企業Webサイトの失敗
平均的に見ると、ウェブはうまくいっていない。ウェブで何かやりたいことがあるとしても、結果的には失敗する公算が高い。この主張を裏付けるデータが最近いくつか現れてきた。
- 15の商業サイトを対象にしたJared Spoolの調査によると、求めている情報をユーザが見つけられる確率は全体の42%。テスト用タスクを与える前に、彼らをあらかじめ正しいホームページに導いておいてすら、この数字である
- Zona Researchの調査によると、オンラインで購入したい商品を探す過程で、ウェブの買い物客の62%があきらめてしまうことがわかった(2ヶ月の間にあきらめた回数が3回以上になるという人が20%もいた)
- Forrester Researchが大手20サイトを監査したところ、ごく普通のウェブユーザビリティ原理に適合しているサイトは51%だった。ここでいう原理とは、例えば「サイトはユーザの目的に則して組織化されていますか?」とか、「検索結果は関連度順に並んでいますか?」といったものだ(言い換えると、平均的なサイトでは、これらありきたりのデザイン原則でさえ、半分は守れていないわけだ)
統計結果は悲惨なものだが、それでもユーザは確かにウェブの恩恵を受けている。ほとんどの時間を、よくできたサイトで過ごしているからだ。だが、何か新しいことをやってみようと思うと、とたんに分が悪くなる。ウェブサイトを立ち上げようと思う企業には、あまりいい見込みはない。私の見るところ、商業ウェブサイトの90%はユーザビリティがなっていないのだ。
最近のForresterの報告は特に興味深いもので、企業ウェブサイトがなぜダメなのか明らかにしようとしているだけでなく、それによって企業がどれくらいのインパクトを受けるのかも同定しようとしている。Forresterが出した結論の多くは、1995年以来、私がAlertboxで書いてきたことと共通する。この報告書ではさらに、大手企業のウェブプロジェクトから得たデータで論点が裏付けられている。
報告書作成のために、Forresterは、各企業でインターネット事業を統括している重役25名にインタビューしている。サイトデザイン上のゴールを設定している人はほとんどいなかった。だが、56%の人は「高速なパフォーマンス」をゴールのひとつに数え上げている(ブラボー!)。ユーザビリティテスティングを実行しているサイトは24%。これは私の予想を上回っていた。おそらくForresterの調査対象が、大規模で、かつ資金も潤沢なプロジェクトに偏っていたせいだろう。(当然ながら、このデータから、大規模サイトの3/4は、ユーザビリティデータなしで運営されているということがわかる。つまるところ、手当たり次第にデザイン空間を突っつき回している、ということだ)
企業への影響
Forresterは、ダメなウェブデザインがどれほど高くつくか見積りを出している。そのうち、もっとも印象的なものを2つ挙げよう。
- サイトの売上見込みで50%の損失。サイトで商品を見つけられないからだ。
- サイトへのリピート訪問は40%低下。最初の訪問での体験が否定的なものだと、ユーザはサイトに戻ってこない。
この報告書では、これ以外の問題についても、その経済的な影響についてかなりくわしく書いてある。要するにこういうことだ。大規模なウェブサイトでは、損失は何100万ドルにもなる。
問題の修正
Forresterの報告書で示唆されている修正案のうち、もっともドラマチックなものは、企業の評判を落としてしまうほどひどいサイトなら閉鎖してしまえ、というものだ。多くの場合、いろんな改善方法が考えられるものだ。そのコストも、リンク切れをなくすための数1000ドルから、もっと高度なソリューションを求めるなら50万ドルまでと、実に様々だ。ハイエンドのソリューションでさえ、ダメなサイトで失われるであろうコストに比べれば安いものだ。
この報告書では、ウェブソリューション代理店も、遠からぬうちにユーザビリティ工学を中心的な業務に加えるようになるだろうと予想している。私も絶対的に賛成だ。だが、同時に、クライアントも、自社が提供しているもののユーザビリティ評価で、積極的役割を果たすべきであると考えている。
クライアントは、あらゆるウェブデザインにユーザビリティテストを要求するべきだ。提案されたユーザビリティプロセスの品質は、クライアントが提案段階で最終結果の品質を判断するための数少ない手段のひとつだ。ユーザビリティ工学上のマイルストーンなしの(もしくは手法が貧弱だったり、間違ったりした)提案だと、最終的にできあがるサイトもお粗末なものになることがほとんどだ(運良く10%の中に入れれば別だが)。
参考情報
Harley Manning, John C. McCarthy, and Randy K. Souza: Why Most Web Sites Fail, Interactive Technology Series, Volume 3, Number 7, Forrester Research: September 1998.
もしあなたが大きな会社に勤めていて、Forresterのサービスに加入しているのなら、この報告書のコピーを入手されるよう強くお薦めする。将来のウェブプロジェクトを災厄から救うために、非常に役立つはずだ。
1998年10月18日