ターゲットを絞ったEメールニュースレターは効力を発揮し続ける

情報価値が高く、便利で、タイムリーな電子ニュースレターは多くの場合、他のメディアより好まれる。しかし新しい調査では、その内たったの 11% しか、よく読まれていないことがわかった。そのため、レイアウトと流し読みに適した書き方が絶対不可欠だといえる。

あいかわらず、電子ニュースレターは顧客とコミュニケーションをとるための、もっとも重要な方法のうちのひとつだ。ニュースレターはユーザとの関係を育て、関係のありそうなニュースレターを友人や同僚に転送できるという利点もある。それでもなお、時間を無駄にするニュースレターに対してはとても批判的で、ユーザビリティの低いものは多くの場合無視や削除対象になる。

ユーザ調査

前回のニュースレターに関するユーザビリティ調査を行ったのは2002年だ。ユーザの行動が前年と比べて変わるようなことは、通常ないことを考えると、ついこの間だといってよい。普段なら私もこんなに早く、特定のデザイン領域を調査しなおすことはないのだが、ニュースレターの場合、いくつかの理由で他のメディアとは異なる。まず、Eメールのユーザ体験は実際、かなり変わった。スパムを考えると特にだ。次に、今回はニューズレターを受信して読む過程のユーザ体験に焦点を当てたかったからだ。前回はニュースレターの登録、解除、そして登録情報の維持を主に調査した。

今回の調査は、日誌法を使い遠隔で調査を行ったため、地理的に分散した人たちに実験に参加してもらえた。私たちはアメリカ国内 12 州、オーストラリア、香港、日本、スウェーデン、イギリスにまたがる参加者を調査できた。参加者たちがすでに自ら登録していた 345 のニュースレター中、101 を対象に、ほとんどのケースでは 4 週間、いくつかは2週間、調査を行った。

この長期にわたって調査を行うアプローチは、就業中に人々がどのように届いたニュースレターを消化するのかに重点をおくことを可能にした。また、最初に B2C ニュースレターを中心に行った最初の調査と比較して、より多くの B2B ニュースレター、イントラネット内のニュースレターを調査対象にすることもできた。今回の調査でユーザが受信したニュースレターのうち、65% が個人的な目的、40% が仕事目的だった(5% は個人・仕事の両方の目的だったため、2 回数えている)。

2 つの調査データを組み合わせ、127 項目のEメールニュースレター用のデザインガイドラインを作成することができた。最初の調査で作ったのは 79 項目で、その古いガイドラインは未だ有効だ。2年という短期間で、ベストプラクティスは変わるようなものではない。今回、ニュースレターの異なるユーザ体験の側面に焦点を当てたことにより、新たに48項目を付け足し、現存したうちいくつかは少しながら改良することができた。

人生につきもののスパム

スパムによる影響で少しはよい発見もあったのだが、ほとんどは悪い。よかったのは、前の調査の時と比べて、合法的オプトインのニュースレターを、懇願していないメッセージから見分けることに長けていたことだ。一般の認知度、マスコミでの報道、また実際に受信箱に届く本数といった点で、今では、スパムは非常に目立つ存在になっている。このため、ユーザも、思いがけないメッセージを受け取って当惑するようなこともなく、この現象を正しく理解できるようになっている。

悪いほうは、スパムによってメールの処理に伴うストレスが増加していることだ。ユーザの、読むのに時間の無駄を出してしまうニュースレターに対する包容力は、いまだかつてないほど落ちている。

また、もう必要のないニュースレターを省くために、しばしばスパムフィルターを利用することもわかった。厄介だと思う登録解除手続きを行うかわりに、スパム防御機能にそのニュースレターがスパムだとして登録してしまうのだ。結果、そのニュースレターはもう届かなくなる。

多くのユーザがニュースレターをスパムとして登録する事実は、恐ろしい連坐を引き起こす。合法的なニュースレターがブラックリストに載り、プロバイダによってほかの登録者たちからもブロックされる可能性がある。これが登録解除手続きのユーザビリティを向上させなければいけない、やむにやまれぬ理由だ。1 人の読者を失うほうが、スパムとして登録されてしまうよりも、まだましだ。

流し読みのしやすさ

今回の調査でいちばん評判が悪かったのは、発行回数の多すぎるニュースレターだった。あとで被験者に本音のところを聞いてみたところ、ニュースレター編集者に対する助言としてもっとも多かったのは、「簡潔に」してほしいという意見だっ
た。

ニュースレターは流し読みを容易にすべきだ。最初の実験で参加者がよく読んだニュースレターは 23% だった。2 年後の 2 回目はたったの 11% しかよく読まれていない。この落ち込みの割合はユーザたちが処理しなければいけないメールの増加をよく示している。

ユーザ主体のメール処理方法とは、流し読みだ。2 回目の調査では、57%がそれにあたる。残りのニュースレターは、まったく読まれない( 22% )か、後で読むために保存( 10% )かだ。もちろん、後で読むために「保存」されたメールの多くは、実際に読まれることはない。スクロールによって、受信箱ウィンドウの見える範囲から出てしまえば、二度と見られることもないかもしれない。

ときにユーザは、単純にヘッドラインを、そのニュースレターがターゲットとしている分野内で何が起きているのかのあらましを知るために、流し読みする。1 人のユーザは、「業界で何が起きているかを知りたいが、カバーページより深く詮索することはあまりない」と言う。また、ユーザは慎重に重要だと思う要素をいくつかひろい、ほかを無視する。別のユーザは、「企業名に注目しながら目次を見て、興味のある企業の記事だけ読んでいる」と話した。

