Webユーザーとしての高齢者

65歳以上のユーザーは21~55歳のユーザーよりもWebサイトを利用するのに43%長く時間がかかる。この数値は過去の調査に比べると良くなってはいる。しかし、高齢のユーザーへの対応を改善するために、デザインは変わる必要がある。

裕福な国々では、年配のユーザーというのはインターネット上の最後の未開拓エリアである。他のすべての年齢層では膨大な数の人が既にオンラインになっているからである。

2002年にアメリカの65歳以上のインターネットユーザーはおよそ420万人だった。2012年時点で、この数字はインターネット上のアメリカの高齢者が1900万人というところにまで増加し、この10年間の成長率は年率16%となった。

逆に、2004年から2012年にかけてのアメリカの30~49歳のインターネットユーザーは5800万人から7300万人へと年率3%しか増えなかった。

状況はイギリスでも同様である。イギリス国家統計局の推定によると、インターネットの利用率は1年間で以下のように変化した:

2011年末 2012年末 年率換算の
成長率
35~44歳 95.9% 96.9% 1%
65~74歳 59.8% 65.4% 9%

そう、若いユーザーのほうが数は多い。しかし、年配のユーザーのほうが人数の伸び率はずっと高い。原因になっている要素は2つある:

  • 社会の高齢化、および
  • インターネットをしようと考えている年配者の割合が過去最大であること。

年配のユーザーから得られるビジネスチャンスが人口統計が示す以上に急速に伸びているのには2つの理由がある:

  • eコマースでの買い物、オンラインでの銀行取引や株取引等のユーザーからビジネス価値を引き出す方法の多くは、ユーザーが最初に利用する無料サービスに比べると、どれも遅行指標である。したがって、最近、インターネットを使うようになった高齢者の多くはまだ消費を始めてない。しかし、彼らがそれを始めるのはすぐだろう。
  • 我々が今回、行った調査によると、ウェブサイトは現状、まだ高齢者に対して公平な待遇を取っていない。年配のユーザーにより適したウェブデザインを採用することで、サイトはこのグループから生み出される取引の量を大幅に拡大することが可能である。

ウェブサイトを利用している高齢者対象の調査

合計75人の高齢者を対象に2回のユーザビリティ調査を実施した:

  • 1回目: 11年前に44人の高齢者を対象者として17個のウェブサイトをテストした。
  • 2回目: 今年、31人の高齢者を対象者として29個のサイトをテストした。

ウェブサイトの高齢者と一般ユーザーに対する扱い方を比較するため、2回の調査のどちらにも20人の21~55歳のユーザーからなる対照群も加えた。

ほとんどのユーザーセッションはアメリカで実施したが、オーストラリアやドイツ、日本、イギリスでも高齢者をテストし、調査結果が国際的に適用できるかどうかも確認した。

「高齢者」の定義

我々が利用する定義はシンプルである。つまり、「高齢者」とは65歳以上のユーザー、というものである。年齢の上限は設けなかったが、調査参加者の最高齢は89歳だった。

もちろん、この定義は単純化したものである。人は65回目の誕生日にすべての行動を変えるわけではないからだ。人間の老化は20歳になると始まる。従って、40代の人の視力は目の良い20代のデザイナーよりはいくぶん大きなフォントサイズが必要になるくらいには既に悪くなっている。

中年のユーザーをテストしてわかったのは、25歳から60歳までの間に人々のウェブサイトを利用する能力は毎年0.8%ずつ低下していくということである。

したがって、ある意味、年配のユーザーについての問題は彼らが65歳になるだいぶ前から考え始める必要がある。

その一方、文脈が異なれば、真の「高齢者」というには65歳は若すぎることもある。例えば、デンマークではかつては65歳になると年金の支払いが始まっていたのだが、国の年金制度の破綻を回避するため、定年が69歳にまで延びてきている。裕福な国のほとんどは退職給付制度について同様の財源問題を抱えている。平均寿命が(幸福なことに)伸び続けているため、少なくとも70歳になるまで働くというのはますます一般的になるだろう。

65歳定年という慣習を保持している国でも、こんなに早く引退したいと思っていない人は多い。今の年配者は昔に比べると元気だし、仕事を続けたいと思っている人も多い。こうしたことから考えると、「高齢」のユーザーに対するユーザビリティガイドラインをイントラネットや企業用のアプリケーションをデザインするときには参考にすべきだ。多数の企業で65歳以上の従業員の数は増加していくだろうからである。

純益、および改善の余地

調査には2回とも定量的テストを入れ、一連のタスクに対する4つの主要なユーザビリティ指標を収集した:

  • 成功率: タスクを実際に達成することができるか。
  • 作業時間: どのくらいの速さでそのタスクを実行できるか。これは効率を測定するものである。
  • エラー率: どのくらいの頻度で間違いをするか。
  • 主観的満足度: 1から7の尺度でいうと、どのくらいそのウェブサイトが好きか。

