ユーザーエクスペリエンス調査、どの手法をいつ使うべきか

現在のユーザーエクスペリエンス(UX)の調査手法は、広範囲に渡る課題に答えることができる。20の手法それぞれをいつ用いるべきかを理解するために、3つの軸と、典型的な製品開発フェーズで整理した。

ユーザーエクスペリエンスの領域は非常に幅広い調査手法に恵まれている。ラボベースのユーザビリティ調査のような実証済みの手法から、より最近開発された、モデレーターなしのオンラインUX評価のような手法まで様々だ。

こうした手法を特定のプロジェクトにフルセットで用いるというのは現実的ではない。しかし、調査手法を複数利用し、複合的な知見を得るのは、ほとんどすべてのプロジェクトにとってメリットがある。とはいえ、残念ながら、デザインチームの多くは自分たちがよく知っている手法を1つか2つ用いるだけだ。そこで最も問題となるのは、どの手法でいつ調査するか、である。どれをいつ利用すべきかをより良く理解するには、以下の軸を持つ3軸構造に従って考えるとわかりやすいだろう:

  •    態度 vs. 行動
  •    質 vs. 量
  •    利用の状況

以下のチャートは、一般的な20の手法が、これらの軸のどこに位置するかを図示したものだ:

図 3軸で分類した、20のユーザー調査手法
図 3軸で分類した、20のユーザー調査手法

それぞれの軸により、それぞれが答える調査課題と最適な目的という観点から、調査ごとの特徴を理解することができる。

態度-行動の軸

態度と行動の違いは、「何を言うか」と「何をするか」の違い(かなり異なることが多い)とまとめることができるだろう。態度を見る調査の目的は、通常、人々が標榜している信条の変化を理解あるいは把握することにある。態度を見る調査がマーケティング部門で多用されている所以である。

ほとんどのユーザビリティ調査が、行動に拠り所を求めてはいるものの、自己申告による情報がデザイナーにとって非常に有用であるケースも少なくない。たとえばカードソーティングは、ある情報空間に関するユーザーのメンタルモデルについて深い理解が可能になり、自分たちの製品、アプリケーション、あるいはWebサイトにとって最良の情報アーキテクチャを決定する手助けとなる。アンケートは態度を計測するか、サイトに関する重要な問題を調査、もしくは発見するのに役立つデータを収集する。様々な理由により、目的がユーザビリティの場合、フォーカスグループの有用度は低下する傾向がある。しかし、それはあるブランドや製品のコンセプトについて考えるときに、ユーザーがまず何を思い浮かべるか、ということをグループという環境で示してくれる。

この軸のもう一方には、主として行動にフォーカスする手法が位置しているが、これは製品やサービスを使って「人々が何をするか」を理解しようとするものだ。たとえば、A/Bテストは、サイトデザインの効果を行動から判断するため、ランダムサンプリングしたサイト訪問者に異なったサイトデザインを提示するが、その他はすべてそのままにしておく。他方で、アイトラッキングは、ユーザーがどのようにインタフェースデザインと視覚的にインタラクトするのかを理解しようとするものである。

これら2種類の方法の間には、我々が用いる最も一般的な手法が2種類ある:すなわちユーザビリティ調査とフィールド調査だ。これらは自己申告と行動のデータの双方を用いて、態度と行動のいずれかを重視することができるが、一般的には行動に重きを置くことが推奨されている。

定性-定量の軸

ここでは区別の仕方が重要だ。それは、定性的とは自由記述式のアンケート質問のような「制約がないもの」である、といった狭い見方にとどまるものではないからである。それどころか、定性的な性格を持つ調査では、行動や態度の直接的な観察に基づいて、そうしたものについてのデータを作成する。ところが、定量的調査では対象とする行動や態度についてのデータは、測定やアンケート、アクセスログ解析ツールといった手段を通して、間接的に収集されるものである。フィールド調査とユーザビリティ調査においては、たとえば、リサーチャーは、人々が自分たちのニーズを満たすため、どのようにテクノロジーを利用するか(あるいはしないか)を、直接観察する。これによりリサーチャーは、質問したり、行動を深く観察したり、ときには調査の目的によりフィットするよう、調査手順を修正するといったことが可能になるのである。データの分析は通常、数学的ではない。

これとは対照的に、定量的手法では数学的解析により理解を深めるのが典型的なパターンだ。何故ならデータを収集する手段(たとえばアンケートツールあるいはウェブ・サーバ・ログ)は、数値に容易にコード化された大量のデータを収集するからである。

このような本質的な違いにより、定性的手法は、なぜ問題が起こり、どのように修正すべきなのかという調査課題に答えるのにより適しており、定量的手法はどのくらいの数の、あるいはどの程度のといった種類の課題に対する答えを得るのにより適していると言える。後者から数値を得ることで、リソースに優先順位が付けられるようになり、たとえば、最も影響の大きい課題に対してリソースを集中できるようになる。以下のチャートは、以上の2つの軸が問うべき質問の種類にどのような影響を及ぼすかを示している:

図 各調査手法で答えが出る調査課題の2軸
図 各調査手法で答えが出る調査課題の2軸

製品の利用状況

3つめの分類は、参加者がその調査で製品やサービスを利用するのかしないのか、利用するとすればどう利用するのか、ということに関係している。これは以下のように説明できるだろう:

  • 自然に、あるいはほぼ自然に製品を利用する
  • 決められた手順で製品を利用する
  • 調査中に製品を利用しない
  • 上記の組み合わせ

製品の自然な利用を調査する際、そのゴールは、できるだけ現実に近い行動や態度を理解するため、調査からの影響は最小限にとどめることにある。こうすることで調査の妥当性を向上させつつ、知ることになるトピックが何になるかをコントロールしないですむようになる。観察には必ず多少の偏りが見られるものの、多くのエスノグラフィックなフィールド調査ではこのような手法をとっている。インターセプトアンケート、データマイニング、あるいは他の解析は、このような自然で定量的なテクニックの例だ。

決められた手順で製品を利用する手法は、再設計を行ったフロー上でなど、非常に限定された方法での観察にフォーカスするために用いられる。手順を準備する度合いは、その調査の目的次第でかなり多様に設定することができる。たとえば、ベンチマーク調査というのは通常、非常にきっちりとした手順を持つ、かなり定量的な性質のものである。その結果、信頼性の高いユーザビリティ指標を得ることができる。

製品を利用しない調査は、利用法やユーザビリティよりも広範な問題を調べる、たとえばブランドやより大きな文化的態度の調査などのために実施される。

これらの手法を組み合わせたハイブリッド法は、調査の目標に合うように製品をクリエイティブに利用する。たとえば、参加型デザイン手法では、ユーザーに製品エクスペリエンスの一部になるかもしれないデザイン要素に触れてもらい、再構成してもらうが、その目的はユーザーの提案するソリューションだと彼らのニーズにどのようにもっと合うのか、そして、なぜそういう選択をしたのかを議論することにある。コンセプトテスト法では、ユーザーがある製品やサービスを欲しがったり、必要とするかどうかを知るために、その製品やサービスが提供することになるものの本質(細かいエクスペリエンスではない)を表現したラフ案が用いられる。

チャートにあるほとんどの手法は、1つかそれ以上の軸を移動するものである。通常、複数の目的を満たしたい場合などには、同一の調査内でそうする場合もある。たとえば、フィールド調査は、人々が何を言うか(エスノグラフィックインタビュー)、あるいは彼らが何をするか(広範な観察)にフォーカスすることができる。デザイラビリティ調査とカードソーティングには、定性的、定量的、両方のバージョンがあるし、アイトラッキング調査は、決められた手順でも、手順を決めないやり方でも行える。

製品開発のフェーズ(時間軸)

様々な調査手法の中から選択する際に重要となるもう1つの分類は、製品開発のフェーズとその目的である。

  1. 戦略策定: 製品開発の最初のフェーズでは、新しいアイディアや今後の機会について考えるのが一般的だ。このフェーズでの調査手法は非常に多様である。
  2. 実行: このフェーズは選択したデザインの方向性を引き続き改善する時期であり、最終的に「決行か中止か」の決断を行うポイントに到達する。このフェーズでの調査は主として形式的なもので、制作のリスクを軽減するのに役立つ。
  3. 評価: ある時点でその製品やサービスを十分な数のユーザーが利用できるようになり、その結果、自分たちのやっていることがうまくいっているかどうかが測定できるようになる。こうした手法は通常、累積的な性質のものなので、その製品自身の過去のデータや競合品のそれと比較して行われることもある。

以下の表は、これらのゴールをまとめており、典型的な調査アプローチとそれぞれに関連する手法をリストアップしている:

製品開発のフェーズ
戦略策定 実行 評価
目的 新しい方向および機会を示唆し、調査し、選択する リスクを軽減し、ユーザビリティを改善するため、デザインを提示し最適化する 製品のパフォーマンスを、それ自身あるいは競合と比較する
アプローチ 定性的・定量的 主として定性的
(形成的)
主として定量的
(総括的)
典型的な手法 フィールド調査、
日記法、
アンケート、
データマイニングまたは解析
カードソーティング、
フィールド調査、
参加型デザイン、
ペーパープロトタイプおよびユーザビリティ調査、
デザイラビリティ調査、
顧客のEメール
ユーザビリティベンチマーク、
オンライン評価、
アンケート、
A/Bテスト

技術か科学か?