よく読むユーザでなく、流し読みするユーザ用にデザインするのは、ニュースレターの生き残りに不可欠だ。流し読みのしやすさはウェブサイトにとって重要だが、ニュースレターにとっては 50% くらい、さらに重要だ。レイアウトは各号の内容をすばやく把握し、記事に狙いを定めることを可能にする。目次と執筆スタイルは部分的にしか読まないユーザをサポートしなければいけない。

直接的な効用

ニュースレターは最新の情報をタイムリーに伝えなければいけない。これはユーザが受信した中で、特定のニュースレターがもっとも価値があると考えた大きな理由の 4 つのうち 3 つを占めている。次の理由は、40% 以上のユーザがあげているものだ。

  • 仕事に関係するニュースや、仕事に関係する自社/他社の活動( 2/3 の参加者が回答)
  • 価格と販売
  • 個人的な興味や趣味
  • イベント、締め切り、重要な日

この一覧が示すように、「最近役に行ってくれたか」が判断基準になっている。ニュースレターは受信箱に届く理由を日常的に正当化する必要がある。過去に役立っただけでは不十分なのだ。このメディアには即効性があるので、ニュースレターは時流に合ったものでなければならないし、ユーザのニーズをすばやく満たすものでなければならない。

しかし、ニュースレターは読者との関係を親密にする一方で、個々の号は簡単に見過ごされてしまうので、いくつか厳しい面は確かにある。ニュースレターにとって重要なのは、時流をうまく読んで、それを外さないようにすることだ。ニュースレターが目的にあっていないとき、ユーザは登録解除せずに、単に無視しておけばよい。

たとえば、小学校のスピーチ病理学者は、新しい製品を買えるのは年度末だけで、それ以外の時は製品に関したニュースレターを無視しているという。だが、彼女は登録解除しない。予算が入ったときニュースレターを読み、購入する製品を決めることができるからだ。

電子ニュースレターの未来

2002 年に発行したニュースレターのレポートで、私は次のようにニュースレターの未来を語った。「死滅するものなのかもしれない。合法的なEメール利用は、スパムと戦争状態にあり、スパムが勝つかもしれない。」

大きなトレンドに判断をくだすのに、2 年とは極めて短い時間だが、私は今この予想があまりにもネガティブ過ぎたと感じている。Eメールニュースレターは大きな力を持つため、意に添わない状況下でも、よいものには未来がある。

ひどくなる一方の情報洪水は、確実に新しいニュースレターに登録することをためらわせている。もしニュースレターが受信箱に届いたとしても、スパムを一掃する目的で行われる、大量削除に巻き込まれる可能性がある。結局、上で述べたとおり、スパムやその他のEメールの悪用に対する恐れは、ニュースレターを理性的に扱う妨げとなっているのだ。

よって、受信箱で生き残るのは、もっとも有益で、ターゲットの絞り込まれたごく一部のニュースレターだけになるかもしれない。残りのニュースレターはゴミ箱行きだ。しかし、よいニュースレターには未来がある。顧客との関係を確立し続け、利益を出し続けるだろう。

ニュースレターの利点をユーザに尋ねたところ、3 項目が 1/3 の人たちに選ばれ、際立った。

  • 情報価値が高い。タイムリーに情報を伝えている( 2/3 の人たちが選択)。
  • 利便性。ユーザの情報センターに直接届けられる。ユーザは単にクリックするだけで、それ以上のアクションが必要ない。
  • タイムリー。現在おきてることを、今伝えている。

この項目(そしてそのほか、ユーザが指摘した項目)を満たすニュースレターには安定した未来が待っている。生存するには、その場でユーザの生活や仕事の中の特定のことで役立つ必要がある。

ほかのメディアと比べて、1 人のユーザは、「要するに、普通の郵便物よりも、Eメールのニュースレターとして受け取りたいんです。クリックひとつで 削除もできますしね。いらないと思っても、ゴミを出さなくてすみます。これ以上受け取りたくないと思ったら、こちらの方が、登録解除するのもたいがい簡単ですし。」 利便性が決め手なのだ。

ニュースレターは数少ない、仮想世界のほうが現実世界よりも便利だとわかった部分だ。たとえば、ウェブサイトは現実世界のお店、サービス、コミュニティと比べて、一般的にユーザビリティに乏しく、好まれない。それとは対照的に、電子ニュースレターは非常に強いポジションについている。

その可能性をフルに活かすには、慎重に狭い読者層だけではなく、読者層が対面する可能性のある特定の課題やシチュエーションにもターゲットを絞らなくてはいけない。ニュースレターにとって、一般的な話題や情報は、あまり適していない。

The Wall Street Journalは最近の記事で、「女性をターゲットにした」ニュースレターの乏しい見通しを打ち出した。しかし、全人口の 50% とは、絞り込んだターゲットとは言いがたい。特定のシチュエーションを想定していない一般的な話題は、Eメールの特徴を考えると、適していない。すべてのメディア形式が、すべての目的に適しているわけではない。インターネットはマスメディアではない。ニュースレターは、なおさら、マスを相手にするのに向いていない。だが、対象を絞り込んだサービスでは、際立った効果を発揮する。そして、それは莫大な利益につながる可能性がある。

くわしくは

デザインガイドライン 127 項目と 165 のスクリーンショットを含む、ダウンロード可能な電子ニュースレターの 293 ページレポート

2004年2月17日