以下がテストでのタスクを平均した結果である:

高齢者
(11年前)
高齢者
(現在)
21~55歳の
ユーザー(現在)
成功率 52.5% 55.3% 74.5%
作業時間 (分:秒) 9:58 7:49 5:28
エラー 4.6 2.4 1.1
主観的レーティング
(7が最高の7段階評価)
3.7 4.1 4.6

最初の3つの指標での高齢者と対照群との違いは、p<.002のレベルで有意である。また、満足度のレーティングもp<.05レベルで有意差がある。

タスクにかかる時間は短ければ短いほうがいいので、4つのユーザビリティ指標すべてから導かれる結論は同じである:

  • ウェブサイトは過去11年間で高齢者に対していくぶん改善された。
  • ウェブサイトは若いユーザー以上にまだ高齢者にとってはかなり使いづらい

ではこれらのユーザビリティ指標をビジネス用語に置き換えてみよう。ウェブサイトのデザイン変更をすることで、高齢者にも若いユーザーと同等のユーザーエクスペリエンスを与えられれば、成功率の高さだけをベースにすると、彼らのおかげで35%の売上アップが見込みうる。(タスクに時間がかからなくなり、エラーが起こりにくくなって、快適に実行できるようになるにつれ、恐らく、利用量も大きく増加するだろう)。

なぜ、高齢者は最近、ウェブサイトを上手に使えるようになったのか。理由は2つある。ただし、残念ながら、データからは各々の相対的寄与率を推定することはできない。

  • 以前よりウェブサイトのデザインが良くなった。高齢者のニーズについてはまだだいぶ怠慢があるが、現在のサイトは少なくともいくぶんは寛容になってきている。
  • 高齢者のウェブ利用のスキルが上がった主流のオーディエンスのウェブスキルが経時的にはそれほど進歩してないことはわかっているが、高齢者については話が別だ。10年前と違い、今の高齢者は仕事をしていたときにコンピュータの利用方法を学んでいる可能性が高い。会社のトレーニングコースや同僚から学んだ高齢者のメンタルモデルは、引退後にコンピュータのスキルを習得した高齢者より、信頼性が高い。

その上、インターネットの接続スピードも速くなっている。1回目の調査では高齢者の75%がまだダイアルアップ接続だったが、2回目の調査では高齢者の全員が何らかのかたちでブロードバンド接続を利用していた。すべてのユーザーにとって、応答時間の速さというのは大事なものだが、高齢者にはとりわけ重要だ。タスクに時間がかかりすぎると彼らは物忘れしてしまう可能性が高いからである。

人の加齢とウェブの利用

年を取るにつれて、健康は損なわれる。そして、そうなっていくのはあなたも同じだ。このことが、ビジネス上の利益以外にも、高齢者向けデザインについて誰もが関心を持つべき理由の1つである。2回目の調査では、数個の判断基準についての測定値を2つのユーザーグループからシンプルに集めた:

高齢者
(65歳以上)
21~55歳の
ユーザー
視力 82% 95%
器用さ 73% 95%
記憶力 49% 63%

視力と器用さに関しての100%というのは、ウェブサイトの利用に支障がないことを示している。記憶力のスコアが示すのは、テストセッションの最初に紹介されたアイテムをそのセッションの終了時にユーザーが正確に思い出すことができた割合である。

若者にも、身体的、認知的限界があるのを認識することが重要であるのは明らかだ。しかし、表が端的に示すように、この問題は年配のユーザーにとってはずっと深刻なものである。

聴力も年を取るにつれ、低下するものだが、これについては測定しなかった。主流ウェブサイトのほとんどは音響効果無しでも問題なく利用可能だからである。しかし、年配のユーザーが動画を見るのにボリュームを非常に大きく設定したり、動画を見る代わりにあえて情報を読むことにしたという事例は実際に目にした。

デザインの課題: 読みやすさ、クリックしやすさ

視力の低下は加齢の問題としておそらく最もよく知られているものだが、字が細かいウェブサイトは少なくない。高齢者をターゲットにしているサイトは少なくとも12ポイント以上のフォントをデフォルトとして使うべきである。また、すべてのサイトは、高齢者を特にターゲットにしているかどうかにかかわらず、ユーザーが好きなようにテキストのサイズを大きくできるようにしておくべきである。特にそのサイトのデフォルトのフォントサイズが小さいときには。

