About Us ページのユーザビリティ
Webサイトの About Us のページのユーザビリティは、過去5年間に渡り 9%向上したことが分かった。しかし、企業や組織の数々は依然として自らの活動を一つの段落で説明できていない。
インターネット上で企業や組織を代表するのがウェブサイトの最も重要な務めの一つである。その会社の目的とその意義を効果的に説明することは、その他多くのウェブサイトの目的を達成する上で欠かせない助けとなる。
残念ながら、ほとんどのサイトが About Us のセクションを提供しながらも、そのページで提供すべき大切な情報を上手く伝えられていないことが多い。
二回の実験調査
ユーザが如何にして会社や組織のウェブサイト上でプロフィールを見つけそれを解釈するのかを理解するために、我々は5つの一般的なカテゴリに含まれる63の組織により運営されるウェブサイトでユーザ調査を実施した:
- 大企業、Bristol-Myers Squibb, China Mobile, Citigroup, Eli Lilly, Vivendi, Yamaha等。
- 中堅企業、Body Trends, Cintas, Pier 1 Imports, Titan Corporation等。
- 小企業、GiftTree.com, ImmunoGen, Nabi Biopharmaceuticals, OneCall, Paper Style等。
- 政府機関、the U.S. Department of Housing and Urban Development (HUD), the Department of the Interior, the Federal Trade Commission, the Small Business Administration等。
- 非営利団体、American Refugee Committee, National Multiple Sclerosis Society, St. Jude’s Children’s Research Hospital, the United Nations Children’s Fund等。
我々は5年前に行った調査で15のサイトをテストし、今回行った新しい調査では48のサイトでテストを実施した。
それぞれのサイトでユーザには、あるオープンエンドなタスク「その組織は何かを判断せよ」を与えた。また我々は、その組織を運営している人物は誰か、どのような団体や社会活動にその組織は貢献しているのか、そしてその組織はいつ設立されたのかを見つけよ、といった指図に従って行うタスクもいくつか与えた。
被験者のほとんどは、ウェブユーザの主流を占める人々、証券アナリスト、もしくは少なくとも2年以上のインターネットの使用経験をもつジャーナリストであった。一度目の調査では、何人かのティーンネージャーを被験者に含めた。なぜなら、生徒や学生達の調査を助けること、長期間に渡る忠誠心を築くこと、インターンをひきつけることが企業情報をウェブで提供する目的の一つに含まれることはよくあるからである。
我々は調査のセッションの大部分をアメリカで行い、また調査結果の国際的な適用性を確かにするために、香港でもいくつかのセッションを実施した。
About Us ユーザビリティにおけるトレンド
我々は第一回の調査を5年前に実施した。それは、ユーザエクスペリエンスのフィールドにおいてそれほど長い時間ではない。なぜなら、人の性質やユーザの行動は安定したものでありそれが仮に変化するとしてもゆっくり変化する傾向にある。その一方で、2度の調査の間には大きなトレンドを評価するに足る十分な間隔がある。
まず最初に、良いニュース: About Us のユーザビリティは向上した。成功率の平均は、一度目の調査で70%、二度目の調査では79%であった。ユーザビリティの上昇率は最近行った店舗検索機能についての二度目の調査で見られたもの程大きくはないが、成功率に毎年約2%の上昇が見られたというのは確かに評価すべきである。
連絡先を見つける、例えば企業の主要な住所を見つけよといったタスクでは特に顕著な上昇が見られた。このタスクの成功率は62%から91%に上昇した。依然として、ウェブ上で連絡先を見つけることは実質的に不可能という企業もいくつか存在する。そしてあるサイトは、故意に住所や電話番号を隠しているようにも見える。けれども、そうすることは逆効果となろう。なぜなら、ユーザはそういうサイトを非常に信頼性の低いサイトとみなすからである。
あまり良くないニュース: その企業や組織が何をするのかを調べよというタスクの成功率について、実は、90% から81%に減少した。ビジネスの概要を飾ることなく表現すべきところで、マーケティング、中身のない長たらしい文句が、今日の多くのサイトを支配していた。