多くのユーザーエクスペリエンス調査手法が、科学的な実践にその基礎を置いているが、これらの目的は完全に科学的なものではなく、ステークホルダーのニーズを満たすよう調整する必要がある。ここでの手法の特徴づけが、厳密な分類というよりはむしろ、一般的なガイドラインとなっているのはそのためだ。

結局のところ、こうした調査の成功は、対象となるウェブサイトあるいは製品のユーザーエクスペリエンスの改善に、その調査がどれだけ影響を与えるかで決まることになる。これらの分類は、なすべきときに最良の選択をする役に立つはずだ。

20のUX手法の概要

以下、上の表で示したユーザー調査手法を簡潔に説明する:

ユーザビリティラボ調査: 参加者はラボに呼ばれて、リサーチャーと1対1で、製品やサービス内の特定の対象箇所のタスクや利用につながる一連のシナリオを与えられる。

エスノグラフィックフィールド調査: 調査参加者の普段の環境で、リサーチャーが彼らに会って、調査を行う。行った先で彼らは対象となっている製品やサービスに対面することとなる。

参加型デザイン: 参加者にデザイン要素や物作りのための材料を与えて、理想的なエクスペリエンスを具体的に作成してもらい、彼らにとって何が最も重要かということと、その理由を表現してもらう。

フォーカスグループ: 3~12人の参加者によるグループを一連のトピックについての議論に導き、議論や課題への取り組みを通じて、口頭や書面によるフィードバックを得る。

インタビュー: リサーチャーが参加者に1対1で会い、対象のトピックについて彼らがどう思うかを掘り下げて議論する。

アイトラッキング: アイトラッカーによって、Webサイトやアプリケーション、物理的な製品や環境を利用して、タスクを実行したり自然なインタラクションをする際に、参加者がどこを見ているか、正確に測定する。

ユーザビリティベンチマーク: きっちりとした手順を決めて行うユーザビリティ調査で、それなりの数の参加者を対象に実施する。既定の明確なパフォーマンス指標を用いる。

モデレーターありの遠隔ユーザビリティ調査遠隔地で行われるユーザビリティ調査で、画面共有用のソフトウェアやリモートコントロール機器のようなツールを用いる。

モデレーターなしの遠隔パネル調査: トレーニングを受けた参加者が、自分の機器に録画やデータ収集のソフトウェアをインストールして、考えていることを発話しながら、Webサイトや製品を利用する。彼らのエクスペリエンスは記録され、リサーチャーや企業によって、即、再生・分析できるようになっている。

コンセプトテスト: 新しいコンセプトや製品の本質(バリュープロポジション)をとらえた製品やサービスの概案をリサーチャーから提示し、それがターゲットオーディエンスのニーズに合っているかを確認する。1対1でも、もっと多い参加者でも可能だし、対面でもオンライン経由でもできる。

日記あるいはカメラ調査: 参加者は(日記あるいはカメラという)方法を与えられ、ある製品やサービスに関連する部分、あるいはシンプルにターゲットオーディエンスとしてのコアな部分の、彼らの生活を記録し、記述する。日記調査は通常、長期間にわたるため、参加者が記録しやすいデータのみを対象に行う。

顧客からのフィードバック: 自由記述あるいは選択式の情報で、ユーザー自身の選択によって提供される。フィードバックリンクやボタン、入力フォーム、Eメール経由であることが多い。

デザイラビリティ調査: 様々なビジュアルデザイン案を参加者に提示し、各案とリストアップした属性の選択肢を組み合わせてもらう。この調査は定性的にも定量的にも実施可能である。

カードソーティング: ユーザーに、アイテムをグループ分けしてもらい、各グループにカテゴリー名を付けてもらう手法で、定量的にも定性的にも実施可能。この手法はユーザーのメンタルモデルを明らかにすることによって、サイトの情報アーキテクチャの作成あるいは改善を支援する。

クリックストリーム分析: サイトやソフトウェア製品の利用時に、ユーザーがクリックして見た画面やページの記録を分析する。そのためにはサイトに適切なツールが搭載されていること、またアプリケーションなら遠隔測定データの収集が可能になっていることが必要である。

A/Bテスト(別名「多変量テスト」、「ライブテスト」、「バケットテスト」): サイト上で様々なデザインを科学的にテストする手法で、無作為に割り当てられた複数の参加者グループにそれぞれ別のデザインとインタラクトしてもらい、この課題のユーザー行動に対する影響を測定する。

モデレーターなしのUX調査: (参加者のコンピュータやブラウザにインストールしたソフトウェアを通して)彼らの行動と(埋め込みの質問項目を通して)態度を把握する、専用の調査ツールを利用した、定量的あるいは定性的な自動計測手法。通常、参加者にはサイトやプロトタイプを使って達成するための目的やシナリオが与えられる。

真意調査: 無作為に抽出したサイト訪問者に対して、サイト入場時にそのサイトに来た目的や意図について質問し、その後の彼らの行動を測定して、目的がうまく達成できたかどうかをサイト退出時に質問する手法。

インターセプトアンケート: サイトやアプリケーションの利用中に自動的に始まるアンケート。

Eメールアンケート: 参加者をEメールでリクルートするアンケート。

詳細なトレーニングコース

有用な手法や軸について、さらに詳しくは1日トレーニングコース「ユーザー調査手法: 戦略から要件、デザインまで」にて。

さらに学ぶ

調査レポート(英文)

公開:2014年11月17日(原文:2014年10月12日)
著者:Christian Rohrer
原文:When to Use Which User-Experience Research Methods

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