決定的なWebの利用目的:
収集・比較・選択
最近行われた決定的要因の分析によれば、ユーザにとってもっとも重要なウェブ上のタスクは、複数の情報の収集と比較に関連するものであり、通常これは、選択を目的として行われる。
昔から、決定的要因分析は、既存のユーザインターフェイスに関して、ユーザのフィードバックを集めるのに適した手法だ。これは基本的には、特に有用だったり、あるいは特に失望させられたという事例のうち、目ぼしいものをユーザに思い出してもらうという手法である。私は通常、ユーザにプラスとマイナスの両方の実例を答えてもらう。こうして得られる回答は、ユーザがどのようにシステムを利用しているか、どうすればある局面を多少なりとも改善できるか、といった点を理解する上で間違いなく役に立つ。
残念ながら、決定的要因分析は、多くのウェブプロジェクトではあまり有用と言えない。主な理由は2つある。
- サイトや、新しい機能がまだ存在していない。このためユーザはこれを利用するという実体験を積んでいない。
- ウェブサイトでは、企業にとっては致命的なことが、ユーザにとってはそうでもないことが多い。彼らにとっては、単にそこを立ち去って、他のサイトへ行くだけのことだからだ。1~2分もたてば、ほとんどユーザは、そのサイトを去った理由など忘れてしまう。送料がいくらかわからなかったのでショッピングカートを途中で放棄してしまったとしても、それは記憶細胞に焼き付くほどの大した事件ではない。アナリストの中には「ユーザはなぜショッピングカートを放棄してしまったのか」といった調査を発表している者もいるようだが、こういった調査にはあまり価値がないというのは、これが理由だ。
ウェブの決定的要因に関するXerox PARCの調査
最近、Xerox PARCの研究者たちが、あらゆる決定的要因の元締めとなる調査結果を発表した。大きな課題: 全体的に見て、人々がウェブで行うもっとも重要なことは何か?個々のウェブサイトでは十分な決定的要因を満たせなくても、ユーザのオンライン体験の総体としては、確かにこれが満たされている。
Julie Morrison、Peter Pirolli、それにStuart Cardは、以下の設問に関して2188名の回答を得た。
最近、World Wide Webで重要な情報を見つけたときのことを思い出して下さい。何か重要な行動や決断につながった情報でもけっこうです。
この要請(ひいては決定的要因という手法そのもの)には明らかに弱点がある。それは、これが平均的なウェブの利用状況を代表するものではないことだ。ここでは重要な利用法だけにしか目を向けていない。例えば、決定的要因としてニュースを読むことを挙げた人は、回答者のうちわずか2%しかいなかった。ところが、別の調査で、同じユーザにウェブ上で行っていることを尋ねたところ、定期的にニュースを読んでいると答えた人が24%いた。
だが、このバグは、機能にすり替えることが可能だ。ユーザがウェブで重要だと考えているのが何か知ることには、いくつかの利点がある。
- 決定的なタスクの方が、平均的なタスクよりもユーザに課金できる付加価値サービスになる見込みが高い。
- 重要なタスクをサポートすれば、ユーザは日常的なタスクを処理するのにまずそこへ向かう可能性が高い。
- ユーザにとって何が重要かを理解すれば、ウェブでは、何が違って、何がエキサイティングなのか、についての洞察を得られるだろう。これがイノベーションを誘発してくれるかもしれない。
メインの手法: 目的指向の収集
PARCの研究者たちは、どのようにして決定的なタスクに必要な情報にたどり着いたのか、そのやり方をユーザに説明してもらった。この回答を分析すると、以下のような結果が得られた。
- 収集: 71%。複数の情報を探す。特定の目的を指向しているものの、単一の答を探しているわけではない。
- 検索: 25%。特定の何かを探す。
- 探索: 2%。これといった目的なく見て回る。
- 監視: 2%。同じウェブサイトに繰り返し訪れ、最新の情報を得る。訪問は特に目的を持ってというよりは、定期的行動として行う。
もっともはっきりした結論はこうだ。ウェブの決定的な利用法ということに関する限り、ユーザはほぼ間違いなく目的指向である。PARCの調査では全体の96%がこれにあたる。このことはすでに常識となって久しいが、このパーセンテージの大きさには、私ですら驚かされた。
複数の情報を見つけることの方が、単一の情報を見つけるよりも、ほぼ3倍ほどユーザにとって重要性が高いというのも興味深い。ブラウジングというパラダイムは、全体として特定の場所にアクセスするのに最適化されている。ひとつ以上の答を集めようと思ったら、普通、ユーザは自分でやるしかない。
メインタスク: 比較と選択
この調査では、回答者にとってウェブの重要な利用目的を、以下のように分類している。
- 比較/選択: 51%。複数の製品や回答を評価して決断を下す。
- 獲得: 25%。事実や文書や製品情報を得たり、何かをダウンロードしたりする。(注意: Morrison他は、これらのタスクを表わすのに「検索」という用語を用いているが、私は「獲得」という用語を選ぶ。すでに論じたように、目的と手段を差別化するのが狙いだ。)
- 理解: 24%。ある話題についての理解を深める。この中には、事実や文書の探索を含めるのが一般的だ。
このように、タスクとして重要なものは、複数の選択肢から何かを選ぶもの、単一の選択肢を追及するもののの間で、ほぼ均等に分かれている。
ユーザビリティへの教訓: 3Cテスティング
ウェブのもっとも重要な用途は、3つのC、すなわち収集(collect)、比較(compare)、選択(choose)で言い表わされる。この結果、ウェブサイトのユーザビリティ調査を計画する際には、テストタスクの中に、確実にこれらの問題が含まれているようにしておく必要があるだろう。
もちろん、ユーザビリティ調査では、よりシンプルなタスクでのテストも行った方がよい。ウェブの利用においては、重要度の低い側面といえども軽視すべきではない。なぜなら、ユーザはそういったことの方により多くの時間を割いているからだ。だが、この3Cを満足にサポートできていないウェブの現状を考えれば、ここにもっと焦点をあてる必要があるだろう。そうすれば、ユーザが一番重要なタスクを達成する上で、役に立つものができるはずだ。
参考文献
Morrison, J.B., Pirolli, P., and Card, S.K. (2001): “A Taxonomic Analysis of What World Wide Web Activities Significantly Impact People’s Decisions and Actions.” Interactive poster, presented at the Association for Computing Machinery’s Conference on Human Factors in Computing Systems, Seattle, March 31 – April 5, 2001, pp. 163-164.
(私に抜き刷りを要求してこないように: こういう時のために図書館というものがあるのだから)
2001年4月15日