2001年のWeb:
有料顧客

ウェブサイトでのサービスの無料提供は、持続可能なビジネスモデルとはいえない。同様に広告もウェブではうまくいかない。ほとんどのインターネット企業が今、利益を出そうとして対企業戦略に活路を求めているが、遠からぬうちに、個々の顧客を収入源として見直すようになるだろう。

お約束にしたがい、年末の予想をするとしよう。2001年には、ウェブサイト運営者たちの間に合意が形成され、サービス料を顧客から徴収するようになるだろう。かなり困難な変革である(ユーザは無料サービスにすっかり慣れっこになってしまっている)から、2001年が終わるまでに、大部分のウェブサイトが有料化するとは私も思っていない。ウェブビジネスモデルとして、有料顧客コンセプトの復活を予想しているのだ。

モデルの進化

ウェブの初期には無料にすることにも意味があった。

  • 1991年から1993年にかけて、ウェブは学術的コンテンツが支配的だった。大学の教授には、自らの調査結果を無料で公開する長い伝統がある。引き換えに、他の同僚の調査結果へアクセスできるようになるわけだ。
  • 1994年から1996年にかけて、ウェブは大部分が販売促進で占められており、企業の体面をよくすることを唯一の目的に立ち上げられたマーケティングサイトであふれていた。お金をとってマーケティング資料を見せるというのは不公正(かつ非生産的)だ。

しかしながら、1997年以降、ウェブは徐々に真の経済へと進化してきた。本物のサービス、本物のコンテンツが提供され、そのうちかなりの部分は、実際に有益で、興味深いものである。

しっかりしたビジネスモデルなしに新経済のインフラを構築してしまったことは、ウェブ発展の初期における最大の過ちである。お金抜きでどうやって経済が成り立つというのだろう?まったく無料のウェブでは、長期存続は不可能である。

広告を乗り越える

1997年から主張しているように、ウェブでは広告は成り立たない。なぜなら、それはユーザの行動に反するものだからだ。目的志向が強いのである。2000年終盤の今、私が以前に発表した分析をさらに補強するようなトレンドが明らかになっている。

  • 広告収入に依存したビジネスプランでは、資金を調達できなくなっている。
  • ウェブベースの広告代理店は縮小の傾向にある。
  • クリック率はさらに低下を続けており、ユーザテストにおいても、ユーザのバナー無視の傾向はあいかわらず顕著だ。広告のように見えるというだけで、ユーザは有用なページ要素までクリックしなくなってしまう。

1997年以降、だいたい2000年中ごろまでの間に、お人よしの投資家から巻き上げた資金をあてにしたビジネスモデルでは、インターネットサービスは構築できなくなってしまった。もはやこのやり方は通用しないので、現在では顧客からお金を取るという方向へ焦点がシフトしてきた。ビジネスを成立させることを考えるなら、よほど健全なやり方である。

ウェブサイトがお金を稼がなくてはならない、というのはユーザビリティにとってもまたとないニュースである。傲慢かつ無益なデザインが何年も生き残ってこられたのは、ひとえに、投資家をなだめすかして追加資金を得るのに役立ったということだけがその理由だ。ユーザビリティがトラフィック、顧客ロイアリティ、それに売上につながることは明らかだが、シンプルにするとデモの時にはぱっとしない。

ここ数ヶ月の間に、大部分のインターネット企業が対企業戦略を発表し、2001年にはこれで儲けるつもりだということを明らかにした。これはユーザビリティにとって、なおさら喜ばしいニュースである。対企業の売上を上げるつもりなら、タスク分析と生産性向上に集中する必要があるからだ。

多数の席料を1枚の請求書で徴収する対企業の売上に加えて、ウェブサイトには、他にも2つの収入源がある。

  • 熱心な個人客。長期契約でサービスに加入してくれる。
  • 衝動買い。個々の記事、あるいは特定のサービスを1回単位で購入する。

インターネットのおかげで、少量の取引とすばやい決断が簡単にできるようになった。熱心な加入者を得られればそれに越したことはないが、ユーザはそう簡単に夢中にはなってくれない。まずはサービスを試してみて、個々のアイテムをいくつか買ってみるというのが普通だ。

次なるステップ

衝動買いをあてにしようというウェブサイトは、ユーザが簡単に支払えるようにしておかなくてはならない。このために必要なインフラが、まだ出現していない。加入申込みや、顧客認証、その他、何100万件もの1ドル単位の購入に関わる実際的側面をさばくためには、マイクロペイメントやアプリケーションサービスプロバイダが必要である。

ウェブがこれだけ大きくなった今となっては、急速なインフラの改善は望めそうにない。よって、2001年中に、大部分のインターネットサービスがユーザを顧客に変えるようになるとは思わない。だが、来年は間違いなくその出発点になるだろう。変革を遂げるサイトが数多く現われ、より多くのサイトがこれを検討するようになるはずだ。

2000年12月24日