B2Bのユーザビリティ

ユーザテストは、ビジネス対ビジネス用Webサイトのユーザビリティが、一般的な消費者向けサイトよりも、かなり低いことを示している。もっと顧客転換率を上げたければ、ガイドラインに従って、商材を見込み客たちが楽にリサーチできるよう手助けするべきだ。

多くのビジネス対ビジネス( B2B )サイトは、ユーザ体験の観念が 1990 年代で止まってしまっている。顧客たちのよくある疑問や関心に応えることに失敗し、彼らが取引先候補を探す作業の障碍となってしまっているのだ。

これらのサイトは、ウェブが企業と顧客の関係を逆転させたことに気づいていない。オンライン上でのインタラクションのほとんどは、要求主導型だ。訪問者の要求を満たすことができなければ、彼らが貴方のサイトを見捨てて競合サイトへ流れていくのを、眺めているしかない。

B2B サイトでの貧弱なデザインは、どのような結果を生むのだろうか。私たちの行ったユーザテストで B2B サイトは、成功率がたったの 58 %しかなかった(ユーザがサイトで、与えられたタスクを成功させた割合で計測)。それとは対照的に一般的なウェブサイトは 66 %と、かなり上回っている。

ビジネス対消費者( B2C )よりも、B2B のほうが金額が大きくなることを考えると、B2B サイトが B2C と比べて、かなり酷いユーザ体験を提供していることは、驚くべき事実だ。

ユーザ調査

よい B2B デザインのためのユーザビリティ・ガイドラインを探るために、定質調査を何セッションか行った。私たちは、幅広いビジネス分野で働く実際のユーザたちの行動、要求、そして好みを示す証拠を、実験から集めた。参加者たちの肩書は、副社長、事業主、エンジニアマーケティング責任者、バイヤー、管理アシスタントといった具合に、幅広いものだった。

ほとんどのセッションはアメリカ国内(カリフォルニア、ワシントン、アリゾナ)で行い、結果が国際的に適用できるものだということを確認しておくために、一部をイギリスで行った。

B2B における、複雑な課題を深く理解するために、3 種類の異なるリサーチ方法を組み合わせて実施した。

  • フォーカスグループ。12 のフォーカスグループを集めて調査した。目的は 2 つ、参加者たちが行う購入時リサーチや購入手続きの範囲を知ることと、それら手続きを楽に進めるのに役立つ機能に優先順位をつけることだ。フォーカスグループは実際のウェブサイトや、特定のデザイン案を評価するには、ふさわしくない方法なので、そういった目的では用いなかった。
  • ユーザテスト。ここでは、ビジネスユーザ 55 人に、調査員と 1 対 1 で、実際のウェブサイトをテストしてもらった。各ユーザは、彼らの実際の状況下で行っていると仮定して、彼らの実際の仕事と関係のあるタスクを行った。テストには、思考発話法を用いて、彼らの行動を記録した。この手法では、人々が何を行うかを観察し、実際にどのようなデザインが機能するかを選び出すことができ、フォーカスグループでどのようなデザインが機能すると思うかを訊ねよりも、優れている。
  • フィールド調査。7 つの企業を訪問し、ユーザが普段使っている環境で働く様子を観察した。

調査参加者たちは、179 の B2B ウェブサイトをテストした。いつも行うよりもはるかに多い数だ。しかしながら今回は、B2B の幅広い多様性に対応するために、このように多くのサイトをテストする必要があった。

B2B 対 B2C

B2B サイトの目的は、一般的な B2C サイトのそれよりも、かなり複雑なものだ。これは B2B サイトが低いユーザビリティの言い訳にする理由の 1 つだ。しかし実際には、シナリオが複雑であれば、なおさらユーザの手助けとなるユーザ・インターフェイスの必要性が高まる。したがって B2B サイトは、それを理由に低いユーザビリティに甘んじるのではなく、むしろもっと力を注がなければいけない。なぜなら一般的なサイトよりも専門性の高い商材について調べ、もっと複雑なタスクをこなせるよう、ユーザの手助けをしなければいけないからだ。

B2B で扱われる商材は、高額な商品やサービス契約である場合が多い。サイトで扱われる製品やサービスは、多くの場合、とても専門的で複雑なスペック表記を要求される。そして B2B サイトで行われた選択は、長期的なつきあいになる可能性もある。顧客は 1 回きりの買い物をしているのではない。多くの場合は取引先として、サポートやアフターサービス、そして将来的には改良や拡張といった、長期的な関係を買っているのだ。

