Webサイトを補完するEメール

ユーザはニュースレターに対して非常に感情的な反応を示す。ウェブサイトよりも、ずっとパーソナルな感じがするからだ。ユーザビリティ・テストでは、講読および講読解除のタスクは高い成功率を示した。だが、あまりに時間を取られるニュースレターには不満を感じている。

最近私たちは、10 種類のEメールニュースレターを対象にユーザビリティテストを行った。その結果のうちもっとも重要なのは、ユーザがニュースレターに対して非常に感情的な反応を示すということだ。これはウェブサイトユーザビリティの調査とは好対照をなしている。あちらでは、機能性の方がはるかに重視される。毎日訪問するウェブサイトですら、できるだけ早く要件を済ませて、さっさと離れたいと思うのだ。そのサイトに共感を持つなんてことはない。

ニュースレターがよりパーソナルな感じがするのは、それが受信箱に直接届くからである。継続的な関係を結んでいるのだ。反対に、ウェブサイトは何か用事がある時や、わからないことを調べる時に眺めるものである。

ニュースレターが持つポジティブな感情的側面として、これによって、ウェブサイトよりもはるかに強い絆を、ユーザと企業との間に形成できるという点が挙げられる。ネガティブな側面としては、ユーザビリティに問題があると、顧客との関係に、通常よりもずっと大きな影響を与えるということだ。

例えば、あるユーザは「Eメールアドレスは無効です」というエラーメッセージを受け取った。どんなユーザインターフェイスであっても、これはお粗末なエラーメッセージというしかないが、ニュースレターの喚起する感情的側面のせいで、ユーザの怒りはさらに大きくなった。「私のが、他の人のとどう違うっていうんですか![…] サイバースペースでの私の存在を否定されたような気持ちです」

表面的なユーザビリティは高い

テストユーザたちは、ニュースレターの講読と講読解除という今回の調査の中で、前例のないほど高度なタスク達成率を示した。講読は 78 %、講読解除は 92 %である。ウェブデザインの他の分野でのユーザビリティ調査では、達成率がせいぜい 50~60 %であることを考えると、ニュースレターユーザビリティの達成率は信じられないほど高い。とはいえ、これですら、真に優れたユーザ体験と言えるレベルには及ばないのだ。

この達成率にもとづくと、現在 5 万名の購読者を持つニュースレターは、購読用インターフェイスを正しく修正することで、さらに 1 万 4000 名の講読者を追加できるという計算になる。

ニュースレター調査でこれほど高い達成率が出たのは、恐らく次の 2 つの要因によるものだろう。まず、機能が単純だということ。メーリングリストに加入するか、脱退するか、それだけだ。実際、失敗事例の多くは、より複雑な機能を提供しているウェブサイトで起こった。例えば、ニュースレターの講読とサイトへの登録を一体化させているような場合だ。一般的に、機能がシンプルであれば、ユーザインターフェイスをシンプルにすることはたやすい。

講読プロセスのユーザビリティが比較的高い理由の 2 つめは、ニュースレターデザインの責任が非常に明確であることである。ウェブデザインの他の分野では、プロジェクト責任者たちが自己欺瞞に陥り、上司をもあざむいて、スプラッシュページのようなユーザに敵対的なデザインにも、なんらかのメリットがあると思い込む恐れがある。欲しいものが見つからないデザインでも、ページビューは上がる可能性があるのだ。その企業との取引をあきらめて離れていく前に、ユーザは、あちこち迷ってウロウロしてくれるからだ。ニュースレター講読のデザインでは、ユーザが講読するかしないか、どちらかしかない。後者の場合、遅かれ早かれ、ウェブサイト側は自らの行き過ぎたデザインをトーンダウンして、シンプルさに注力するようになるだろう。そうすれば、講読数は上がる。シンプルなデザインを複雑なものに置き換えるようなことをすれば、すぐに新規講読数の低下につながるので、以前のデザインに戻そうということになるだろう。失敗したデザインは、高くついたユーザビリティの授業料と思うしかない。