ハイパーテキストのリンクはデザインのコンポーネントとして欠かせないものだが、それに大きなサイズのテキストを利用するのが特に重要である理由は以下の2つである。1)読みやすくするため。2)クリックのターゲットとしてより目立たせるため。また、リンクを隙間なく、つけて置くのは避けなければならない。余白を使ってリンク同士を離すことで、クリックのエラーを減らし、ユーザーが正しいリンクをより速くヒットできるようにしよう。このルールはコマンドボタン等のインタラクション可能なオブジェクトにも応用できるが、そうしたオブジェクトはどれもクリックしやすいようにかなり大きくすべきである。

プルダウンメニューや階層的なウォーキングメニュー等の動くインタフェース要素はマウスを常に安定させておくことが難しい高齢者には問題がある。ピクセル単位の正確なポインティングが要求されない静的なユーザーインタフェースウィジェットやデザインを利用するほうが良い。

行動の課題: ためらい、落胆

調査では、45%の高齢者から、新しいことを試すのに抵抗がある、または、調べてまわるのには躊躇する、ということを示す行動が見られた。例えば、あるタスクを初めて試みたときに失敗すると、高齢者の中には別のやり方を試すのをためらう人もいた。ある高齢者はTexas州Dallasの1月の平均気温を調べるのに彼のお気に入りの気象サイトに向かった。しかし、彼はそのサイトで情報を見つけることができなくても、別のサイトに行こうとしなかった。そうではなく、彼はあきらめてしまった。

対照群の若いユーザーたちはサイト検索や項目ヘルプ、オンラインチャット等の別のやり方を年配のユーザーに比べて倍以上の数、試して、問題に対する答えを見つけたり、タスクを達成したりしていた。

対照的に、高齢者がタスクの達成をあきらめる確率はほぼ2倍に達した。タスクを達成することなく断念したユーザー全員でみると、高齢者は若いユーザーに比べて、あきらめるのが30秒早かった。

うまくいかなくなると、高齢者は90%の割合で自分自身を責めていたが、若いユーザーのその割合は58%だった。私の見るところ、そうした問題の責任はほぼ100%ウェブサイトとそのデザイナーに帰すべきである。というのも問題のほとんどは、高齢者向けのデザインのためのユーザビリティガイドライン(英語)にもっとよく注意を払えば、避けられたものだからである。

自信がないこともあってか、高齢者はGoogleやBingのようなウェブ全体に対する検索エンジンに頼る傾向が強かった。こうしたサイトには慣れているので、快適だからだろう。また、高齢者はタスクを達成するのに若いユーザーに比べて51%多く、検索エンジンを利用していた。

ためらい、ということに対して別の見方をすると、高齢者はタスクを遂行するのにより時間がかかり、几帳面に取り組むといえる。調査では95%の高齢者の行動が几帳面であると評価された。例えば、彼らは手順ごとに、あるいはクリックのたびに慎重に考え、次に進む前にページ全体を見る傾向がある。しかし、こうした几帳面な行動を示した若いユーザーは35%に過ぎなかった。そして、残念なことに、コンピュータに対して時間をかけた慎重なアプローチを取る高齢者ほど、成績が悪かったことが調査の成功率からは明らかになっている。

サポート力の高い(そして寛容な)デザインを提供しよう

未訪問リンクと訪問済リンクを明確に区別するために異なる色を利用するというガイドラインにウェブサイトが違反すると、高齢者は自分の辿ってきた経路をすぐに見失ってしまう。しかし、このことはどの年齢層にも当てはまる。例えば、ウェブサイトがリンクの基準色を変えてしまうというのは混乱を招くが、目的のページを訪問したかどうかに関係なく、すべてのリンクに同じ色を使うというのは特に混乱を招く。しかしながら、高齢者は自分がウェブサイトのどの部分を訪問したかを思い出すのがより難しいため、同じ場所に繰り返し戻ってしまい、時間を浪費しがちである。

また、高齢者は検索エンジンや入力フォームが厳格であると苦労する。彼らが検索キーワードでのシンプルなタイプミスで挫折したり、電話やクレジットカードの番号にハイフンや括弧を使ってしまって叱られるのが目についた。

その上、高齢者はエラーメッセージの読解に苦労することも多い。言葉遣いが不明瞭あるいは不正確だったり、メッセージ自体がページ内の他のデザイン要素がたくさんある中に置かれていて見落としやすかったりするからである。高齢者がエラーに対処するようなことがありうる場合には、通常以上にシンプルさが重要である。つまり、エラーに焦点を合わせて、明確な説明をし、可能な限り容易に解決できるようにしよう。ウェブサイトでのタスクは高齢者に合った、可能な限り彼らの好むやり方にすべきだ。何十年も決まったやり方で電話番号を書いてきたのに、違う書き方を要求する入力フォームに遭遇するというのは、あまり良いエクスペリエンスにはならないからである。

高齢者はコンピュータやウェブの基本的な利用方法に苦労することもある。例えば、45%の高齢者は複数のウィンドゥやブラウザのタブの扱いに苦労していた。しかしながら、高齢者の中には、ウェブをよく知っていて、現ページ内でキーワードにジャンプするためのctrl-Fのような高度な機能を自信たっぷりに利用する人もいた。

