「トクホ」vs「機能性表示食品」、購入の決め手は?
機能性表示食品に関する自主調査
店頭の棚に並びはじめた機能性表示食品ですが、トクホと類似した機能訴求の商品が多いのが現状です。メーカーやブランドといった選択基準を除いた時、同じ機能訴求とした「トクホ」と「機能性表示食品」の商品が並んだ場合、生活者はどちらを選択するのでしょうか。
(株)イードでは、2015年4月の制度施行後、「機能性表示食品注1」に関する自主調査を実施しました。
今回は、「特定保健用食品(以下トクホ)」 と 「機能性表示食品」を連想させるペットボトルの緑茶の画像を提示し、同デザイン、同一機能訴求の中、パッケージにおいて表示マーク(トクホマーク/機能性表示食品の表記)の違いがどの程度、購入の決定に影響を与えるのか調査しました。
注1 「機能性表示食品」は、国が定めた有効性などの基準を満たした「保健機能食品」の1つです。保健機能食品には、機能性の根拠などを国に届け出た「機能性表示食品」(2015年4月に制度施行)のほか、国が有効性などを個別に審査・許可した「特定保健用食品」、規格基準に適合すれば許可や届出が不要な「栄養機能食品」の3つがあります。
食品の「機能性表示制度」の認知状況7割を超える
食品の「機能性表示制度」について、施行から約3ヶ月が経った2015年7月の認知状況は、〈対象者全体〉で「聞いたことがあり 内容も知っている」(18%)、「聞いたことはあるが 内容までは知らない」(52%)と認知度は7割を超える結果となりました。
制度施行前である2015年3月に実施した調査では、認知度が46%であったことから、制度に関する認知は順調に推移していることがうかがえます。
しかし、依然として制度の内容まで理解している人は2割弱であるため、「機能性表示食品」という名称自体にトクホほどの効力はまだ期待はできません。
「健康を意識した商品を選ぶようにしている」人は約8割に
〈対象者全体〉で食品や飲料の選択時に健康を意識している人の割合は77%と高い結果になりました。この中で価格に対する意識別に見てみると、「健康を意識した商品でも価格を優先する」と回答した人は49%と約半数を占めました。
男女で比較すると、やはり女性の方が健康に対する意識が高く、また年代別では、年齢が高くなるにつれて、「価格は気にしない」と回答した割合が多くなっていました。
「健康食品」 利用者は5割弱
「健康食品注2」の利用状況は、45%の人が「サプリ」、「トクホ」、「栄養機能食品」のいずれかを現在利用しており、26%の人が何らかしらの理由で「健康食品」を中止している結果となりました。
注2 当調査における「健康食品」の定義は、「サプリなどいわゆる健康食品」の他、保健機能食品にあたる「特定保健用食品」と「栄養機能食品」を含めています。
価格提示前では、表示マークで差は見られず
「トクホ」を連想させる画像(P)を提示すると、購入意向は40%となり、その中でも「健康食品現利用者」の意向が高い結果となりました。
一方、「機能性表示食品」を連想させる画像(Q)を提示すると、購入意向は39%となり、「トクホ」と同様、健康食品現利用者の意向が高い結果となりました。
価格提示前における「トクホ」と「機能性表示食品」のマークの違いでは、購入意向の差は見られませんでした。
比較すると、トクホの表示マークが優勢
「トクホ」と「機能性表示食品」を連想させる飲料パッケージを同時に提示したとき、どちらを購入したいか聞いたところ、「トクホを買う」が17%、「機能性表示食品を買う」が9%と、8ポイントの差で「トクホ」が選ばれました。また「どちらかというとトクホを買う」、「どちらかというと機能性表示食品を買う」を含めると、「トクホ」が53%、「機能性表示食品」は47%と、こちらも「トクホ」が優勢という結果が得られました。
同一機能訴求ならば、表示マークよりも価格差が選択の決め手に
次に、価格も同時に提示し(トクホ:180円、機能性表示食品:150円)、どちらを購入したいかを評価してもらったところ、価格提示前とは逆転し、「トクホ」の購入意向が24%に対し、価格の安い「機能性表示食品」の購入意向が76%となりました。
また、価格提示前後で比較すると、「トクホ」から「機能性表示食品」に最も大きく変動したのは「健康食品中止者」でした。これは、健康食品を摂ることを中止した理由の一つとして、価格における障害があったのではないかと考えられました。
トクホの方を購入したいと選択した理由、過半数以上が「トクホだから」
価格提示後に「トクホ」を購入したいと回答した人に理由を聞いたところ、「トクホだから」(58%)、「効果がありそうだから」(42%)という理由が多くあげられました。
また、「健康を意識した商品なら価格は気にしない」と考えていた人の6割は、「効果がありそうだから」を理由に「トクホ」を選択していました。
逆に、「健康を意識した商品でも価格を優先する」と回答していた人の7割弱は、「トクホだから」という理由で選んでおり、価格以上に「トクホ」というブランドに魅力を感じている人が一定数いることがうかがえます。
「価格の安さ」 「価格に見合った製品」で選ばれる、機能性表示食品
価格提示後に「トクホ」ではなく、「機能性表示食品」を購入したいと回答した人に理由を聞いたところ、「価格が安いから」(54%)、「機能性表示食品だから」(19%)という理由で選ばれていました。
また、「健康を意識した商品なら多少高くても選ぶ」と回答した人の4割弱が「価格が安い」「機能性表示食品だから」を理由としてあげていました。
まとめ
現在、消費者庁で受理された機能性表示食品の届け出は70に及びますが、店頭に流通している商品数はまだ多くはありません。認知度は7割と少しずつ浸透はしてきていますが、内容まで理解している人は2割を下回り、まだまだ課題が多いといえるでしょう。
今回の調査結果の1つとして、価格は気にしないものとすると、「同じ機能訴求」、「同じデザイン」、で「表示マーク」だけが違った場合、消費者に浸透している「トクホ」のほうが「機能性表示食品」よりも選ばれるという結果となりました。
しかし、「同じ機能訴求」、「同じデザイン」であり、「トクホ」よりも「機能性表示食品」の価格が安い場合、結果は逆転し、明らかに「機能性表示食品」を選ぶ人の割合が増えました。
つまり同じ機能訴求であれば、価格差が選択の大きな決め手になると、この調査の結果は示しています。
最後に
属性ごとのクロス集計結果など、この調査の詳細はイードまでお問い合わせください。
さらに、質問項目を追加する、インタビューを加えるなどのオプショナルサービスも提供可能ですので、 下記ボタンよりお問合せください。
調査概要
- 調査手法
- WEBアンケートによる、シークエンシャルモナディックテスト注3
- 調査期間
- 2015年7月7日~7月8日
- 調査対象
- 20~60代
- 回収方法
- 性年代で均等割り付け
- 有効回答数
- 1,090サンプル
- 調査企画・実施
- 株式会社イード
注3 シークエンシャルモナディックテストとは、1人の対象者が複数の製品について評価を行うものです。評価方法として、1製品ずつ絶対評価を行った後、相対評価を行います。絶対評価と相対評価のどちらの結果も確認できる点で優れている手法です。
このほかにもイードのリサーチ事業本部では、さまざまな調査・分析を行っております。
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