さらに良くないニュース: About Usセクションに対するユーザの主観的な満足度は、5.2から4.6に減少した(1-7 の階級で評価)。全体的に成功率が上昇しながら、どうして満足度が下がることがあり得よう?なぜならウェブサイトの使い勝手に対するユーザの期待は、近年、より一層上昇したのである。組織に関する最も基本的な情報を見つけにくくしたサイトは、最近では強く批評されてしまう; About Us で過去にはユーザが受け入れていたことが、もはや彼らの理解を得られなくなったということだろう。
明らかなトレンドの一つは動画 (video) に対するユーザの関心が高くなっていて、特に、面白い製品、または複雑な製品を見せる場合、企業のイベントをレポートする場合、もしくは最高経営責任者や他の重要な社員を紹介する場合等にそれが言える。とは言え、変わらない点を一つあげると、ウェブユーザは依然としてせっかちで、短い動画を好むということである。例えば、あるユーザは長い動画について以下のコメントを述べた: “一つの動画にしてはちょっと長ったらしい。もっと製品等を見せるようにして、話している部分は少なくすべきだと思う […] ああいう動画は途中で止めるだろう。”
概要ページ: 鍵となる背景を提供する
ユーザをあなたのAbout Us のページに導くためには、<会社名>について もしくは About Us というラベルで、サイトのホームページ上にリンクをはることを薦める。このリンクがホームページ上で最も目立つものである必要はないが、そこに存在し、明確に表示されていなければならない。我々の調査から、そのリンクが Info Center 等、標準的な名前でない場合、もしくは広告らしく見えるが故に無視されがちなグラフィカルな要素の傍にそれが配置された場合、ユーザは企業情報を見つけるのに苦心していた。
About Us のページでは、以下の 4段階の細目に分けて情報を表示することを薦める:
- タグラインをホームページ上に:数単語、もしくは短い一文でその組織の活動を要約する。
- 概要: メインの About Us ページの最上部で、その組織の目的や主な業績について若干詳しい情報を 1-2段落にまとめて述べる。
- 概況報告書: 概要の次のセクションで、その組織に関する主要な事柄、その他の重要な業績を詳しく説明する。
- 詳細情報: その組織について更に詳しく知りたい人たちのために、補足的なページでより詳しい情報を掲載する。
このようにコンテンツの見せ方を階層化し、逆ピラミッド型にすることで、ハイパーテキストを使ってユーザが詳細情報に圧倒されるのを防ぐことが出来る。
例えば、平均的なユーザが「コーポレート・ガバナンス」へのリンクをクリックすることは稀であろう。しかし、その先のページは、その分野に長けた投資家やビジネスジャーナリストにとっては重要なものかもしれない。これは、あいまいなリンクのラベルがユーザビリティを向上させる希有な例の一つである: 「コーポレート・ガバナンス」という用語が何を意味するのか知らない人はそれをクリックしないであろう(なぜなら、人々は理解できないリンクをクリックしない)。 この場合、それは構わない ? その用語を知らないユーザはおそらくそれに関連する情報を必要としないだろう。
コンテンツピラミッドの最上部で上手いタグラインを表示すると、サイト内その他の詳細を述べたコンテンツを理解する背景知識を提供することになり、ユーザがコンテンツを理解するのを助ける。同様に、組織概要を読むことで、ユーザはメインの About Us ページでそれに引き続く概況報告書を理解する背景知識を得る。
今日、数々のウェブサイトのタグラインの出来はたいていの場合ひどいものだが、我々がテストしたサイトの中にいくつかよいものがあった。その一つは、HSBC のタグラインである: The world’s local bank. あるユーザは以下のようにコメントした。「それは、我々は The world’s local bank (世界の地方銀行)と言っている。? コンセプトを和らげて表現している。好ましい表現だ。彼らはグローバルなリソースを持つ一方で、あなたの地元でサービスを提供するということだ。『The world’s local bank』 ? これは、すごく好ましい。」
概要の記述が、具体性に欠ける自己満足の言い回しを並べたくだらない会社綱領と成り下がっていることはしばしばである。あるサイトは、About Us ページの最上部に、以下の概要を太字で表示している: 「X 社は、北米全土に渡り、全ての類のビジネスに対して、専門性の極めて高いサービスを提供する。」 その会社の地理的な焦点を除いて、この中身のない記述に実益はなく、ある被験者は以下のようにコメントした、「未だに彼らが何をしているのか分からない。」
もちろん、読み取りやすさ、簡潔さ、そして率直な説明の必要性は、概要ページから About Us セクションページ内の大部分に渡り同様に要求される。例えば、二つの異なる企業の沿革を表示したページに対して述べられたユーザのコメントを比較してみよう:
[Bayer に対し否定的。このサイトでは複雑な Flash を使った表示を使用]: 「これはださい文章だ。重要点に絞った方がこうしたことは伝わりやすい。彼らは、年度を強調表示しているが、これは時系列そのものの様式で表示した方が理解しやすい。」
