パソコンモニタのこれから - 2/2

パソコン画面の大画面化は、エルゴノミクス面のほか、OSやアプリケーションの操作系、さらには省電力等にも考慮が必要となるだろう。

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4. 印刷文書の判型との関係

 印刷文書にA4縦がA4横よりも多く用いられるようになった理由は、人間の眼球運動の負担を考慮したためだろう。もちろん横書き文書の場合である。さてA版の縦横比はルート2(1.414:1)になっている。そのため、A4版は210x297mmの大きさである。これは4:3に近い4:2.8という比率になる。なお、書籍の判型がA4より小さいのは左右に開くため、A4より小さくする必要があったのだろう。また日本の新聞はA2(420x594mm)に近い540x400mm程度の紙に縦書きが普通だが、複数の行に区切られている。欧米の横書きでも複数の列に区切られているのは、やはり視線移動の負荷を考慮したためと思われる。

 こうしたことを考慮すると、前述したWindowsのソフトウェア的なツインモニタは、ワイドスクリーンを横長に利用する場合、それなりに理に適った機能だといえる。ただしその場合の個々の分割画面の縦横比は9:16/2 = 9:8と比較的正方形に近いものになる。いいかえれば少し縦が短い。ここからは多少乱暴なロジックになってしまうのだが、その9:8の比率をA4サイズの4:2.8も考慮して4:3にするには、4:(3+3) = 4:6 = 10.7:16のアスペクト比がいいといえる。つまり、16:9よりも少し縦を長くして16:10.7にするのが良いのではないかと考えられる。もちろん、別に”16:”という数値に拘る必要はなくて3:2で十分なのだが……。ともかくこうすればワイド画面に、A4文書を横並びに二つフル表示できるわけだ。

 ただし、通常の文書ファイルを扱うソフトは、文書だけでなく操作部品を含めた表示をしているから、現在のままで良いし、また16:9から3:2になると相対的に縦方向が長くなるので、ワイドモニタを横向きで縦に二つ置くと上側のモニタが見にくくなるではないか、という反対意見が考えられる。その点では、映画やテレビに引っ張られて16:9になってしまったパソコンモニタだが、結果的に、現状はそれほど悪い訳でもない、と言えるだろう。

5. ソフトウェア操作

 もうひとつ考えねばならないのはWindowsにおける画面操作だ。僕は、ウィンドウをつまんで画面の左右の端まで持っていくのが面倒で、ついついウィンドウの右上にある最大化の四角いボタンを押してしまいがちになり、そのために折角の半分表示の機能を使わないことも多い。しかしその場所に、たとえば「<」や「>」のボタンが付いていて、ウィンドウの中で、左右のどちらに半分表示するかができれば便利だろう、などとも思っている。ちょっとしたことだからフリーウェアあたりででてきてもいいだろう。

6. 大画面化

 マルチディスプレイ環境は当面の解決策としては好ましいが、画面の継ぎ目は無い方が良いに決まっている。その場合、どの程度の画面サイズと解像度が望ましいのだろう。

 図説エルゴノミクス(p.155)によると、人間の両目の視野を考慮した「眼球の許容動き角」は中心から左右にそれぞれ30度、上方向に45度、下方向に65度となっている。監視距離については400-700mm(同書p.109)とされているので、大画面であることを考慮して700mmと考えよう。形は製造工程を考慮すると矩形の平面と考えるべきだろう。また理想的には目の位置から15度程度下向きに見た方が良いとされているが、それを考慮するとデスクと対応した設計が必要になるので、一般的に700mmの高さのデスクの上に置くことを考えて、そこに垂直に立てる形を前提としたい。座位の時の目の高さは1070-1300mm(同書p.109)とされているので、平均して1180mm、したがってデスク表面から目の高さまでは480mmとなる。

 これらの前提からどのような大きさになるかを計算すると、横幅が(700mm x tan30゜) x 2 = 404mm x 2 = 808mm、高さが上方向に700mm x tan45゜=700mm、下方向はデスクの高さまでなので計算せずに480mm、合計して1180mmとなる。つまり、縦横の長さは1180x808mmということで正方形よりもやや縦長のディスプレイということになる。対角線の長さは1430mmとなり、変形の56インチスクリーンということになる。ただし、自宅のデスクで巻き尺を使って計測してみたところ、左右の808mmはいいのだが、視線より上側の700mmはいささか高すぎて首が疲れてしまいそうだ。せいぜいが500mm程度、視線より下側と合計しておよそ1000mmというところが上限ではないかと感じられた。

 解像度については、現在僕の使っているWQXGAの27インチ画面(16:9のアスペクト比とする)を前提にすると、高さが337mm、横幅が549mmであり、そこに1600×2560のピクセルが含まれており、その比率で考えると、1180x808mmのスクリーンでおよそ5600×3770、1000x808mmのスクリーンでおよそ4750×3770という解像度になる(計算間違いがないことを祈っている!)。

 これで大画面ディスプレイの上限値は決まった、といいたいところだが、それに対応したソフトウェアの変更も必要になる。何かといえば、ウィンドウ右上の「最大化」ボタンのことだ。変形56インチのスクリーンで任意のウィンドウが一気に最大化され、画面全体に拡がってしまったら大変である。もちろんCADなどの仕事には都合は良いだろうが、一般のオフィスワークでは、そこまで最大化する必要はない。したがって、アプリケーションごとに、デフォルトのウィンドウサイズを指定できるようになっていなければならない。そのあたりはOS(とアプリ)の作業になると思うので、特にOSメーカーには、そのあたりまでの機能拡張を考慮しておいていただきたいと思う。

 このような感じで、パソコンディスプレイについて当面の目標と将来の目標とをいろいろと考えてきたが、さて、複数画面や大画面になった場合には、省エネルギーということにも配慮しなければならないだろう。小さな範囲だけで仕事が済む場合には、大画面の上である範囲だけを表示エリアにして電力消費を抑えるとか(本当に抑えられるかどうかは確かでないが)、いろいろと工夫する必要がでてくるだろう。また個人的にはキーボード入力の有効さを感じているので、デスクの上を文字通りデスクトップにしてしまうような方向性には賛成できないのだが、そういう発展の可能性も無くは無い。ともかくかなり奥の深い問題である。

公開:2012年7月24日
著者:黒須教授

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