意識上のユーザビリティは低い

テストセッション時、92 %もの確率で講読解除ができたにも関わらず、必要がなくなってもメーリングリスト解除の手続きをとろうとすらしないユーザは数多い。

講読解除しようと思わない理由は 3 つある。

  • ニュースレターへの感情的愛着。すでに配信物を読まなくなっている場合でさえ、関係を断ち切ってしまうのは心地が悪い。
  • ウェブサイトユーザビリティへの期待値の低さ。講読解除は、難しくて時間がかかるに違いないと思われている。そこで、いつかそのうちにやることにして、さしあたりニュースレターの最新号を削除するのだ。
  • 講読解除がうまくいかないかもしれないという恐怖感があって、かえって、もっとたくさんのメールが来ることになるのではないかと思われている。スパムリストに登録解除を依頼しても、自分のアドレスが生きていることをスパム業者に知られるだけにしかならない、という話が広まっている。この話は、すっかり都市伝説と化していて、彼らのメンタルモデルはすっかり傷ついてしまっている。合法的なニュースレター運営者までが疑われているのだ。

どんな理由があるにせよ、メーリングリストのオーナーは、購読者の全員が、本当にニュースレターの配信を希望しているとは限らないことを思い知るべきである。上述したような理由により、単に講読解除していないだけ、というユーザがたくさんいるのだ。

ニュースレターの中には、やり方を隠したり、手順をむやみに複雑にしたりして、講読解除をわざと難しくしているところもある。購読者数をできるだけ確保して、パーミッションマーケティングプログラムを行う際のリーチ数を最大化したいという論理なのだろう。だが、現実には、ユーザがニュースレターを希望しなくなった時点で、「パーミッション」は消えているのだ。リストの解除手続きを踏むかどうかは問題ではない。欲しくもないニュースレターが届き続けると、メッセージはかえって裏目に出てくる。あなたの会社がどんなにうっとうしい企業か、定期的に思い出させるきっかけとなってしまうのだ。さっさと解放してあげよう。

スピードが重要

調査対象のニュースレターを平均すると、講読プロセスに要した時間は 5 分、講読解除には 3 分かかっていた。悪くはない数字だが、問題となっている機能のシンプルさから言えば、時間がかかりすぎだ。

ユーザビリティ目標として、当該ニュースレターの最新号さえ手元にあれば、そこから既存ユーザの講読解除が 1 分未満で完了できることを目指したい。ユーザのEメールアドレス以外の情報が必要ないなら、新規講読も、同様に 1 分未満で完了させたい。追加の情報が必要な場合も、無料ニュースレターの講読は 2 分未満でできるようにしておく。購読料が必要な場合のみ、ステップ数の多い講読プロセスが許される。この場合は、平均的ユーザが 2 分で申し込めなくてもよい。

講読や講読解除といった操作の効率性に関して、ユーザの要求水準は高い。いずれのタスクでも、タスク時間とユーザの主観的満足度との間には、極度に強い相関が見られた。その数値は、順に r = -.71 および -.96 となった。

この相関から基本的に言えることは、講読、講読解除のプロセスに時間がかかるほど、そのサイトに好感を持つ人が減少するということだ。講読手続きが 1 分増えるごとに、1 から 7 のスケールで満足度は 0.3 ポイント低下する。講読解除の手続きが 1 分増えるごとに、1 から 7 のスケールで満足度は 0.6 ポイント低下する。数字からもわかるとおり、ユーザは、特に講読解除プロセスの遅さに厳しい。やめたいと思ったら、一刻も早くやめたいのである。

回帰による見積りでは、評価 7 の完璧な満足度を達成するには、タスク達成を瞬間的にするしかない。ゼロ秒で講読、講読解除のできるデザインを作るのは不可能と思われるが、これこそがユーザが究極的に求めているものなのである。「講読誌の管理」を人生の目標にしている人はいない。よって、いかにわずかな手間であっても、それは無駄とされる。顧客にポジティブなインパクトを与えようと思うなら、究極のシンプルさ、使いやすさが求められる。

