デザイナーとしての顧客

  • 産業革命は大量生産品を生んだ。そこでは、誰もが同じものをあてがわれる(有名な話にこんなのがある。T型フォードの色は、お好み次第。ただし、あなたが黒が好きな場合に限る)。
  • インターネット革命は、注文生産の台頭を促すだろう。たったひとつしかない自分専用の製品を誰もが入手できるのだ。

顧客が製品をデザインできるようになるには、コンピュータを通じて、ユーザインターフェイスと製造工程を直結できなくてはならない。製造過程では、その製品がどの顧客に向けて作られているのか、顧客の指定した仕様は何か、といったことをコンピュータが管理していて、製造工程の製品を追跡し希望の配送先に直接届けられるようになっている。在庫はない(注文生産のビジネス上のメリットのひとつ)。例を挙げよう。

  • コンピュータは、注文生産のもっとも古典的な例だ。ほぼすべてのPC製造業者が、ユーザの望みどおりの仕様での注文を受け付けている。
  • コンパクトディスク。膨大なデータベースから選び出した曲を、注文に応じてそのつど焼き付ける。
    • 好きな曲を自分で選んで購入
    • 自分と受取人、両方の趣味を反映したギフトとして

    ギフトをデザインしたのはあなたなので、贈り物としては、お店で買えるどんな品物よりも強力だ。感情的にもより重要なものになりうる。例えば、状況にぴったりあったラブソングを集めたCDを作れる。

  • あなた自身の相互積み立てとしての保険プラン。製造、配達されるような製品よりも、目に見えない製品こそ、個人顧客が自らデザインする製品となる可能性が高い。

コンフィグレーター

ユーザ主導の製品デザインで現在標準的なユーザインターフェイスは、コンフィグレーターである。たいてい、各々がひとつの変数に対応した長大なプルダウンメニューという形で提供される。

こういったコンフィグレーターは貧弱だ。

  • 操作がわずらわしい(プルダウンメニューは、不愉快なユーザーインターフェイス部品だ)
  • 他の選択肢を明確に表示しないので、違ったデザインを比較しにくい
  • それぞれのオプションについての説明もなければ、デザイン上の問題領域について何も教えてくれない(状況感知型のヘルプも、たいていごく一部の助けにしかならない)
  • あいまいな選択肢が次々に現れるので、初心者ユーザは混乱し、途方に暮れることが多い。

こういった欠点があるにも関わらず、コンフィグレーターはよく知られていて、ウェブ上で広く通用する慣習となっている。明らかに優れたデザインができるのでないかぎりは、すでに標準があるのなら、それに従うべきだ。ちょっと賢いところを見せようというだけの理由で、やり方をむやみに変えるべきではない。自分のやりたいことが標準的なやり方でできないと、ユーザはなおさら混乱する。

コンフィグレーターを利用するのは難しいと思われるので、厳格なユーザビリティテストを行うよう、私は強くお勧めする。そして、デザインを何回かやり直すことを見込んで、プロジェクト計画には余裕を持たせておくこと。

ユーザビリティに配慮すれば、eコマースサイトでは売上が100%、あるいはそれ以上の伸びるのが普通だ。だが、コンフィグレーター主体のサイトなら、ユーザビリティに重点を置くことで、少なくとも500%の売上向上が望めるだろう。さらに重要なのは、これによって、90%以上返品が減るということだ。デザイン間違いの製品をほとんどなくすことができるからだ(エラー率でいえば、1000%の向上となる)。

(ユーザビリティによって得られるEコマースの売上増加については、十分なデータの裏づけがある。私の唱える原則のおかげで得られた売上増加率として、これまでの最高記録は2500%である。だが、この数字は典型的とは言えない。数100%といったところが、むしろ普通だ。残念ながら、コンフィグレーターのユーザビリティを改善することで、売上にどういう影響が現れるかということについては、信頼に足るデータを持っていない。それゆえ、上に述べた数字は私の大まかな予測値である。複雑なデザインにおいて、エラー率と親しみやすさはどれくらい改善できるものなのかを踏まえた上での数字だ。)

編集せよ:デザインしようとするなかれ

タイプライターにはさまった1枚の白紙が、作家のスランプの元になる。

同様に、ゼロから製品をデザインするのはたいへんな仕事だ。脅迫的な挑戦であり、間違いも起こりやすい。ほとんどのユーザにとっては、無理な難題だ。彼らがプロの製品デザイナーでないのには、理由があるのだ。

一から何かを作り上げるよりは、すでにあるテンプレートを利用して、これに変更を加えていく方がはるかに簡単だ

ユーザに見せるものはなるべく制限し、あらかじめデザイン済みのテンプレートを少数用意しておくこと。

  • デザイン領域を見渡せるようにしよう
  • 選択の幅がどれくらいあるか具体的に説明しよう
  • ユーザ自身のデザインの出発点になるものを提供しよう

あまりにもたくさんのデザインを提示すると、ユーザは最初の選択プロセスに圧倒されてしまい、それ自体ユーザビリティ上の問題となる。

デザインインターフェイスでは、最大公約数的な変更点に重点を置き、副次的な選択肢は「上級者」、あるいは「追加機能」エリアに追い込もう。あらゆるものに同じ重みを与えてしまうと、初心者デザイナーには、どこから手をつけていいかわからないだろう。

エキスパートシステムとデザインアドバイザー

将来的には、顧客主導のデザインをエキスパートシステムがサポートするようになるだろう。1980年代中ごろの熱狂にも関わらず、人工知能は、実現不可能の役立たずと評されるようになってしまった。大体において、この評価は無理もない。自然言語を完全に理解したり、読みやすいテキストを作成する翻訳システムを実現したりするには、まだ長い時間がかかるだろう。

エキスパートシステムはAIの一形態だが、ウェブ上では今すぐ役に立つ可能性がある。初期の実例のひとつとして、VAXコンピュータを設定するためにDigital Equipmentが作ったXconシステムが挙げられる。同様のアイデアは、以下のものに応用可能だ。

  • ユーザのデザインについて助言する
  • ユーザが取るべき次のステップをガイドする
  • そのデザインが引き起こす可能性のある問題について、ユーザに注意する

2000年6月11日