億万長者への道:
インターネット株式評価と未来のユーザ像

取引初日(1999年1月15日)のMarketWatch.comの株式市場評価は、10億ドルに達した。インターネット株が過大評価されているということは、私たち誰もが知っている。だが、MarketWatchの評価額は、現実歪曲などという生やさしいものではない。あれは現実否定だ。

Fidelity、Schwab、それにVanguardが財務ニュースサイトを構築するのは簡単だ。ユーザにとっても価値が高い(口座と連動させることができるから)し、企業にとっても価値がある(その価値のいくらかは口座の取引関係を通じて得られるからだ)。さらに重要なのは、だまされやすい投資家から10億ドルかすめとるつもりなら、誰だってもっとマシなサイトを、もっと速く作れたはずだ。

投資家が特に気に入ったのは、MarketWatchがCBSでのマーケティング権を3000万ドル分、獲得したことだ。The New York Timesによれば、あるアナリストはこう語ったそうである。「この広告取引の価値は計り知れない」。3000万ドルに価値がないとは私も言わない。だが、CBSから得た3000万ドルは2700万ドルの価値しかないとは言っておこう。10%割り引いたのは、マーケティング予算を特定のメディアで消費せざるをえなくなるという点で、価値が減ってしまうからだ。気の利いたマーケティング責任者なら、同じ予算を選び抜いたメディアで使うだろう。それは、著名な投資家へのダイレクトメールや、投資雑誌の折り込み広告といった形になるはずだ。

気をつけて欲しい。私はMarketWatchがダメなサイトだとは言っていない。それどころか、今日のウェブではいいサイトといってもいいくらいだ(ただし、手離しで誉めるほどでもでもない)。彼らのホームページは少しゴチャゴチャしているし、寄稿しているライターも、印刷分野での経験は豊富なようだが、オンラインメディアではそれほどでもないらしい。というのは、コンテンツのほとんどがウェブでの文章作法ガイドラインに反しているからである。MarketWatchには、おそらくそれなりの価値はあるだろう。それでも、私は払う気はしないが。

私はインターネットの価値を信じているし、この先10年のうちに、ウェブ主体の企業が、伝統的な企業をコテンパンにやっつけるだろうと信じて疑わない。やがてはウェブの収入が毎年約1兆ドルに達するだろうと私が予想したのは、かれこれ2年程前のことである。だが、この価値のほとんどは、何100万もの小さな専門サイトに分散されるだろうとも予想した。大手サイトは、小規模サイトよりはるかに大きくなる。ウェブはZipf分布の傾向があるからである。だが、トップ争いはより激しくなるので、現在の評価額を正当化するほどの金額は稼げないだろう。

思い出して欲しい。ウェブはまだ若いのだ。現在のウェブには約1億5000万人のユーザがいる。やがては10億人(どの予想を信じるかによって5年後~10年後まで幅がある)に達するだろう。ということは、8億5000万のユーザはまだオンラインになっていないのだ。これほどたくさんの新規ユーザが、現在のユーザと同じサイトを使うとは限らない。実際、遅れて来る人たちは、現在の先進ユーザたちと嗜好性が違ってもおかしくない。よって、現在の市場シェアからは、サイトの未来のユーザベースは予測できないのである。(先進ユーザと後進ユーザでは、デザイン面でどういう違いが現れるかについては、私のパートナーの著書「The Invisible Computer」で詳細に論じられている)

Yahooはベストデザインサイトのひとつであり、現在、最大のトラフィックを集めている。だが、その技術はウェブと同じ速さで拡大するわけではない。ウェブの道案内なら、最近ではGoogleが最高だ。私は、YahooがGoogleの猛攻撃をうまくかわせるのではないかとにらんでいる。道案内以外にもたくさんのサービスがあるからだ。だが、Stanfordの学生が、ウェブの先端サイトを上回るサービスを構築できるという事実は、ウェブはもう固まってしまったと思っている人にはよい警告になるだろう。

Red Herringの報道によれば、MarketWatchの9月のユニークビジター数は200万人、ページビューは4500万に達したが、1998年3月には78万5000ビジター、3800万ページビューだった。この数字によると、もともとのユーザは平均して1日あたり1.6ページ見ていた計算になる。大部分がロイアリティの高いユーザとすれば、かなり満足できる数字だろう。120万の新しい「ユニーク」ユーザは、平均して、1日あたりたった0.2ページしか見ていないから、ただの通りすがりである確率が高い。広告につられたものの、サービスは利用しないことに決めたのだろう。

アナリストの中には、200万という「ユニークビジター」数に感銘を受け、この評価額が10億ドルということは、「ユニーク」ユーザひとりあたりは500ドルの計算になるという人もいる。しかし、この中には単にホームページを1度覗いて見ただけで、結局、他の財務サイトに行ってしまった人も含まれているのだ。「ユニークビジター」や「リーチ」といった指標には意味はないロイアリティの高いユーザだけが重要なのだ。

恐らく私の読者約1万人も、この記事のトップにあるMarketWatchのリンクをたどってみるはずだ。ということは、このAlertboxが、500万ドルの市場価値をMarketWatchに加えていることになる。きっと歓迎してくれるに違いない。繰り返しておくが、なかなかいいサイトではあるのだ。実際、MarketWatchにはインターネット株の狂乱に関して役に立つ記事がいくつか掲載されてもいる(とはいえ、文章作法は本当に印刷用のものだが)。

1999年1月17日

公開: 1999年1月17日 (原文:1999年1月17日)
著者: Jakob Nielsen
原文:Give me your billions: Internet stock valuation and future user characteristics

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