アクセシビリティを超えて:
障碍を持つユーザも対等に扱おう

現在の一般的ウェブデザインでは、障碍を持たないユーザは、全盲もしくは視力の低い人に比べて3倍高いユーザビリティを体験している。ユーザビリティガイドラインに従えばこの問題をかなり改善でき、障碍を持つユーザがウェブサイトやイントラネットで行うタスクの効率を高めることができるだろう。

そろそろ、技術的アクセシビリティから一歩進んで、障碍を持つユーザに向けてのウェブ改善を議論すべき時だ。これらのユーザをユーザとして、すなわち片付けなくてはならない仕事や達成すべきゴールを持って、ウェブサイトやイントラネットを利用する人としてとらえるべきなのである。技術的アクセシビリティが達成できたら、次なるゴールとして、障碍を持つユーザに対するタスクのサポートや、ウェブサイト/イントラネットのユーザビリティ向上を考えるべきだ。

もちろん、障碍を持つユーザには障碍がある。ほとんどの人は、ウェブアクセスに際して補助的なテクノロジーを利用しているはずだ。当然ながら、ウェブサイトは、画面読み上げ、画面拡大といった代替的ユーザインターフェイス機器を通じてアクセスできるようになっていなければならない。ウェブサイトやイントラネットで提供している情報・サービスにたどり着けなければ、利用できるはずもないのだ。だが、あるデザインが理論的にアクセシブルだからといって、それが使いやすく、学びやすく、また業務効率を効果的にサポートできるものとは限らない。

3倍高いユーザビリティを享受する非障碍者ユーザ

最近私たちが行った大規模なユーザビリティ調査では、合衆国と日本の19のウェブサイトにおいて、84名の全盲もしくは低視力、あるいは運動障碍を持つユーザがさまざまなタスクを達成する過程を観察した。また、対照グループとして、障碍を持たないユーザ20名でもテストを行った。

私たちは、デザイン上のユーザビリティにフォーカスした。ユーザの足を引っ張ったり、混乱させたり、エラー(ウェブサイト内の間違ったエリアに行ってしまう、など)の原因となったりするデザイン要素はどれか、同定しようと考えたのである。いつものように、定性的な調査から学んだことが一番大きかった。考えたことを発話しながらサイトを利用してもらうよう、ユーザにお願いしたのである。同時に、4つのタスクについて、測定値の統計も収集した。

  • 物品購入:www.target.com で Janet Jackson の CD『All for You』を購入する。
  • 情報取得:www.transitchicago.com を利用して、O’Hare 空港発のバスで Chicago のある住所へ行くものを探す。
  • 比較検討:www.schwab.com を使って、ある条件を満たす投資信託を探す。
  • 事実検索:Texas 州 Dallas の1月の平均気温を調べる(このタスクでは、どのサイトを利用するかは参加者の判断にまかされた)

以下の表は、これらタスクについて4つのユーザビリティ指標を、画面読み上げを利用している人(主として全盲の人たち)、画面拡大を利用している人(低視力の人たち)、対照グループとなる障碍のないユーザの、3つのユーザ群ごとに平均したものである。

画面読み上げ
ユーザ
画面拡大ユーザ 対照グループ
(障碍なし)
成功率 12.5% 21.4% 78.2%
タスク達成時間
(分:秒)
16:46 15:26 7:14
エラー 2.0 4.5 0.6
主観的評価
(1~7段階)
2.5 2.9 4.6

対照グループの成功率は78%。私たちが行った他の調査での成功率のほとんどを上回る、かなり高い数値だ。ウェブユーザビリティでの成功率は通常40%から60%なので、今回の対象グループでの78%という平均値は、今回のテストタスクが他の調査よりやや簡単なものだったことを示している。同時に、これらのタスクは簡単すぎるということもなかった。対照グループの中にタスクを達成できなかった人がたくさんいたし、タスク達成時間の平均が7分を超えていることからもそれはわかる。

以下の表は、対照グループの効率を、障碍を持つユーザ群ふたつの平均と比較したものである。この表では、障碍を持つユーザのユーザビリティを100%とした。対照グループの体験したユーザビリティは、このレベルとの比で正規化されている。数字が大きいほどユーザビリティが高いことを示している(成功率の高さ、タスク達成の速さ、エラーの少なさ、満足度の高さ)。

障碍のないユーザの
相対スコア
成功率 478%
タスク効率 222%
エラー防止 481%
主観的評価 172%
全般的ユーザビリティ
(幾何平均)
306%

この表が示すとおり、現状のウェブのユーザビリティは、障碍のあるユーザより、障碍のないユーザの方が約3倍も高い。これは相当な違いである。ユーザビリティテスティングで通常見られる数値より、はるかに大きい。

機会均等は合理的な目標といえるか?

