マイクロコンテンツの頭に企業名? それが正しいこともある

従来のガイドラインでは、通常リンクテキストでは企業名を目立たせないようにすべきとしていた。しかしこのガイドラインを改め、検索エンジン向けのリンクの場合、一定の条件下では企業名を先頭に付けるよう勧めるに至った。

このたびわれわれは、主催するユーザビリティ関連セミナーの刷新を狙いとして目下実施中のユーザテストの結果を踏まえ、もっとも古いウェブユーザビリティガイドラインの一つを改訂することになった

ユーザがウェブサイトをどう読んでいるかについて初の調査結果を発表したのは11年前だが、リンクや見出し、タイトルなどのマイクロコンテンツのライティングガイドラインはいまだに明快である:

この後者のガイドラインの大切さが具体的に分かるように、1,500名の従業員を抱える企業、Highway Holdingsのサイトのニュース一覧エリアを見てみよう:

http://www.highwayholdings.com/ のホームページの部分的スクリーンショット

どのニュースのタイトルも“Highway Holdings”という言葉で始まっており、それが2つの大きな問題につながっている:

  • これらは自社サイト内にあるこの企業自体に関するニュースなので、企業名を繰り返し表示するのはほとんど無意味であり、ホームページ上のきわめて稀少なスペース(各タイトルの先頭の2語)を無駄遣いしていることになる。
  • すべてのリンクが同じ言葉で始まっていると、どれを選ぶべきか区別しにくくなり、必然的にユーザビリティが低下する。

(このサイトは国際標準に従った日付形式を採用しているので、企業サイトのプレスリリースとPR情報のデザインガイドラインの17番目を遵守していることになる。しかし4ヶ月もプレスリリースを出していないせいで、21番目のガイドラインには背いてしまっている。)

この例で分かるように、基本的なウェブ向けのライティングガイドラインいまだに有効なのだ。そこには、リンクテキストの先頭に自社の名前を付けるべからずという項目も含まれている。

企業名から書き始めるべき場合

それが今では、この一般法則にも以下の例外ルールが伴うようになった:

  • 以下の条件を両方とも満たす場合は、検索エンジンに登録させたいリンクは企業名から書き始めること
    • SERP(検索エンジンの結果一覧ページ)の中で、そのリンクが他の役立たずなリンクの山に埋もれがちになる場合
    • 広く世間に知られているステータスの高い企業名を持っている場合

われわれは現在、Fundamental Guidelines for Web Usabilityセミナーのコース内容を刷新するためのユーザ調査を行っている。この調査でのタスクの多くは、ウェブ全体を視野に入れさせる作業としている ―― つまりテストユーザに対し、タスクを達成するにはどのサイトにアクセスすればよいかを特に指示していない。このようなタスクの場合、ユーザは往々にしてまず検索エンジンでキーワード検索を行い、表示されたSERPの一覧からアクセスしたいサイトを選ぶことになる。

あいにく、このような検索を行うと、無関係な見出しや意味不明なサイト説明だらけの結果となることが多い。こうしたゴミだらけの結果を目にすると、ユーザはあからさまに苛立ちを示すし、どのサイトにアクセスするかを決めるのが大変になる。すると結局、たとえ一覧の下の方にあってもとりあえず名の知れた企業のリンクを選ぶユーザが多くなるのだ。(通常なら、ユーザはおもに検索結果の1番上にあるリンクを選ぶのだが、それとは対照的である。)

たとえば、検索エンジンのSERPで表示されるAmazon.comの商品リンクは、どれも先頭に“Amazon.com”が付いている。テストユーザは、SERPの上の方にある謎のリンクたちを飛ばして、このようなAmazon.comの商品リンクの方をクリックする傾向があるのだ。

SEO 対 ユーザビリティ

SERPで先頭に有名なブランド名が付いているリンクは、正体不明のリンクよりユーザを惹きつけやすいというこの発見は、SEO(検索エンジン向け最適化)とユーザビリティが互いにどう影響し合っているかをよく示している。

狭い意味で捉えるなら、SEOはただ一つの課題に注力していると言える。つまり、重要なキーワードで検索が行われた際に、SERPのなるべく上位にサイトが表示されるようにするという課題だ。

これは立派な動機だし、ウェブでの成功を目指す企業なら必ず(ユーザに理解できる言葉でコンテンツを書くなどの工夫をして)目指しているはずの目標でもある。

だが、ありきたりなSEOでは足りない。リンクを上位に表示させるだけでなく、他にもやるべきことが2つある:

  1. ユーザがそのリンクをクリックして実際にサイトに訪れるようにすること。(CTR、すなわちクリック率を上げること。)
  2. ユーザがサイトにやって来たら、その単なる訪問者を顧客へとコンバート(転換)すること。(ユーザビリティの主要な尺度の一つである、コンバージョン率を上げること。)

分かりやすいリンクを記述したり、ユーザのニーズに見合ったランディングページ(およびその先のコンテンツ)をデザインするなど、ユーザビリティ上の配慮次第でクリック率やコンバージョン率は左右される。この記事で紹介するリンク用の新たなガイドラインは、よいリンクを作成するための従来のユーザビリティガイドラインをひとひねりしただけのものだ。

SERP上のリンク 対 サイト内のリンクや見出し

その新たなガイドラインを示そう: ゴミだらけのSERPが表示されることが多い検索に対処するため、検索エンジンに登録されるリンクの先頭には企業名を付けること。このガイドラインを実践するには、主要な検索エンジンで自社のビジネスに関係の深い(自社のリンクが検索結果の1ページ目に入るような)キーワードで検索を行い、SERPの上位5件のリンクをチェックしてみるとよい

  • それらは役立たずなリンクではないだろうか? もしそうなら、自社のリンクの先頭に企業名を付けてクリックを誘導しよう。
  • それらは意味のあるリンクテキストで示されているだろうか? クリックすると、その先にちゃんと役に立つ情報があるだろうか? もしそうなっていれば、自社のリンクテキストも一段とソリューションを意識したものに修正し、企業名は末尾に付けたままとしておこう。

(言うまでもないが、無名に近い企業名ならどのみち先頭に付けるべきではない。)

一つ気をつけて欲しいのだが、この新たなガイドラインを適用すべきなのは、GYM(Google、Yahoo、Microsoft)を始めとする外部の検索エンジンで表示されるリンクに限られる。

自社サイト内では、引き続き従来のライティングガイドラインに従うべきであり、以下のような箇所では企業名を目立たせない方がよい

  • サイト内検索の結果を示すSERPで表示されるリンク
  • ナビゲーション用のリンク、関連情報リンク、カテゴリ別一覧ページから製品詳細ページへのリンクなど、サイト内ページ同士のリンク
  • ユーザがページにアクセスした際に目にする見出し

外部の検索エンジンは、ページのタイトルをリンクテキストとして使用する。このテキストは、サイト内検索用の検索エンジンに登録するリンクテキストや、ページ本体に表示する見出しと一致させる必要はまったくない。まともなCMS(コンテンツ管理システム)なら、サイト内リンクで使うmeta要素の内容と外部向けのページタイトルを、別々に指定できるはずだ。

2008 年 3 月 3 日