これらの全ての理由から 製品をリサーチし、複数の条件設定によって意志決定を行えるデザインが B2B では勝る。B2B サイトは、一般的な B2C で提供されているものよりも、もっと広い範囲での情報提供を行う必要がある。B2B サイトは、とりあえずどのようなものが提供されているのかだけ情報を収集しているような、ごく初期段階のリサーチを行っている人にも、すぐに理解できるような簡潔な情報を、提供しなければいけない。また同時に、詳しい情報や白書を提供し、見込み客に総所有コストや ROI といったコンセプト、そしてその製品やサービスが、いかにして既存の環境に統合できるのかを理解するための手助けも行わなければいけない。

もう 1 つの大きな違いは、B2C ユーザたちはほとんどの場合、自分自身のために買い物をしているということだ。そのため彼らは、意志決定を 1 人で行うことになる。つまりそれは、予算割り当て、予算承認、製品リサーチ、購入決定、購入手続き、商品受け取り、そして使用までを全て 1 人のユーザが行うということだ。それとは対照的に B2B の場合は、これら各ステップが、複数の人や部署が絡んで行われる可能性がある。

B2B サイトでは、多様なニーズを持った、多様なユーザを想定しなければならない。この調査では、B2B ユーザの主な役割を担うための、5 人のペルソナを定義した。

  • Sam:小規模企業の倹約家
  • Ashley:事務所責任者
  • Erin:大企業従業員
  • Barbara:上司
  • Pat:購買代理人

ここでつけ足された複雑性もまた、B2B のユーザビリティが強化しなければいけない部分を反映したものだ。

ショッピングカート 対 全購入手続きのサポート

B2B と B2C で最も異なる点の 1 つは、B2B 企業がeコマースに拘わっていると認識していない点だろう。B2B サイトにはショッピングカートがないから、そう感じるのかもしれない。B2B 製品は、単純なショッピングカートに入れるボタンでは買えないことが常だ。たとえばカスタムメードなどの形で配慮が必要なことがある。また価格も固定したものがなく、顧客ごとに調整されることもある。

しかしながら、ショッピングカートに入れるボタンがないからといって、B2B 企業がウェブサイトを軽視してよいことにはならない。たとえば後々の顧客ロイヤリティに影響してくる、購入前の手続きなどを含む、それ以外の沢山の購入手続きをサポートするべきだ。また実際のところ複雑な製品には、補充品や摩耗部品など、これまでのeコマースと同じ手続きで販売するべき消耗品がつきものだ。

最も重要なのは、B2B サイトは顧客転換率を向上させる可能性があるということだ。取引先を探している人は、最初のリサーチを行うときに沢山のウェブサイトを見て回り、そのとき使ったサイトの中で有益な情報を提供していたものを、その後のリサーチにも使い続けるからだ。

ウェブサイトは、取引先を探している人たちにとっては企業の顔だ。今の世の中、パンフレットやチラシを手元に残しておくとは限らない。なぜなら必要になったときに、同じ情報をウェブ上でみつけることができるだろうと、思っているからだ。テストユーザたちのほとんどは、取引をしようと思ったら、まずはその企業のウェブサイトを見に行くといっている。そのため、売り主とその商品の印象を間違えて伝えてしまうようなサイトは、商談が開始してから正式に売り込みを行う以前に、客を追い返してしまっていることになる。

これほど多くの B2B サイトのユーザビリティが悪い背景には、サイト自体が売り上げに直接は責任がないからかもしれない。典型的な B2C のeコマース・サイトでは、各デザイン上の判断が直接的かつ計測可能な形で、顧客転換率や顧客 1 人あたりの平均売り上げなどの数字に影響する。多くの B2C サイトでは、ユーザビリティで間違いを犯すと、どれだけの売り上げを失うか、統計値として知っているため、eコマースのユーザビリティ・ガイドラインを崇拝しているともいえるほどだ。

反対に B2B サイトでは、オンラインで商談がまとまるわけではないので、大部分のユーザがサイトを立ち去っていたとしても、その事実に背を向け、どれだけの売り上げを失っているか知らずにいられる。企業がそのサイトがどのようにしてユーザの手助けになるか、または妨げになるかを知るには、顧客を何人か招いて、ユーザ調査を行わなければならない。これは大部分の企業がやらないことだ。ほとんどの企業は、実際に自分たちのサイトをテストしてみれば衝撃を受けること間違いないと、179 の B2B サイトをテストした結果から確信を持っていえる。