[Pier 1 Imports に対し好意的。このサイトの沿革を表示したページは読み取りやすかった]: 「沿革を表示したページはよいと思う。そのページでは、創業以来の年度と彼らが何を行ったかが分かる。この小さなページを読むだけで、多くのことが理解出来る ? 設立以来、彼らが何かを達成した節目の数々。ここに箇条書きになってるからすぐに見つかる。」
良い例/悪い例
Alcoa のサイトは、4段階モデルの良い例である。
タグライン: “世界的に卓越したアルミニウム”
概要: 「Alcoa は、業界の主要な局面の数々において活発かつ高まりつつある参画を通じて、一次アルミニウム、加工アルミニウム、複合アルミナの製造と管理業における世界的なリーダーである。」 (この会社の主なターゲット市場を要約した第二段落が続く。)
概況報告書: 箇条書きを上手く利用。 (参照:ウェブ上の書き方ガイドライン) 分かりやすく、役立つビジネスグラフィックスを添付。
詳細情報: 分かりやすい情報の手がかりを並べたドロップダウンメニューに追加の14 ページをリスト。(“it all starts with dirt” というリンクのラベルは除く。それは「沿革」とすべき。)
About Usのメインページ。Alcoa(良い例)と the U.S. General Services Administration(悪い例)。
(クリックして拡大)
対照的に、U.S. General Services Administration(アメリカ合衆国一般調達局) のウェブサイトでは、情報モデルの最初の 3段階を完全に省略し、直接、詳細ページへのリンクである 49のメニューを表示している。タグラインはなく(トップページにさえも)、概要、概況報告書もない。 こうしたハイレベルな概要なしに、About GSA セクションにあるごく詳細に渡る情報をユーザが理解するのは難しかった。背景情報なしに、理解は得られない。
なぜ自らについて説明するのか?
Fortune-500 企業や、主要な連邦政府機関は、なぜ About Us の情報をわざわざ提供しなければならないのかと疑問に思うかもしれない。それらの知識や機関は、巨大かつ重要、そして知名度も高いと推測される。彼らは確かに、あまりに頭の悪い彼らについて全てを知らない未熟練労働者たちをわざわざ気にかける必要はない。
しかしながら、有名な主要企業や政府機関であれ、あなた方が如何に大きな組織であったとしても、傲慢さという姿勢は肯定的な効果をもたらさない。あなた方の組織についてほとんど知らない人たちには、学びたいと思うにいたる確かな理由がいくつかあるのかもしれない。そうした理由の例として考えられるのは以下の通り:
- あなたの業界では新参でビジネスパートナーとやりとりしたり、ベンダーの候補を調査したいと思っている職業人。もしあなたのサイトが B2B サイトであるなら、こうした新しいユーザに応じる必要がある。
- 新しいスポーツや趣味を始めようとしている人たち、新しい文学のジャンルを見つけた人たち、ある新しい病気と診断された人たち、新しいタイプの食品を試してみようという人たち、もしくは、過去に一度も対応したことのない会社や組織に興味をもった人たち。もしあなたのサイトが B2C サイトであるならば、こうした新しいユーザに応じる必要がある。
- 新しい担当分野における初めての記事、もしくはあなたの会社を含む初めての記事を書いているジャーナリスト。仮にあなた方が広報活動したい場合、こうした新しいユーザに応じる必要がある。
- あなたの会社について何か好ましいことを読み、株価指標の統計画面で急に飛び出したのを見た個人投資家たち。もしあなたの会社が株式公開企業で新しい投資家が欲しい場合、こうした新しいユーザに応じる必要がある。
- あなた方の広告の一つに興味を持ったが、応募する前に組織についてより詳しく学びたいと思った求職者たち。もし、あなた方がスタッフを増やしたいと思っている場合、こうした新しいユーザに応じる必要がある。
- 新しい知識分野について詳しく調べようとしている子供たち。あなた方は、こうした新しいユーザに応じる必要があるかもしれない。
e-コマース サイト、トランザクションが発生するサイトやオンラインサービスのサイトには、しっかりとした About Us セクションが必要だ。なぜならしばしばユーザはウェブ上のサービスについて誰が運営しているのか、資金は如何に供給されているのか、信用できるかどうかといった疑問を持つからである。仮に、あなたが e-コマースサイトから何かを注文する場合、その会社が荷物を発送すると信用できるのか?仮に、品物が悪い状態で到着した場合に返品を受け付けるのか?ウェブサイト上で登録した場合、あなたの個人情報を有料で誰かに売り、その結果として商品の売買から不快なポルノの全てに至る終わりのないスパムにさらされるようなことはないのだろうか?