私たちの調査に関して、障害を持つユーザが他のユーザより3倍ひどい扱いを受けているとしても、たいした問題とはいえないという意見もあった。この説によれば、いずれにしろ障碍者は何らかの困難を予期しているはずであり、基本的なアクセシビリティが確保され、とりあえず使えるようになっているだけでも感謝してしかるべきではないか、というのだ。こういった批評家の言うとおり、障碍のあるユーザにも、ないユーザにも、等しく使いやすいウェブを作るというのは非現実的な目標である。

真の意味で等しいユーザビリティを達成するのは困難であるという点に関しては、私も認める。言い換えると、障碍を持つユーザにとって使いやすいウェブサイト/イントラネットを作るためのユーザビリティ勧告をすべて守ったサイトですら、上記の表の数値が100%になることはないのかもしれない

とはいえ、障碍を持つ人を3倍も悪い扱いにするというのは、容認できないレベルの差別だ。ウェブデザインにおけるユーザビリティ問題を減らすことで、はるかに高いレベルに到達できるはずだ。完全な理想には到達できないかもしれないが、ユーザビリティにフォーカスすれば、現状のウェブサイト/イントラネットのひどい状態と比較して、障碍者のユーザ体験をかなり改善できよう。

私たちのレポートでは、障碍者ユーザにとってウェブユーザビリティ低下につながる数多くのデザイン上の欠陥を挙げている。言い換えると、このユーザビリティガイドラインに従ってデザインを変更することで、障碍の有無によるユーザビリティの格差を縮めることができるはずである。現状は行き止まりではない。改善の余地はあるのだ。

ユーザビリティ問題の大部分は、ごく簡単に修正できる。デザイナーが、サイト構築にこのユーザビリティガイドラインを心得ていれば、なおさら簡単だ。間違ったデザインを後から修正する方が高くつく。だが、(イントラネットにおける)従業員の生産性や(公開ウェブサイトにおける)顧客関係を重視する企業なら、その価値は充分ある。

たとえ話として、車椅子で建物に入る人のことを考えてみよう。

  • 上手に設計された建物では、アクセス斜路が街路から直接正面ドアにつながっていて、これがエレベータの近くまで続いている。こういった建物では、訪問者は車椅子の有無に関わらず、例えば7階にある会議室に同じ時間でたどり着ける。
  • アクセス斜路が建物の裏口にあると、車椅子の訪問者は建物を回りこんで入場し、かなりの時間をかけて1階を横断した後に、ようやくエレベータにたどり着くことになる。理論上たしかに7階の会議室はアクセシブルではあるが、この建物の設計はあまりよいとはいえない。街路から歩いて入場し、数秒でエレベータにたどり着ける人に比べて、車椅子の訪問者の扱いはいちじるしく悪くなっている。

ユーザビリティとは、単にあるタスクを達成することが可能かどうかという問題にとどまらない。どれくらい簡単に、そして迅速にできるかということも、同様に重要なのだ。

企業や政府代理人は、アクセシビリティを単なる規制への準拠という面でしか考えず、技術的仕様としか見ていない。障碍者の業務遂行や顧客のニーズをサポートする手段としてとらえない限りは、機会均等は絵に描いたモチにしかならないだろう。ウェブサイトやイントラネットをユーザビリティ原則に従ったものにして、障碍を持つ顧客や従業員にとってタスクを達成しやすいものにしなければならない。

くわしくは

ウェブサイトやイントラネットを改善し、障碍を持つユーザにとってユーザビリティの高いものにするための75のデザインガイドラインを含む148ページのレポートを、ダウンロード可能な形で用意した。

2001年11月11日

公開:2001年11月11日(原文:2001年11月11日)
著者:Jakob Nielsen
原文:Beyond Accessibility: Treating Users with Disabilities as People

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