ユーザの妨げになるデザイン

B2B サイトは、ソルーションをリサーチするのに必要な情報をユーザが探す妨げになっていることがよくある。ときには、必要な情報を会員登録しないと見られないようにして、故意にそれを行う場合もある。それ以外の場合は、紛らわしいナビゲーションが妨げになっていたり、情報自体は存在するものの、その量が膨大で複雑過ぎて、ユーザが理解できなくなっていたりといった、ただの不注意だ。

簡単な例を挙げておく。ユーザに当てはまる選択肢をクリックして進ませるような、セグメント分けを多くのサイトが行っている。しかしながら、これらのセグメント分けは、顧客が自分たちのことをどう思っているかというのと、合致しない場合が多い。そのため、正しいものを探すために、複数の選択肢の内容をそれぞれ覗かなければいけなくなる。企業の規模といった、簡単な選択肢でさえ、明確でない。従業員が何人までならば小企業なのかといったことは、人によって違うのだ。よいサイトであれば、選択肢に明確な定義をつける(たとえば、小企業向けのページは、従業員 100 以下の企業向け、といった具合に)。

もう 1 つ B2B でよく使われる手法として、ユーザに会員登録やリード・ ジェネレーション用のフォームの記入を義務づけるものがある。だが、ユーザはこの手法を大変嫌う。それでもこの手法を使うというのであれば、最低でも登録フォームのガイドラインに従って、フォーム記入を楽にできるようにするべきだ。しかしながら、ほとんどの場合には、ユーザがごく初期段階のリサーチ中にもユーザが必要な情報を見られるよう、登録しなくてもよい場所に置くほうがよい。ある程度の信頼を獲得しなければ、ユーザは快く連絡先を教えてくれない。相手が自分の求めているものを提供していると感じなければ、今の世の中、仕事中にセールスの電話に応えているほど暇ではないのだ。

登録せずに見られる製品情報は、ユーザの状況に当てはまるのかどうか、判断できる程度に完全でなければならない。私たちの調査では、断片的な製品情報が懐疑の原因になっていることが多かった。同時にはじめてサイトを訪問したユーザに、全ての情報を畳みかけるわけにもいかない。技術的にとても専門性の高い製品を扱っていて、専門知識の高い人たちを相手にしていても、全てのユーザが業界の専門用語や、他社製品と比較したときの特徴を理解できるとは限らない。それを理解するための手助けとなる大略的な文章や案内を用意して、新しいユーザを教育しよう。ユーザに課題への対処方法を、貴方が考える通りに教えることができれば、商品の売り込みは半分終わったようなものだ。

ほとんどの B2B サイトで、最もユーザの妨げになっているのが、価格表示の欠落だ。それでもなお、28 項目用意した B2B サイトの情報の内、価格が圧倒的に最重要だとユーザたちは答えた( 2 位に入った在庫の有無に 29 %も差をつけている)。

価格を表示したくない理由は、沢山あるだろうが、それは言い訳にしかならない。ユーザたちは、製品やサービスの基本的な理解を、最初にリサーチしたときに判るものだと思っているが、それにかかる費用の見当すらつかないのであれば、それ以上先に進めなくなる。正確な価格が表示できなくても、おおよその価格帯は示すことができるはずであり、皆が求めているのも、それでしかない。

私たちは、よいデザイン要素をもった、多くの B2B サイトをテストした。機能するナビゲーション、便利な製品案内、情報豊富な比較表、魅力的な上位商品販売、手助けになるサポート、有益な白書などだ。B2B サイトを上手くデザインすることが可能なのは確実だ。しかし残念ながら、よいデザインは希で、よいものと悪いものの差は激しい。

平均的な B2B のユーザ体験は、顧客に対して親切だとはいえない。その結果ウェブサイトは、商売上価値を見いだされず、むしろ見込み客たちを追い払ってしまっている始末だ。この調査の結果から判った唯一よかったことは、ほとんどのサイトがユーザビリティ・ガイドラインに少しでも従うようにして、顧客主導型の環境を作れば、劇的にそのビジネス価値を向上させられるということだ。今こそ B2B のユーザ体験を、一般的なウェブサイトの水準までアップグレードするべきときだ。

もっとくわしく

144 のユーザビリティ・ガイドラインと 158 のスクリーンショットを含む、B2B ユーザビリティについての 282 ページのレポートがダウンロード可能。

2006 年 6 月 1 日

公開:2006年6月1日(原文:2006年6月1日)
著者:Jakob Nielsen
原文:B2B Usability

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