ずば抜けたユーザビリティ:
完成を極めたデザインをさらに改善する方法

出来の良いわずか1%のウェブサイトでも、例外的なユーザパフォーマンスを強化したり、ちょっとしたミスを防いだり、企業レベルの利用や潜在的ニーズを見据えた対応を行えば、一段とレベルアップさせることができる。

99%の読者は、ここで読むのをやめてしまうかもしれない——今回のコラムは、素晴らしいウェブサイトやイントラネットを作り上げた人々を対象としているからだ。

それは言いすぎだとしても、自分のサイトはひどい出来で、たちまちユーザビリティ上の大問題が見つかるという読者も多いだろう。それなら5名程度のユーザをテストしてみればサイトのビジネス価値を倍増できるほどの知見が得られるはずだ。手順はごく簡単である。デザインチームに対し、デザインの完璧なテスト方法をほんの3日間で一通り手ほどきすれば、簡単なユーザビリティ調査を実施するように教えることができる。

だが、すでに定性的ユーザテストを何度となく繰り返し、反復デザインの手法でサイトを改良してきたという場合はどうだろう? たとえばそれによって、コンバージョン率を2倍、4倍とアップしてきたとしよう。ここまで来れば、明らかなユーザニーズはすべて満たしており、利用を妨げるものは何もない、実にあっぱれなデザインができていることになる。(最初におことわりしたように、今回は1%の読者が対象なのだ。ただし、ウェブサイトやイントラネットのクオリティを向上させる努力を怠らずに磨きをかけていけば、みないずれはそこに至るだろう。)

たやすく得られる成果を一通り収穫してしまうと、そこから先はおいそれとユーザビリティを向上させることができなくなる。手短に済む簡単な調査では、もう足りないのだ。この段階で残っている課題は、5ユーザ程度のテストでどう見ても露呈するような目立った問題ではないはずだからである。

完成度の高いユーザエクスペリエンスをさらに改善するには、以下のような4つのアイデアを試してみよう:

  • サイトのデザイン面で期待以上の成果を上げている箇所をつきとめ、その成功をより広い範囲に活かすこと。
  • ユーザがミスを犯しそうになった箇所を調べて、再発防止に努めること。
  • 個人の顧客にとってのユーザエクスペリエンスだけに留まらず、企業ユーザ向けのユーザビリティまで考慮すること。
  • まだ満たされていない潜在的ニーズを見つけ出すこと。

万事快調な時期

航空業界での話にたとえるなら、いまやわれわれも“安全航行”の調査を始めるべき時期だと言える。航空業界では昔から、事故の調査を実施することで安全性を強化してきた。それが現在では飛行機の墜落などめったに起こらないので、さらなる改善を図るために無事故の航行についても調査し、そのフライトはなぜ安全だったのか、危機一髪の事態は生じなかったか、などを調べているのだ。

それと同様に、ユーザビリティ調査の結果についても、これまでは見過ごしがちだった部分——つまり、ユーザがすぐに正しい箇所をクリックでき、何ら支障を感じることなく、そのサイトをおおむね気に入ってくれた、というようなケースを再検討する余地が出てきたのだ。なぜ正しいリンクが一番目につきやすかったのか? なぜユーザはそんなにたやすく目標を達成できたのか? そしてそのデザインについて、どんなポイントが格別にユーザのお気に召したのか?

みなさんのサイトには、そのようなベストプラクティスをまだ実装できていない部分もきっと残っているはずだ。それを探し集めて、ユーザが好んだページで達成できているレベルまで向上させよう。

ユーザの目標達成の平均レベルを引き上げようとするなら、“幸運な”ユーザ——すなわち、並外れた成果を上げ、高いパフォーマンスを見せる例外的なユーザを見つけ出すこと。彼らは、デザイナーが援護して一段と実り多くできるような、特別なふるまいを見せていないだろうか? その“幸運な”ふるまいを、平均的なユーザでも実践しやすくすることで、同じくその恩恵をもたらす方法はあるか?

わずかな兆候が段階的な改善の余地を正確に示す

ユーザ調査では、クリックするのをためらったり当初は情報の意味を取り違えていたにも関わらず、トラブルを起こす前に自分で誤りを正したというケースもよく目にする。そんな時、デザインチームとしては全員揃って安堵のため息をもらさずにはいられない——あやうくユーザビリティ上の問題が発生しそうだったのに、結果として自分たちのデザインが勝ったのだから。

確かに、そのデザインがテストユーザに対して結局は功を奏したのなら、緊急対応を要するユーザビリティ上の問題はないはずだ。だが、修正すべき点があることをほのめかすようなちょっとしたミスはやはり生じる(無論、デザイン上の大問題は解決した後での話だが)。こうしたミスを防ぐのが大事なのは、2つの理由による:

  • ミスは時間の無駄になる。ユーザがためらうのはたった1秒かもしれないし、勘違いには5秒で気付くかもしれない。だが、それだけでも時間の無駄には違いない。ウェブサイトの場合、ユーザパフォーマンスの低下はユーザエクスペリエンスをぎくしゃくとしたものにしてしまう。そのサイトはあまりよい印象を与えられず、顧客満足度の低下を招く。イントラネットの場合、1秒無駄にするごとに従業員の生産性が落ちる。そして、1日あたり数百回のミスが起これば、年間では丸一日分の時間が無駄になる。
  • 中にはさほど幸運に恵まれないユーザもいる。すべてのテストユーザが深刻なトラブルに見舞われずにミスを乗り越えたとしても、その後で間違ったリンクをクリックしたり、勘違いしたまま操作を続けるユーザもいるだろう。何百万ものユーザをテストするわけにはいかないのが現実だ。テストでエラーが起こりがちだった点は、実際の利用場面において、確率は低いながらもやはりエラーを引き起こすのである。テストでほんの少ししかエラーが生じなかったとしたら、それらを実際のミスそのものというよりは、ミスが起こりそうな兆しだとみなすだろう。それでもやはり実際にエラーは起こる。ただその頻度が低いというだけだ。

