Poynterのアイトラッキング調査の方法論的弱点

※2000年5月発表『ウェブリーダーのアイトラッキング調査』への補足記事

帯域幅が速すぎる

テストユーザは、インターネットへの高速な接続環境を持っている。ほとんどがT-1、つまり1.5Mbpsに近い速度で接続している。このような高速接続は、家庭ユーザではまれである。ビジネスユーザですら、たいていは他の事務所と回線を分け合って、T-1よりはずっと遅いものの、なんとか実用になる速度を確保しているのが普通だ。

現代のウェブデザインになんらかの示唆を与えようという調査なら、ユーザにはもっと遅い接続で奮闘してもらって、もっと現実に即した結果を出した方がいい。

この先5年から10年の未来の方向性を占おうという調査なら、Poynterが用いたような高速接続環境で調査するのは納得できる。同様にハイエンド・ユーザを対象にした調査であっても、納得できるだろう。もちろん、ハイエンド・ユーザとは言っても、多くの場合、出張先では、ホテルの一室からラップトップを用いて接続していることは覚えておいた方がいい。このような状況では、28.8Kbpsの速度が出ればまだいい方である。

すでにご承知の通り、この調査のもっとも重要な結果のひとつとして、ウェブ上でユーザがまず見るのはテキストであって、グラフィックは一部無視している、ということがあった。より現実的な条件のもとでは、この傾向はさらに強まるだろう。なぜなら、グラフィックが表示されるのに、もっと時間がかかるからである。調査で用いられた高速接続環境を考慮すると、この結果は、血迷った「アナリスト」への反証として使えるだろう。なにしろ彼らは、帯域幅さえ速くなれば、ウェブはテレビと同じになると主張しているのだから。

選択のバイアス

  • 被験者は新聞社ウェブサイトの告知記事で募集された(Chicago Sun-TimesおよびSt. Petersburg Times
  • 告知に応募してきた被験者を選別するあたって、週に3回以上オンラインでニュースを読んでいることが重要な条件とされた

こうしたアプローチをとったので、テスト・ユーザーがオンライン新聞に興味を持っていても不思議はない。

ユーザーの新聞閲覧セッションは毎回平均34分で、そのほとんどの時間を在来の新聞社のサイトで費やしている、という調査結果も、被験者選択の時点でこういったバイアスがかかっているために、一般化して考えることは不可能である。非在来のニュースサイトが好みだという人たちは、どうやら調査対象には含まれていないようだ。また、ニュースを読む時間はごくわずかだという人は、募集告知を目にして応募した可能性が低いから、回答者になった公算も低い。

広告注目率

驚くような調査結果の中には、ユーザーは45%のバナー広告を見ているというものも含まれている。ところが、ユーザは1広告あたり平均でわずか1秒しか費やしていないのだ。

他で実施された数多くの調査結果が、バナー無視の傾向を明らかにしている。この中には、合衆国と欧州の両方で実施されたアイ・トラッキング調査も含まれている。さらに、ここ5年の間、年を追うごとにクリック率が劇的に低下しているというのがなによりの証拠だ。1995年には2%だったものが、今では0.2%にまで下がっている。何億人ものウェブ・ユーザーの行動を集計した結果が、ウェブ上の広告が無視されているという事実をはっきりと物語っているわけだ。

今回の調査が、常識や、今までの調査結果の大部分と矛盾しているのはなぜだろう?考えられる理由はこうだ。

  • 被験者は、新聞社サイトでの告知により募集された。だから、はじめから彼らはバナーを見る習慣があると自認する数少ないサンプルのひとりだったのかもしれない。なぜなら、小さな告知記事に目をとめ、応募してくるのは、そういう人の方が可能性は高いからだ。
  • テスト用タスク自体が、ユーザにいつもよりじっくりとウェブページをみるように仕向けるものだった可能性もある(いくら「普段と同じようにやってください」と言われても、実験対象になり、おでこにカメラを装着されていれば、ユーザは慎重な行動を取りたくなるものだ)。
  • WebWasherのような広告防止ソフトがインストールされていないので、そもそもユーザに対して広告が表示されるようになっている。こういった新しい製品を利用している人は、まだ数百万人ほどにすぎないので、標準的なブラウザを使って、広告が表示できる環境でウェブ・ユーザーテストをするのは、現状では正しい判断だろう。
  • 1秒もあれば、それが広告かどうか見分けて無視するかどうか判断するには十分だ。確かに、そんな短時間では、バナー広告でよくある絶え間なく動き続けるアニメーションが1サイクル回るだけの暇はないだろう。

2000年5月14日

公開:2000年5月14日
著者:Jakob Nielsen

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