給与調査:
ユーザーエクスペリエンスのプロは高収入
ユーザーエクスペリエンス(UX)のプロ1078名を対象にした調査の結果、ユーザビリティ専門家は、同じ分野のデザイナーやライターよりも多くの収入を得ていることがわかった。これら3エリアのうちで、もっとも給与の高かったのは合衆国であり、カナダおよびアジアではこれより少なく、ヨーロッパおよびオーストラリアではさらに低い。
最近ではユーザビリティは高収入の職業になっている: カリフォルニア在で経験5年のユーザビリティ専門家の推定現金収入は、年9万118ドル。これにはストックオプションやその他の諸手当は含まれていない。
この数字は今回の調査でのハイエンドに位置するものだ。この調査では、2000年11月から2001年4月にかけて開催されたUser Experience World Tourに参加したプロフェッショナル1078名から収集した給与データを詳細に分析した。カンファレンス参加者は2682名だったので、回答率は40%ということになる。ハイエンドのプロ向けカンファレンスの参加者を対象に調査したので、このデータもおそらく有能なユーザ体験プロフェッショナルの給与を反映したものになっていると思われる; それほど力のないスタッフだと、このようなイベントへの参加は認めてもらえそうにないからだ。
回答者に対して私たちが求めたのは、給与とボーナスを含めたトータルでの年収; この中にはストックオプションやその他の諸手当は含めなかった。近頃ではほとんどのストックオプションが地に落ちてしまったわけで、いずれにしろ、現金収入がもっとも重要な数字になるだろう。
ユーザビリティ専門家: 年収
給与データを多重回帰分析した結果、下記のような推定値が出た。これは、ユーザビリティ専門家の初任給を、世界各地域別に示したものである。真ん中の列は米ドル換算での数字、右列は、同じ額を各国の通貨に直したものである。換算率はデータ収集時のレートによった。
合衆国 | 67,118ドル | |
カナダ | 49,866ドル | 74,796カナダドル |
アジア | 49,297ドル | 5,709,579円 |
ヨーロッパ | 36,166ドル | 41,476ユーロ |
オーストラリア/ニュージーランド | 35,961ドル | 68,321豪ドル |
アジアでの回答者は、ほぼ全員が日本、香港、台湾、韓国、シンガポールで働く人たちである点に注意していただきたい。もっと貧しいアジアの国々では、給与はこれより低いだろう。
デザイナーおよびライターの収入は低い
この調査では、ユーザビリティ専門家の収入と合わせて、他のユーザ体験関連の職種からもデータも集めた。結果はどうだったか?ユーザビリティ専門家の年収に比較すると、
- デザイナーの収入は6181ドル低く、また
- ライターの収入は9709ドル低い。
この推定値は、地理的ロケーション、職務上の地位、経験年数を考慮した多重回帰分析にもとづいた値である。よって、職務上の肩書きが「デザイナー」の人は、「ユーザビリティ専門家」という肩書きの人よりも、平均して6181ドル、収入が低くなると見込まれるわけだ。
ひとくちにデザイナーと言っても、その内容は様々だ。だが、調査を簡潔にするため、プロのインタラクションデザイナーを、グラフィックデザイナーや、その他のウェブデザイナーと区別するということはしなかった。
経験者はさらに高収入
職務経験を積むにしたがって、毎年2265ドルずつ収入が増加する。よって、経験5年の人は、上記の表に示した初任給よりも平均して1万1325ドル多くの収入を得ることになる。
個別スキルの影響
完全な多重回帰分析を施しても、回答から得られた給与のばらつきのうち44%しか吸収しきれなかった。換言すると、給与のばらつきのうち44%は、職務内容、地理的ロケーション、経験年数から説明できたということである。残りの給与のばらつきの56%は、他の要因から説明しなければならない。
直観を頼りに言うと、残りのばらつきの大部分は、おそらく個人的スキルの違いで説明できるはずだ。他の人よりも物事をうまくこなせる人というのはいるもので、ユーザ行動を理解する能力とか、それがデザインに与える影響といったものは、単にその仕事を何年やっているかだけで決まるものではない。
残念ながら、サーベイ調査で、簡単に職務能力を査定する方法が見つけられなかった。私たちの間では、ジョークでこんな設問を追加しようかと言う話も出た。「あなたは有能ですか?」。回答は「1=しょっちゅうヘマをやる」から「5=仕事は常に完璧」までのいずれかを選択する。だが、現実にはスキルを計ろうと思ったら、被験者に試験を受けてもらうか、上司の査定を見せてもらうしかない。いずれにしても、回答率はかなり低くなったことだろう。
それだけの値打ちがあるのか?
ユーザ体験のプロには、高額な給与に見合うだけの価値があるのだろうか。もちろんである。それどころか、ライターの給与は、すぐにでも引き上げるべきである。オンラインライティングは、単なるコンテンツとは違う。ほとんどのサイトにとって、核となる価値であり、ユーザがまず目を向けるものがこれなのだ。ライターの価値は、回答者が現在得ている給与よりも、間違いなくずっと高い。
当然ながら、ユーザビリティ専門家の給与の正当性は、ずっと説明しやすい。彼らの仕事は、採算に直接貢献するからである。業務指向のサイトなら生産性が向上するし、マーケティング指向のサイトなら転換率が向上する。例えば:私たちは、最近、ある企業のイントラネットサイトを調査したが、そこで見つかったユーザビリティ問題をたったひとつ修正しただけで、その企業に、推定で年33万ドル分の従業員の生産性向上をもたらした。
参考: 詳細なデータ分析を販売中
ユーザ体験専門家の給与に関するこの他の統計分析や表は、14ページのレポートとしてダウンロードできるようになっている。
完全版のレポートには、各地域(合衆国、ヨーロッパ、英国、アジア、オーストラリア)ごとの給与推定に特化した多重解析モデル、それに国家や州による差額の見積りも含まれている。驚くに値しないことだが、他の地域に比べて、給与面でニューヨーク、カリフォルニア、ロンドン、それに香港での仕事はかなり高収入になっている。
2001年5月27日