Webサイト数、1億を突破
初期の頃の爆発的な成長も徐々にそのスピードを緩め、成熟に達しつつあるWebではあるが、その歩みは留まることなく、最近、ウェブサイトの数が1億を突破した。
Netcraftによる調査で、2006年11月現在、101,435,253のウェブサイトの存在が確認された。生きているウェブサイトばかりではなく、中には“待機”状態のドメインや、深い眠りについているブログもある。維持、継続されているウェブサイトは半数ほどしかないのかもしれないが、それでも1億を超える数のウェブサイトを存在せしめるためにお金が支払われていることは確かだ。
1億という数字は大きなマイルストーンであり、15年前のWebの登場以来、計り知れない成長を遂げてきたことを示すものである。
グラフは、1991年から2006年までのウェブサイト数の推移を示したものである。初期の急速な成長を示すために、敢えて対数グラフにした。
- 1991 – 1997:爆発的な成長期。年率850%の成長
- 1998 – 2001:急速な成長期。年率150%の成長
- 2002 – 2006:成熟した成長期。年率25%の成長
年率25%の成長を“成熟期”と言えるのはWebに限った話である。Web以外なら、その半分のスピードですでに“成熟期”と言えるだろう。Webがこの成長率を維持するとすれば、2010年にはその数は2億に達することになる。しかし、Webの成熟はさらに進み、成長率が下がっていくと考えるのが現実的だ。一方で、ウェブサイト数が2億を超えたとしても、完全に浸透したとは言えない。世界には2億を超える企業、非営利団体、政府機関があり、その全てがいずれはウェブサイトを持つようになるだろう(多くの個人も同様だ)。とすると、ウェブサイト数が2億を超える日は遠からず、2010年を少し過ぎた頃にはやってくるのではないだろうか。
Webの成熟とデザインの変遷
1994年を思い出してみよう。もっとも急速にWebが成長を遂げた一年だ。ウェブサイトの数はその年、700から一気に12,000まで増えた。一年の成長率は実に16,000%である。当時、週に一度開いていたチーム会議では、毎週必ず新たな発見が報告されたものだ。
変化の速度を考慮すれば、1994年に“ウェブ・ユーザ・エクスペリエンス”なるものはまったく存在しなかったと言って良いだろう。ユーザは、インターネットに接続すれば必ず何か新しいことに遭遇したものだ。とは言え、1994年の後半に実施した調査ですでに、Webにユーザビリティ・パターンがあることも明らかになっていた。その後の調査結果を踏まえて多少の修正は加えたものの、1990年代のガイドラインは現在も概ね適用されることは最近の著書にも示したとおりである。
Webの急速な成長は2001年頃には収束し、それ以降に確認されたユーザビリティ・ガイドラインはいずれも繰り返し唱えられてきた。ウェブ・ユーザビリティが確立したとは言えないが、それ以降の調査は、2001年以来言われ続けている“古い”知見に挑むよりもむしろ、新たな洞察を得ることにより注力されることになった。
成熟へと向かう過程で、Webにおけるユーザ・エクスペリエンスが唱えられるようになる。ユーザが、ウェブサイトが機能するべき形で機能することを強く望むようになったのはこの頃だ。例えば、ユーザは検索に対してある特定のメンタルモデルを持つようになった。また、検索結果のページの見方に共通点があることも視線移動調査の結果で明らかになっている。スタンダード・モデルから逸脱したウェブサイトの場合も、結果の見方に変化はない。
これは、検索に改善の余地がないなどと言うものではない。逆に、Web上の他の要素と比較すると、検索に関連するユーザビリティは極めて低く、より優れたパフォーマンスを提供すべく改善の余地はまだまだ残っている。ここで言いたいのは、ユーザがウェブサイトのデザインに期待することはほぼ固まってきており、極端に優れたウェブサイトを作ることができない以上は、ユーザの期待に即してデザインすべきであるということだ。慣例に従わないインタラクション・スタイルをユーザに強いるものであれば、些細な改善などまったく機能しないだろう。
今後、世に送り出されてくるウェブサイトは相当数 に上るだろうが、ユーザ・エクスペリエンスにとって重要なのは変化の度合いであり、それはほぼ安定してきている。爆発的な技術進歩を経て、Webはほんの15年のうちに日用品の域に達した。変化の著しい現代の本質を、まさに象徴している。書籍が同じ変化を遂げるには、途方もない年月を要した。書籍というモノがどのように製品として形を成すかではなく、その中身、コンテンツこそが重要視されるようになるまでには。
ユーザの期待に適うウェブサイトのデザインが重要だ。成熟したシステムの中では、極端に異なるユーザ・インターフェイスを使っても差別化を図ることはできない。そのようなインターフェイスは、ユーザを逃すことにしかならないのだ。Webはもはや驚異的な革新ではない。日常生活のためのツールに過ぎないのである。優れたコンテンツを提供し、ユーザが抱える悩みを解決してあげることでこそ差別化が可能となる。
2006 年 11 月 6 日