パソコンモニタのこれから - 1/2

ハイビジョンの導入によってテレビが16:9になり、その流れからパソコンのモニタも16:9に移行が進んでいる。この動向のユーザビリティを考える。

1. 映画とテレビ

 ブラウン管時代のテレビの画面は4:3のアスペクト比(画面の横と縦の比率)が、ハイビジョンの導入によって16:9になり、その流れを受けてパソコンのモニタも殆どが16:9になってきた。その間、5:4とか16:10などのものもあったが、現在、店頭に見られるモニタはタブレット端末や小型ノートなどを除くと、大半が16:9である。さて、この動向についてユーザビリティの観点から考えてみよう、というのが今回の趣旨である。

 映画ではエジソン以来の4:3(業界では1.33:1と表現されている)の比率がスタンダードサイズと呼ばれ、テレビの4:3のアスペクト比もこれに由来している。映画の世界では、その後、ビスタサイズやシネマスコープサイズなど様々な規格が出され、それが16:9の比率を採用する流れの源になったが、それは基本的に縦の実寸を維持、または拡大しながら、それ以上に横幅を取ろうとするものだった。

 こうした経緯に関する技術資料はいま手元にないので、なぜ4:3の二乗に相当する16:9に落ち着いたのか、それは偶々だったのか、等の点については不明なままなのだが、ともかく横長の画面になってきた理由として幾つかのことが考えられる。まず地球上で我々が目にする世界は地表や海面にへばりついていること(また、下方向にある地中や海中は普通、人間の目には見えないし、上方向については地平線や水平線の近くにしか「意味のあるもの」は存在せず、その上には雲や星があるだけであること)、人間が直立して生活するためにその視線は普段は水平方向に向いていること(だから偶に芝生に寝転んで空を仰ぎ見ると、その大きさに驚いたりする)、さらに人間の目は横に二つ並んでおり、両目の視野を合わせると、上下より左右に長いこと、などが考えられる。

 だから、映画の場合には、4:3から16:9と横長になってきた流れはそれなりに理解できる。また、それを見るためにテレビが16:9になってきたのも理解できる(一頃は、4:3の画面で横長の画面を見ていたため、横幅をテレビ画面に合わせると、上下に黒い領域が出来てしまったものだが、これももう昔話になりつつある)。

2. パソコン

 さて問題はパソコンである。パソコンにDVDドライブが付いたりしてワイドなコンテンツを視聴することができるようになり、マルチメディアパソコンとかAVパソコンといったセールスポイントで新機種が開発されるようになったあたりが、その発端だと思われる。たしかにパソコンでテレビが見られるのは楽しいことだと思うのだが、それはパソコンにとっては一つの機能に過ぎない。しかもDVDやBDはパソコンより大きな画面のテレビで見た方がよいという人も多いだろう。映画というものは、デスクに向かって見るものではなく、リビングで寛ぎながら見るものだという利用状況を重視する人もいるだろう。

 言い換えれば、パソコンで行う作業、つまり、文書作成、表計算、プレゼンテーションソフト、データベース、ウェブサイト利用、図面の作成やドローイング、プログラミング等々の作業をする際に、16:9の画面の方が4:3よりも良いのだろうか、単に大画面であればいいのではないかといった疑問が沸いてきて当然である。

 同時に考慮すべきなのは、マルチディスプレイの流行である。現在市販されているグラフィックボードは大抵二つのモニタに対応しているし、デスクトップの場合には、そうしたボードを付けたものが大半である。ツインモニタ環境は、一方でブラウザや文書を表示しておきながら、他方で原稿を書くといったような場合には大変便利である。

 こうした推移を考慮してか、Windows 7では、ウィンドウを画面の左右の端にもってゆくと、ちょうど画面半分の大きさで表示してくれるようになっている。この擬似的にソフトウェア的なツインモニタ環境を構築する機能は、後述するように操作性には難点があるが、なかなか便利なものといえる。

3. 筆者の経験

 僕は随分以前からツインモニタを利用してきた。そのせいか、ツインモニタになっていないノートパソコンではとても仕事がしづらかった(ツインモニタのノートパソコンも販売されたようだが、あまり売れなかったようだ)。そのため補助モニタを買ってみたが、どうもしっくりこない。やはり仕事はデスクトップだ、というのが僕の実感だった。その僕は、その後、モニタの数をどんどん増やし、職場では4モニタ、自宅では3モニタにして使っている。つまり、メーラに一画面、ブラウザに一画面、作業用に一画面か二画面、という訳である。

 さて、しばらくの間、4:3のモニタを使ってツインモニタの環境で仕事をしていたのだが、高解像度のモニタが欲しくなって探してみると、もうその時には4:3のモニタはほとんど売られていなかった。それで仕方なく解像度がWQXGA(2560×1600)の27インチモニタを二台購入したのだが、さて、それをどう設置するかに困ってしまった。家人は、二つの27インチモニタ(ただしWUXGA(1920×1200))をそれぞれ縦向きにして横に並べて使っている。その理由は、ウェブや文書を見るときに下の方までスクロール無しに見られるから便利だ、とのことだ。いろいろ考えて、僕はモニタを横向きにしてそれを上下に二つ配置することにした。27インチだと、ちょうど目線が二つのモニタのつなぎ目あたりに来るので、上の画面を見る時に首が痛くならずに済む。上側のモニタをデスクトップとして、下側にはブラウザを置いている。3つめのモニタはFWXGA(1366×768)のもので、下側モニタの横に縦置きにしてメール表示に使っている。

 そんな形で一応環境は整ったのだが、そこで作業をしていると、この環境の中で更にソフトウェア的なツインモニタを使うといいような場合が多く発生した。たとえばブラウザの場合、ワイド画面一杯に表示すると文字表示が横に長くなりすぎて首を左右に回転することになり読みにくい。文書ファイルでもA4縦方向のものが多いので、文書の両側に無駄な領域ができる。そのために文書ページを横に並べる表示にすることが多いが、その手間が面倒くさい、等々である。

(後編はこちら

公開: 2012年7月20日
著者: 黒須教授

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