Webサイトから顧客への自動Eメール

ウェブサイトにとって、メールは顧客サービスの顔になる可能性がある。しかしメールはまず、ユーザの受信トレイの中でユーザに選ばれ、読まれるための過酷な競争をくぐりぬけなけらばならない。すなわち、あなたのメールをスパムと見分けられるようにすることが、Eメールデザインにおける最初の使命なのである。

  • by Jakob Nielsen
  • 2003年12月8日

Eメールは、ウェブサイトにとって、顧客サービスを強化し、そのサイトに対するユーザの信頼と信用を増すことのできる強力な手段だ。確認メッセージなどの自動配信される顧客向けメールは、ユーザ体験のしめくくりとなりうるものだ。自動配信メールは、他では代えがたいやり方ユーザに働きかけることができる。これなくしては、ただ黙ってユーザのほうから接触してくるのを待つしかないのだ。

Eメールがこの目的を果たすためには、最高のユーザビリティが求められる。あふれかえった受信トレイの中でも機能するユーザインターフェイスを備え、ユーザのあわただしいメールチェックにも対応できなくてはならないのだ。不幸にも、大部分の企業はEメール作成をユーザインターフェイス・デザインとは考えていないようだ。大部分のメッセージはテキストだけでできてるから、「デザイン」には見えないせいだろう。

私たちが調査した数多くのメールから判断すると、Eメールのデザインは、ソフトウェア実装の副産物であることが多かった。深夜勤務中のプログラマが書いたようなコピーでできているのだ。中には(悪くすると)、アグレッシブなセールスマンに書かせたようなひどいメールもあった。暑苦しいくらい激しい口調でまくし立てるコマーシャルで有名な家電チェーン店、Crazy Eddieでの経験が、唯一のマーケティング経験だったんじゃないかと思えるほどだ。そういったメールはスパムとほとんど見分けがつかないので、ほとんどの場合、読む前に削除される。こうしてその企業は、良い顧客サービスという評判を作りそこなう。

ユーザ調査

我々は40通の顧客向けメールでユーザ調査を行い、ユーザが受信トレイの一覧を見ながらどのように行動し、メールを読むかを観察した。メールは、次のようなカテゴリーに分類できる:

  • 受注確認
  • 出荷報告
  • 予約の確認と電子チケット
  • 入荷通知
  • 支払請求通知
  • 商品のキャンセル、返品、返金、割引、ボーナス
  • 問い合わせへの返信
  • 政府からの情報
  • 顧客サービスからのメッセージ
  • 不具合の報告
  • 登録・アカウント情報

このリストが示すように、顧客向けメールは、顧客とサイトとの結び付きを強化する機会をたくさん作ってくれる。

この調査でわかった驚くべき結論は、Eメールに目を通すのはユーザにとってストレスを伴う大きな負担だということだ。ユーザからはこんな声が頻繁に聞かれた。忙しくてひとつひとつのメールを丁寧にみていられないし、余計な文章を読まされるのは時間の無駄だというのだ。ユーザが「メール・チェック」するとき、上司や同僚、家族たちからの物を含む、多数のメールがユーザの限られた時間を奪いあおうとしているのだ。

以前からウェブページを執筆する際には簡潔を旨とせよ、というのは、古くから知られたユーザビリティ上の大原則である。Eメールの執筆には、さらなる簡潔さが求められるのだ。

スパムだらけの受信トレイの中で生き残るには

顧客向けメールには 3 つの目標がある:

  1. スパムと間違われないようにする。メールは、ユーザの情け容赦ない削除行為を逃れなければいけない。
  2. 顧客サービスの顔になること。メールは企業の顧客サービスの評価と、顧客の信頼を高めなくてはならない。
  3. 顧客からの電話を防止する。電話対応には高額な経費がかかる。しかし、電話番号を書かないのは賢明ではない(それでは 2 番目の目標をおろそかにすることになる)。そのメールが、一般的に考えられる全ての質問に対し、わかりやすい言葉で答えているかどうか確認すること。

この 3 つの目標はすべて重要だ。しかし、もし最初の目標を達成できなければ、そのメールは読まれないわけで、その後の 2 つの目的も自動的に失敗したことになる。

メールが受信トレイからすぐに削除されるのを防ぐために、デザイナーに与えられたデザイン要素は 2 つだけ。マイクロコンテンツの一種である送信者フィールドと件名フィールドしかない。最大の効果を得るために、デザイナーはこの両方で最高のものを作らなければいけない。