コンテンツについてのアイトラッキング調査を行うと、退行現象が生じていると分かることがある: ある部分を読み直す必要があったために、視線が先へ進むのではなく後戻りしているケースだ。

退行現象は、もう一つのちょっとした問題の兆しでもある。そのテキストが分かりにくかったという問題だ。退行現象が生じるのは、可読性を妨げる数々の要因のせいである:

  • ユーザが知らなかった言葉
  • 複雑すぎる文章構造
  • ややこしい論法や、見るからに疑わしい情報

大多数のウェブサイトやイントラネットでは、従来のウェブ向けのライティングガイドラインに則してコンテンツを書き直すべき部分がまだ残っているので、退行現象について気にやむ必要はない。そんな状態のままでアイトラッキング調査をするのは、費用の無駄だ。しかし、ウェブ向けのライティングがひとたび完成したなら、それ以降は退行現象が生じていないかチェックすることで、コンテンツのユーザビリティに一段と磨きをかけやすくなる。

企業ユーザ向けのユーザビリティ

大部分のユーザビリティ手法は、個人ユーザのユーザエクスペリエンスの向上に重点を置いている。ただし、より広い観点から捉えたエクスペリエンスとして、企業ユーザ向けのユーザビリティというものもある。その場合、企業全体のレベルでデザインが意味するところを考えていくことになる。

個人のレベルを超えてエクスペリエンスを向上させることは、とりわけB2Bサイトでは重要だ。たとえば、製品やサービスの価値を決裁権限を持つ上司に納得させるのに役立つコンテンツが必要だというのは、昔からありがちな例だ。B2Bサイトでは、ユーザがその製品の良さを理解しただけでは済まないことが多い——ウェブでの製品購入についての調査担当者は、最終決定を下す委員会や上司に向けてプレゼンをしたり、レポートを提出しなければならないかもしれないからである。

このような組織的課題を調査するにはより幅広い手法が必要となり、単一ユーザでのテストよりコストがかかる。

新たなニーズを見つけ出す

顧客の現状のニーズにどれほどうまく応じているとしても、彼らがまだ自覚してもいない新たなニーズを見据えた改善を図れるチャンスはきっとあるはずだ。もし正真正銘の新発見をしたなら、特許を申請したっていい。そうすれば継続的にライバルと差をつけられるのは確かだ。

では、どうしたら顧客が気付いていない潜在的ニーズを見つけ出せるのか? それには、ユーザ行動を観察するフィールド調査を実施しよう。これまで数え切れないほど繰り返してきたが、ユーザの声は聞くべからず——肝心なのは、ユーザのふるまいを見ることなのだ

残念ながら、フィールド調査はラボで5ユーザのテストをするよりかなり費用がかさむ。しかし、現状のUIが完璧だと自負している場合、さらにそのレベルを上げるには避けて通れない手段となる。

小さな改善の積み重ねに値打ちはあるのか?

大方のウェブサイトやイントラネットでのユーザエクスペリエンスはあまりに低レベルなので、ごく些細なユーザビリティの改善を図っただけで驚くほどレベルが上がる。その投資対効果(ROI)は、企業内で最初のユーザビリティプロジェクトを基準とすると数千パーセントにまで達するのが普通だ。ROIはそれから何年もの間、かなりの高さを保つ。なぜなら、企業がユーザビリティの成熟期を経て、極上のユーザエクスペリエンスをコンスタントに提供できる段階に至るまでには、長い年月がかかるからだ。

しかし、ついにそのレベルにまで達したなら、その先はどうなるのか?

デザイン上のより希少な改善点を見つけ出すためにより多くの作業が必要になってくると、ROIは下がることになる。それでも、やはりユーザビリティの改善は続けたほうがよい理由として、2つのポイントを説明しておこう:

  • ROIが低いからといって、それがマイナスだということにはならない。万が一ユーザビリティの改善のせいで損をすることになるなら、やらないほうがよいのは言うまでもない。だが、それ以上改善のしようがないほど完璧なウェブサイトなどあるだろうか。サイトのクオリティが上がるにつれて、ユーザビリティの改善は優先度が下がっていくかもしれないが、それをまったく放棄すべきではない。
  • 競争圧力というものがあるために、今年の最先端デザインも何年か経てば平凡になっていく——そのさらに数年後には、月並み以下のレベルにまで成り下がってしまうかもしれない。ユーザの期待値はひたすら上がり続ける。したがって、ユーザビリティの改善をいま打ち切る余裕があるとしても、1~2年でライバルに追い抜かれ、対応を再開せざるを得なくなるはずだ。しかし、組織内でレベルの高いユーザビリティ対応が図れる体制を作り上げるには数年間かかるので、いったん対応をやめてしまうと、再び思い通りに作業を進めることができなくなる。実践する値打ちがあるだけのデザインの改善が、向こう2年間は必要ないと確信できるなら、その間に基礎的なユーザ調査を実施して、潜在的な顧客のニーズを探っておくこと。

2008 年 6 月 23 日

公開: 2008年6月23日 (原文:2008年6月23日)
著者: Jakob Nielsen
原文:Extreme Usability: How to Make an Already-Great Design Even Better

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