ナビゲーションの変更は避けよう

ユーザーは皆、変化を嫌悪しているが、劇的なデザイン変更による被害が最も大きいのは高齢者である。調査でも高齢者の半数が、彼らにとって必要だったり、よく訪問するウェブサイトの利用方法についての手順には従うし、指示を守っていると言っていた。しかし、そのようなウェブサイトで抜本的な変更があると、これらの手順や指示は使えなくなってしまい、高齢者が新しいデザインを理解するのに苦労する可能性がある。

あるユーザーはデザイン変更のあったサイトに行ったが、最終的にはそこを放棄した。彼女は言った。「お手上げです。さっきも言ったように、ずっと変わらなかった部分が変更されると嫌になります」。

ウェブサイトが永遠に同じままというわけにいかないのは明らかだ。しかし、タスクの重要な手順については、可能な限り長い期間、一貫性を維持することに価値がある。また、ワークフローの手順情報アーキテクチャ(IA)等の基本的側面についての包括的なユーザビリティ調査を、開発の初期段階で実施することで、将来、ウェブサイトの大幅な見直しをする必要性を減らすことは可能である。

高齢者がウェブを利用する理由

はじめに述べたように、過去最大の数の高齢者が今、インターネットを利用している。にもかかわらず、彼らにとってのユーザビリティには問題がある。以下に挙げているのは、テストしたユーザーが具体的に試したことがあると述べたタスクを含む、高齢者がオンラインで行う主なアクティビティである:

  • 健康: 「[薬]を処方されたときに、誰もそれについての説明をしてくれませんでした。看護師の1人が本を1冊くれましたが、私はインターネットにも行きました。飲まなければならないものについてはすべて、それがどんなものであるか知っておきたいのです」。
  • 旅行: 「インターネットでの旅行の手配はTravelocityを利用しています。ですが、クレジットカードの情報を機械には入れません。電話をします。単に、コンピュータにクレジットカードの情報を残したくないからです。天気をチェックして、航空券の値段もチェックして、便を探し、航空会社に電話をしました。電話での値段のほうがコンピュータのものより安いことがわかりました」。
  • 趣味: 「様々な種類のTV番組をチェックしています。番組のチケットを手に入れようともしていました。インターネットでもそうした番組の名前がついたところにはすべて行ってみましたが、申し込みフォームの書き方がわかりませんでした」。
  • ニュース: 「オンラインのWall Street Journalの有料会員です。紙のほうも購読していますが、紙の情報は欠けている場合もあります。ですが、オンラインではより多くの情報を得ることができます。オンラインのほうが情報の更新が多いからです。New York Timesでも同様にしています。(オンラインなら)何日分かさかのぼることも可能です」。
  • 金融: 「毎朝、自分の銀行口座にログインします。そして、いろいろな年金口座に行きます」。
  • ショッピング: 「洋服や本を買っています。好きなのはLands’ Endです。そこでは自分のモデルが作れます(訳注: Lands’ Endのサイトには自分のサイズ等を入力して、自分のヴァーチャルモデルを作り、選んだ服をウェブ上で着せ替えすることができるサービスがある)。以前は食費を節約するためにPriceline.comを利用していました。私は編み物をするのですが、毛糸を買うのにはWooly Hill Farmが気に入っています」。
  • ソーシャル: 「親戚を見つけようとしていたら、昔の軍仲間を発見したので、メールで連絡を取り合うようになりました。今は1回削除してしまったまたいとこのメールアドレスを手に入れようとしているところです」。

こうした例が示すように、ウェブサイトは多くのカテゴリーで高齢者を引き付けることが可能だ。彼らは裕福なターゲットオーディエンスとして急成長しつつある。サイトデザイナーに必要なのは、より一層の努力をして人の加齢過程に対応し、ウェブサイトを年配者が容易に速く利用できるようにすることである。テスト参加者の1人は次のように述べていた。「多くの人が信じているのとは逆に、年配者が無駄遣いできる時間は多くない」。もし、サイトが難しければ、他のすべてのユーザーと同じように、高齢者はよそへ行ってしまうだろう。

調査レポート全文

(65歳以上のユーザーの)高齢者をターゲットにしたデザインガイドラインつきのユーザビリティレポート(英語)がダウンロードできる。

さらに詳しく

調査レポート(英語)

関連記事


Original image by: Ruth Ellison

訂正(6月10日)

初出時、「毎年0.8%ずつ低化していく」とありましたが、「低下」の誤りでしたので訂正いたしました。

公開:2013年6月10日(原文:2013年5月28日)
著者:Jakob Nielsen
原文:Seniors as Web Users

分類キーワード: