフェイスのユーザビリティは、5つのユーザビリティ特性からなる多角的な構成要素をもっているとしています。

学習しやすさ(Learnability)
システムは、ユーザがそれをすぐ使い始められるよう、簡単に学習できるようにしなければならない
効率性(Efficiency)
一度学習すれば、あとは高い生産性を上げられるよう、効率的に使用できるものでなければならない
記憶しやすさ(Memorability)
ユーザがしばらくつかわなくても、また使うときにすぐ使えるよう覚えやすくしなければならない
エラー(Errors)
エラーの発生率を低くし、エラーが起こっても回復できるようにし、かつ致命的なエラーは起こってはならない
主観的満足度(Satisfaction)
ユーザが個人的に満足できるよう、また好きになるよう、楽しく利用できなければならない

繰り返しになりますが、ここでご紹介しているユーザビリティ特性は、すべてのユーザーにあてはまるものではありません。Jakob Nielsen博士も「同じシステムを違うユーザが違う作業に使えば、対象とするユーザビリティ特性も違うという結果になりかねません。(中略)ユーザビリティ測定はテスト作業の形態、つまりどのユーザビリティ特性を測定するのかを決定するところからスタートするのです」といっています。

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ユーザ工学における定義

ユーザ工学とは、マーケティング、品質管理と並んで、製品の魅力を高めるための「使い勝手」を考えた製品開発という方法を提供するものです。放送大学および総合研究大学院大学教授の黒須正明氏が代表的提唱者です。

ユーザ工学は、実用的な受容可能性の中の有用性(usefulness)を目標としています。これは、日本語の「使い勝手」という言葉に対応するとされています。この有用性の中に含まれている特性の内のひとつがユーザビリティなのです。有用性を構成するもう1つの要素はユーティリティ(utility)であり、これは、製品の機能や性能に対応します。これは、上記でご紹介していますJakob Nielsen博士の考え方がベースになっているそうです。

ユーザビリティには、操作性(取り扱いのしやすさ)、認知性(分かりやすさ)、快適性(心地よさといった下位概念が含まれているとしています。

従来の製品開発は、ユーティリティ重視になりがちでしたが、人間中心設計の考え方の広まりや、製品の機能飽和、IT化の流れがユーザビリティへの注目を高める要因になっています。

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Jackob Nielsen博士や黒須教授が提唱しているユーザビリティの考え方は、ISO 9241-11よりも狭い範囲になっていると考えてよいでしょう。

HCDの定義

人間中心設計(HCD)が初めてISOで定義されたのは、1999年のISO 13407 “Human-centred design processes for interactive systems”です。これは2000年に、JIS Z 8530「人間工学-インタラクティブシステムの人間中心設計プロセス」として翻訳されました。

そこでは、以下のように記されています:

人間中心設計は、システムを使いやすくすることに特に主眼をおいたインタラクティブシステム開発の一つのアプローチである。それは、ヒューマンファクタ及び人間工学の知識、更に技術を組み合わせた多様な職種に基づいた活動である。ヒューマンファクタ及び人間工学をインタラクティブシステムの設計に適用することによって、効果と効率を向上させ、人間の作業条件を改善し、更には人の健康、安全及び達成度に与える仕様上の悪い影響を緩和することができる。システムの設計に人間工学を適用することは、人の能力、技能、限界及びニーズを考慮することも含んでいる。

その後、ISO 13407は、2010年にISO 9241-210に改訂されました。そこで定義された人間中心設計活動の関係性は以下の図のとおりです(ISO 9241-210は、2015年11月現在、JISとして翻訳されてはいません):

人間中心設計活動の相互依存性
人間中心設計活動の相互依存性

 


ユーザビリティとは 目次

  1. ユーザビリティ・HCDの定義
  2. ユーザビリティの評価手法
  3. ユーザビリティの関連規格

公開:2011年3月10日
著者:U-Site編集部