政府機関のサイトにおいては、 全ての納税者が様々な省についての情報、またそれらの省が税金を如何に使っているのかに関する公開情報にアクセスできるというのは、民主主義における基本事項である ? 彼らがその機関の事柄について専門家であるかないかに関わらず。
最後に、非営利団体にとって、よい About Us セクションは、幅広い寄贈者からの寄付を得るために絶対に必要なものである。 (以下も参照: 政府機関や非営利団体はユーザビリティの向上で投資対効果を得られるか?)
信用と信頼性は、ウェブ上において重要な問題である。最大級に大きな企業であっても、ウェブ上では、ブラウザウィンドウの中の短い言葉と写真による表現にすぎない。もっとも詐欺的な非倫理的な会社が、地域社会への貢献や公正な顧客関係の長い歴史をもつ会社と同じくらいよく見えることが起こり得る。あなた自身の紹介、経歴について説明するのは重要で、経営陣の経歴や写真を掲載するような単純なことも同様に大切である。
デザインに関して言うならば、トランザクションに必要となるものと会社情報のバランスをとるのは簡単である。当然のことながら、あなたのホームページの大半をセールス、現在の割引価格、製品やサービスへのナビゲーションのために費やすべきだ。ただ、About Us セクションへの簡単なリンクを含むことを忘れないようにして欲しい。そのリンクが最も目立つものである必要はない。実際、標準的な左側ナビゲーション列を使っているのだとしたら、About Us へのリンクは、リストの一番下に置けばよい。ただ、それが隠れていないように。
ユーザと理解し合う
如何なる会話においても、自分が誰で何をしているのかを話すのはよいマナーの基本である。ビジネスにおいても、あなたの会社の由来、事業についての見解、地域社会との関わりについて説明することで、信頼性と敬意を確立するのはよいことである。
ウェブは非人格化されたものであるが、我々の最も初期に行ったユーザビリティ調査において、ユーザはウェブサイトの背後にある企業の印象を理解したいと思うことが分かっている。
よい About Us セクションをもつことはこの理解を促進する。あなたが行っていることを明確に述べることは、顧客があなたのサイトを全体的に理解する助けとなる。結局のところ、ユーザに対しあなたの組織を代表するのは、あなたのサイト全体なのである。人々は製品ページを見る。そして、その会社をベンダーの候補として、もしくはビジネスパートナー、雇用主、投資、もしくは寄付の受取人として(慈善行為の場合)その組織を判断したい時に、そのサイトのコンテンツを読む。コミュニケーションは About Us ページに限られない。しかしながら、サイトのある領域を、あなたの組織について、沿革、意義についての情報を提供することにささげるのは、サイトの全てのコンテンツを引き合わせ全体をまとめる助けとなるのである。
さらに詳しく
About Us ユーザビリティに関するレポート(2nd edition、253ページ) 113のスクリーンショット、70のデザインガイドライン、209のカラーのスクリーンショットをダウンロード出来る。(有料)
2008 年 9 月 29 日