あれから3年、『間違い・トップ10』を再検証
1996 年 5 月の私の記事、『ウェブデザインの間違いトップ10』は、あれから3年経った今でも、驚くほど意義を失っていない。この記事は、ウェブ界のちょっとした古典となり、今までに約40万ページビューを獲得している。いまだに毎月17000 回も読まれているのだ。
ひとりの人が何度も読み返している場合を差し引くと、40万の読者といっても、世界中に 500万あるウェブサイトの責任者のうち、10%に満たない人々しか『間違いトップ10』を読んでいないことになる。だから、あいかわらずほとんどの間違いは、いまだになくなっていないのだ。新しいウェブデザイナー諸君にも、あいかわらず私の古い記事を読むようおすすめする次第である。
間違いはいまだに誤りか?
以下の表は、10項目の間違いがサイト上で頻繁に見受けられるかどうか、もしそうなら、それが今日のウェブサイトのユーザビリティにどういう影響を与えるかを評価したものである。
間違い | 現状分析 | 評価 |
---|---|---|
1. フレーム | 1995年や 1996年初頭に比べると、 フレームはもはや致命的とはいえない。 ブラウザ技術の進歩によるものだ。Netscape はVer.3でBackボタンを修正したし、Ver.1とか2とかを いまだに使っている人は皆無に等しいので、フレームページのナビゲーションに問題を感じるユーザは、ほとんどいなくなったと言えるだろう。Ver.4では、フレームの印刷の問題も軽減された(ただし、予想外のページが印刷されて困っているユーザは、今でも時々いるようだ)。Internet Explorer 5では、 ついに、フレームのあるなしに関わらず、思い通りのページにブックマークできるようになった。 おすすめのURLをメールで他のユーザに教えてあげる時など、今なおフレームはその障害になっているし、ページの操作をやっかいなものにしている。 | 中程度 |
2. 最先端技術 | 遅れてやってきた人々がウェブで多数派を占めるようになり、 新しいブラウザへのアップグレードや、プラグイン導入にも時間がかかるようになった。それにともない、最近のユーザは、 最新技術への許容度が(まだ残っているとしても)低下している。 JavaScript のエラーがひとつでもあれば、ユーザはすぐサイトを離れてしまう。他に、500万ものサイトが待っているのだ。サイトの使い方に頭を悩ませるなんて、単なる時間の無駄づかいだ。 | 非常に深刻 |
スクロールするテキストとループするアニメーション | あいかわらず、スクロールするテキストは読みにくい。しかし、邪魔っけなアニメーション乱用の問題は、1996年当時よりも深刻さを増している: ユーザは、この手のデザインを見ると広告だと判断し、無視する習慣を身に付けつつある。今日では、氾濫する広告デザインとの違いをはっきりさせるということが、どんなコンテンツやナビゲーション要素にとっても、ことのほか重要だ。自分の用事に関係ないと思ったら、ユーザは何でも視界から締め出してしまうからだ。 | 非常に深刻 |
4. 複雑なURL | ウェブの初期に比べて、最近のユーザは、URLに対してさらに無頓着になっている。また、ほとんどのサイトにナビゲーショ ンサポートが用意されるようになったため、ユーザがサイト内での現在位置を知る手掛かりとして、URLを用いることは少なくなった。 しかし、おすすめのページのURLをユーザが電子メールでやり取りする際に、長いURLは、 いまだに問題のタネになっている。 | 深刻 |
5. 孤立ページ | ユーザが行き場を失う確率は低下した。なぜなら、URLの末尾に手を加えてサイトのホームページに行くやり方を、たいていの人が身に付けたからだ。しかしながら、いまだに初心者にとっては災難である。経験者にとっても面倒であることには変わりない。 | 中程度 |
6. スクロールが必要なナビゲーションページ | 90%のユーザは、ナビゲーションページでスクロールをせず、 単純に今、目に見えているオプションの中から選択する。ウェブユーザのほとんどがスクロールという概念を理解し、重要なリンクが、しばしば目に見えない「折り目の向こう側」にあるということ知るようになったため、今では、この状況は変わってしまった。そうはいっても、目に見えるオプションはいまだに支配的で、ページの下の方にある選択肢は時々ユーザに見逃がされる。ページの中で目に見えている部分が、明らかに特定の目的や、最善のアプローチを示唆しているかのように見える場合は、特に具合が悪い。ユーザはこの後どうするのか、さっさと結論を出してしまい、同じページ上の他のものには目もくれなくなるのだ。 | 軽微な問題 |
7. ナビゲーションサポートの欠如 | めったに見られなくなったが、もしあるとすれば、かなり問題である。ページ上左隅に配置されたサイトロゴ(ホームページへリンクしている)、あるいはサイト全体の中で現在のページが占める位置の表示(そのセクションのメインページへリンクしている)などの模範的ナビゲーション要素は、今ではかなり一般化してきた。そのため、こういった要素が欠けていると、ユーザは迷ってしまう。 | 深刻 |
8. 非標準的なリンク色 | ユーザが、すでに見たことのあるページをリンク色を見て判断していることから考えて、今なお、問題であると言えるだろう。少数の限られたページの間を行ったり来たりしているユーザを、時おり見かけることがある。彼らは、何度も何度も同じページに戻っていることに気がついていないようだ。(非標準的リンク色が不愉快なくらい頻繁に見られるのと同時に、ユーザは、リンクでもないのに下線が引いてあるテキストにも混乱し始めている)。 | 深刻 |
9. 時代遅れの情報 | 他のウェブサイトの多くが継続的に更新していることを思えば、以前より問題は大きい。 Eコマース(電子商取引)の進展にともなって、信用は何にも増して重要になっている。そして、 時代遅れのコンテンツは、信頼を失うためのもっとも確実な方法だ。(アーカイブ的な情報や、旧製品についての情報はプラスであり、時代遅れの情報とはまったく意味合いが異なる) | 非常に深刻 |
10. 遅いダウンロード時間 | インターネット界のお偉方の宣言に反して、帯域幅の問題は、過去3年では解決できなかった。今後3年かかっても無理だろう。ハイエンドユーザが、ウェブで満足できるレス ポンスが得られるくらいに充分な回線容量を手に入れるのは、2003年までは無理だろう。 ローエンドユーザは、さらに2008年まで待たなくてはなるまい。 | 非常に深刻 |
結論としていえることはこうだ。
- 1996年当時の10の間違いは、すべて、1999年の今なお間違いである
- 10の間違いのうち9までは、今なお、使いやすさへの深刻な障害となっており、現代のウェブサイトでは避けるべきである
- スクロールが必要なナビゲーションページは、以前ほど使いやすさの障害にはならない。デザイン上でしかるべき注意が払われるならば許容できるものである(あまりにも長いナビゲーションページになってしまったら、私はそれを注意信号と見るし、またユーザビリティテストが必要だと考える)
1999年5月2日