ほとんどの場合、送信者フィールドには、次の 2 つを明示しておくべきだ。(もしあればの話だが)知名度の高いブランド名、および、広告ではなく顧客向けメールであることがすぐに見分けられるくふうである。調査の中で効果的だった送信者には reservations@hilton(予約@ヒルトン)や、 tickets@amtrack.com(チケット@アムトラック.com)、ship-confirm@amazon(配送確認@アマゾン)などがあった。送信者フィールドは、ほとんどが、受信トレイからはみ出して途中までしか見えないことに気を付けよう。最大でも 20 文字以内で、そのメールがスパムではないことをユーザに伝えなくてはいけない。

件名フィールドには良いものも、悪いものもたくさん見られた。その主な違いは、顧客主導で始まったやりとりであることを、件名フィールドでどれだけはっきりと訴えられているか、という点にあった。あまりにもスパムっぽい件名のメール(例えば「重要なお知らせ」など)は削除された。

調査の中で一番良い結果が出たのは「Order has shipped」(配送しました)だった。むしろ、あまりにできがよすぎて、多くのユーザはそのメールの中身に目を通さなかった。あなたのメールに、それ以上伝えたい情報がなく、ユーザの迅速な対応も必要ないのなら、それでいい。たいていのユーザは、そのようなメッセージは保存しておいて、品物が届かなくて、荷物の追跡番号が必要になったときに開くと答えた。

良い件名は金のようなものだ。コピーの作成には、しかるべき投資を行おう。

メールの数は最小限に

顧客への連絡を、必要以上に数多くのメールに分散して送信していた企業は、いくつかユーザビリティ上の問題を起こしていた。ユーザはメールに追い付いて行くのが困難になり、受信トレイをあふれさせてしまう一因になっていたのである。これが原因でユーザがメールを読みそこなったり、読んだと勘違いする確率が高くなった。

物理的な商品の配送に関するやりとりの場合、一般的にメールは 2 通送るのが良い。

  1. ユーザがオンラインで発注した直後の受注確認。これが注文から数分間で届かないと、ユーザは、何かおかしいのでは、と疑念を持つことが多い。
  2. 発送直後に送る追跡番号付きの発送確認

いくつかの企業はその後に、注文内容という 3 通目のメールを送っていた。これはユーザを混乱させる原因になっていた。

ユーザが知りたがってることを伝える

ユーザに、メールの中身で見たいものの優先順位リストを作ってもらった。リストの中身は、メールの内容によって様々だが、大枠でのガイドラインは簡単だった。やりとりの経緯からみて、ユーザにとってもっとも重要な情報から始めること。特に、荷物の追跡番号は、ほぼ全員が気にかけていた。実際にそれを使うことはまずない人でさえ、そうだったのである。追跡番号は、実際に荷物が存在し、それが配送ルートに乗っているという証拠になり、安心感をもたらすようだ。

あたりまえのことだが、もっとも要望の大きかった情報は、個別の内容を簡潔に説明したもの、すなわち、注文は何だったか(あるいは、e コマース以外のやりとりなら、何が行われたか)ということだった。2 位の項目との差は 58% もあった。

優先順位としては下位にリストされたものの、ほとんどの場合大切になるものとして、何か問題が起きたときにどうすればよいかの表記がある。

一般的に、メールの内容は、ユーザの優先順位に沿った形で書くべきだ。ユーザが通常探し求める内容から書き始めるのである。マーケティング的なメッセージや、その他、ユーザにとって無関係と思われそうな内容で始まるEメールは、削除という大きなリスクを背負うことになる。スクロールして、必要な情報を見てくれるとは限らないからだ。

確認メールは信頼を生む

ユーザの時間を無駄にせず、すばやく必要な情報を伝えられるメールなら、企業の顧客サービスの評判を劇的に向上させることができる。ユーザは、ウェブサイトを本気で信頼してはいない。しかし、確認メールが届くと、何かが実際に起こっているように見えるのだ。

同時に、デザインがお粗末なメールは企業の信頼を失墜させる。ユーザに、メール送信者の信頼性を 7 段階で評価してもらった。お粗末なデザイン要素は、その企業の信頼性評価を最大で 2 ポイントも低下させた。一番問題とされたのは、連絡先情報の欠落と、メールの送りすぎだったが、単刀直入に本題に入らないということでさえ、企業に打撃を与えかねないことがわかった。メールを読むユーザは大変忙しく、ストレスをためていることを忘れてはいけない。時間を無駄にされたユーザは、ないがしろにされたと感じてしまう。悪くすると、ソリューションのつもりが、問題のタネとさえ思われかねないのだ。

確認メールや自動返信メールは、ウェブサイトと顧客の間を取り持ち、e コマースやその他のやりとりの輪を完結させる上で、大きな役割を果たしてくれる。とにかく覚えておいていただきたい。Eメールはユーザインターフェイスなのだ。最上級のユーザビリティを目指して、メールをデザインしよう。

くわしくは

確認メール・顧客向けメールのユーザビリティに関する 108 ページのレポートがダウンロードできる。

2003年12月8日