想像以上に多様なプラットフォーム

ウェブはだんだん SF 的クローンの世界に近づいていて、事実上、生物的な多様性がなくなってきたと思う。最近では、事実上、ほぼすべてのユーザが同じブラウザを使っている。自分のデザインが Internet Explorer と Windows 以外の他のプラットフォームでも機能するかどうか試してみるのは、今なお有益なことだが、圧倒的多数のユーザは、上記の組合せを使っているのだ。Netscape は精彩を欠いた IE のイミテーションであり、Macintosh は割高で派手な Windows の変種みたいなものだ。ウェブ閲覧プラットフォームにおける差異はインド象とアフリカ象の違いみたいなものであり、カニとワシほどの違いはない。

対照的に、Eメールニュースレターはプラットフォームの多様性と闘わざるをえない。それは、(彗星が衝突する以前の)白亜紀の生物的多様性に、もっとずっと似ている。被験者の大部分は、AOL、Hotmail、Netscape メール、Outlook、Yahoo メールのそれぞれに偏りなく散らばっていた。Eudora や Lotus Notes を使っている人、幅広い種類のメインフレームや Unix 系のシステムを使っている人も珍しくなかった。

これらのEメールプラットフォームは、いずれも From 行、Subject 行、ニュースレターの内容の表示方法が違う。同様にスパム排除やその他の手法も違っていて、ニュースレター購読者のユーザ体験に影響を与えている。こういった多様性があるために、ニュースレターデザイナーにとって、プラットフォームの違いを計算に入れ、講読/講読解除のプロセスだけでなく、実際のニュースレターの表示を主要なEメールプラットフォームのすべてで確認しておくことは、非常に重要である。

ニュースレターはシンプルに

人々は、大量のEメールに見舞われている。大量のテキストを読んでいる時間はない。ニュースレターは、流し読みしやすい形にデザインしておくこと。私たちの調査では、熟読されるニュースレターはわずか 23 %しかなかった。残りのニュースレターは流し読みか、つまみ読みか、あるいは開封すらされない。未読のまま終わるニュースレターは、全体の 27 %を占めていた。

受信するたびに、毎回コンスタントに読んでもらえるニュースレターがひとつだけあった。それは Dictionary.com の Word of the Day で、非常に短く、しかも魅力的なレイアウトになっているせいで、文章量でユーザを圧倒してしまうことがない。

主観的コメントの中でよく聞かれたのは、時間がかかりすぎたり、手間がかかりすぎたりするニュースレターはダメだ、という声であった。なにかを実現する手間が省けたり、つまらないと感じさせない手短な読み物ならいいというのだ。

ニュースレターの講読をためらうユーザの中には、情報洪水に圧倒されていると感じている人が少なくない。そのニュースレターがシンプルで、有益で、扱いやすいものであることをユーザに信じさせるのは、発行者の仕事だ。

通常は、集中的過ぎない程度で、予想可能な発行間隔を保つのがベストだ。突発的なニュースを扱うものは話が別だ。圧迫感を感じさせないニュースレターほど、サインアップの可能性が高まる。同時に、定期的な刊行スケジュールがあれば、いつごろニュースレターが届くのか予想できるので、スパムと間違われて消去されてしまう恐れも少ない。

うまい Subject 行をつけておくことは特に重要で、ユーザがニュースレターを開封する上でも、スパムと見分ける上でも有益だ。件名欄には各号の実際の掲載内容の一部を入れておくようお薦めしたい。とはいえ、多くのEメールサービスの制約上、50~60 文字の範囲内でよいマイクロコンテンツを書くのは至難の業だ。

くわしくは

186ページのユーザビリティ調査レポートがダウンロードできる。これには、Eメールニュースレターのユーザビリティを向上させる上で有益なベストプラクティスと合わせて、79 のデザインガイドラインが含まれている。

2002年9月30日