B2B:ファンが上司を説得するのを支援しよう

B2B のウェブサイトはB2Cよりも複雑な購入プロセスをサポートしなければいけない。鍵となるのは、候補リストに載ること、ダウンロード可能な説得支援キットを提供すること、サービスがいいという評判を得ること、の 3 つだ。

複雑な製品とサービスを企業向けに提供しているサイトをテストした結果、私は 2 つの結論に達した:

  • B2B だからといって、従来の e コマースデザインのベストプラクティスから逃れられるものではない。B2B と B2C の実質的な線引きはできない。勤務中は「B」の人でも、それ以外のときは「C」なので、Amazon.com のような先進サイトがユーザ体験に対する期待値の基準になる。
  • B2B サイトは、企業を顧客とする場合に特有の購入プロセスをサポートし、B2C 以上のものでなくてはならない。

B2B サイトでは、 B2C のサービス品質と使いやすいユーザインターフェイスに加えて、B2B の特殊性と複雑なワークフローのサポートを提供しなくてはいけないというは、不公平に見えるかもしれない。そして、そのようなサイトは概して、商談を成約させるものとして見られていないので、Amazon よりも少ない資源でそれを行わなくてはいけない。北海油田のための海底セメントシステムを購入するときには、「買い物カゴに入れる」というボタンはないのだ。

買い物カゴがなくても、B2B サイトは売り上げに大きく貢献できる。しかしそれは、B2B の購入プロセスは、多段階のステップを踏むという特性があることを理解していればの話だ。あなたの会社の営業マンは長期間にわたる売り込み活動を理解している。ウェブサイトでも同じようにするべきだ。

B2B ウェブサイトのゴール

プロセスの特徴は業界によって異なるので、フィールド調査を行って、どのように顧客の内部プロセスをサポートすればよいかを把握すべきだ。しかし一般的には、 B2B サイトには 3 つの大きなゴールがある:

  • 初期検討段階での選別を生き抜き、候補リストに残ること。ここで必要不可欠となるのが、検索エンジンでの表示順位、ホームページ・ユーザビリティ、そしてコンテンツ・ユーザビリティだ。ユーザが販売業者を探し始めた段階で、まず見つけてもらわなくてはいけない。そして、見つけてもらったとしても、宣伝文句で埋め尽くされたホームページが原因で、ユーザが立ち去ってしまわないようにしなくてはいけない。ユーザの一般的な質問に答えるページへ案内するべきだ。また、価格を掲載しよう。そうしなければ、プロジェクトの概算金額を手早く知りたい多くのユーザを失うことになる。
  • 製品について、内部のミーティング、メモ、経営陣に向けたプレゼンテーションなどを行ってくれる支持者たちをサポートしよう。後述するが、彼らが社内で強い主張をするときに役立つ、ウェブサイトで提供できる具体的なものがいくつかある。
  • 取引しやすく、購入後のサービスがいいという評判を得よう。オンラインでは、古い方法よりも格段に低いコストで販売後の優れたサポートを提供できる。しかし、私たちがテストした多くのサポートサイトでは、これができていなかった。オンラインサポートは、ウェブ上での主要なブランド構築の手段ではなく、コスト部門でしかないと誤解されているからだろう。

説得支援キット

大口の B2B の購入決断は 1 人で行われるものではない。建て前では、お偉方に最終決定権があることにはなっているが、意志決定プロセスには、様々な階層の社員が関わっているのが普通だ。その分野の専門家が初期の調査を行ってから、候補リストや推薦文やプレゼンテーションを中間管理者に対して提示する。そしてその中間管理者が、さらに上の重役たちに、もっと厳選された候補リストとプレゼンテーションを持って行くのだ。

あなたの製品に何かしらよいところがあるのなら、専門家や管理者の中には、競合他社の製品よりもそちらを選んでくれる人も出てくるはずだ。ここでの大きな目標のひとつは、あなたの製品がベストであることを、最初は同僚に、そして後には上司に対して、支持者が説得する際の助けになることだ。

実際の決断を下すのは、会社一のオタク社員ということもある。特定の問題に関しては、何を購入するのがベストかを判断できる社内で唯一の人物として、誰からも(最上級の重役たちからさえも)一目置かれているような社員のことだ。もしこのオタク社員があなたの製品が一番よいと思ったならば、その注文はほぼ勝ち取ったようなものだ。彼らが上司に推薦理由を説明しやすいようにすれば、彼らの気持ちを引き付けることができる。特定分野の専門家たちは社内政治に労力を注ぐことを一番嫌うからだ。

ウェブサイトで支持者を手助けしよう。彼らが内部で議論したり、メモを書いたり、プレゼンテーションを作成したりするのに役立つ材料を提供しよう。説得支援キットの内容は以下のとおりだ。

  • ダウンロード可能な製品写真を提供する。単に綺麗に製品を撮したものではなく、その製品が実際に使用されている様子を撮したものが好ましい。
  • ROIを説明するホワイトペーパーを提供する。内容は簡潔にして、PDF は使わないようにしよう。普通のウェブページのほうが、テキストや画像をメモやプレゼンテーションにカット&ペーストしやすい。
  • 第三者がよい評価をしていることを示すため、外部にある紹介記事へのリンクを提供する。(ウェブサイトを PR に使う方法についてさらに詳しく
  • 製品の主な特徴とセールスポイントを競合製品と比較したダウンロード可能な表を提供する。Microsoft Word 形式の表がメモを書くときに使いやすい。
  • ダウンロード可能なスライドショーを提供する。PowerPoint 形式で提供するのが好ましい。そのまま使えるように(そしてそのまま使っても、売り込みのプレゼンに見えないように)、またはその企業の雛形に流し込めるように、スライドの背景は派手な色を避けよう。
  • 製品デモ。
  • 最新の情報を電子メールのニュースレターで提供する。支持者が上司と話すときのネタにしてもらえるかもしれない。

当たり前だが、もし Linux やそのほかアンチ Microsoft コミュニティ向けの製品を販売しているならば、Office のスタンダード形式以外の形式で提供するべきだ。

現状の B2B サイトで説得支援キットは滅多に見かけないが、これは、インターネットがもつワン・トゥ・ワンの特性を生かす非常に優れた方法だ。顧客企業の内部に直接到達して、あなたとの取引成立を強く望んでいる人たちと繋がることができるのだ。

2004年 4 月 26 日